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種族解説:ゴーレム

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上古かみふるに生きた人間たちは、現在よりもはるかに高度な文明を築いていた。だが、この真実はほとんどの人々に知られていない。

庶民はおろか王侯貴族に至るまで、現在こそがもっとも文明が進歩している時代と信じて疑わないのは、彼らが愚かなせいではあるまい。為政者たちにとってはむろん、庶民たちでさえ、自分たちの暮らしが過去に劣るとは信じがたいことなのだ。

考古学者や魔術師、そして墓荒らしたちはこの事実を知っているものの、彼らが取り立ててそれを喧伝することはない。学者や魔術師たちは、現在の退行ぶりを喚き立てるより、過去に遅れを取らぬ成果を出そうと尽力しているし、墓荒らしたちは同業者に対してさえ余計な口をきかないからだ。

それでも、各地に点在する遺跡群を訪ねれば、上古に栄えた諸文明の片鱗を見ることはたやすい。ドワーフさえどう切り出したのかわからぬ巨石建造物、エルフさえ読めぬ古代文字、数千年経過してなお動く仕掛け壁、光る天井に照らされた回廊、素材不明な金属の武器、ノームにも真似できぬ金細工、梁も柱もない吹き抜けの丸天井を彩る正確無比な星空絵図…いずれも、こんにちの知識と技術の粋をつくしてなお解き明かせぬ謎の宝庫である。

今日は、こうした上古の謎の中でもことさら危険であり、多くの学者や墓荒らし、あるいは兵たちの命を奪ってきた上古の動像どうぞう…ゴーレムについて語ろう。

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ゴーレムとは、尽きることのない命を持つ像だ。彼らを種族と呼ぶのは適切でない。彼らは自身の文化や社会を持たず、感情も感覚もなく、また自分の意志さえ持たず、生殖することもできないからだ。その意味では、やはりまがいものの生命体・・・・・・・・・と呼ぶべきであろう。

ゴーレムは、破壊されない限りは永劫に生き、老いも衰えも知らぬ。食べたり休んだりする必要はないものの、普段は微動だにすることなく、永劫とも思える時を過ごすのみだ。

彼らの主人は滅んで久しいが、ゴーレムはいつまでもその命令を忠実に守り続ける。それが何にせよ、ゴーレムは自らの使命に疑問を抱くことはない。考える力を与えられていないからだ。

その形や大きさ、そして素材に様々な種類こそあれ、あらゆるゴーレムに共通しているのは、魔法的な擬似生命が宿る人型の彫像であるということだ。その体は粘土、木材、石材、あるいは金属製で、その外見は作られた時代や国の文化によって様々ながら、おおまかには人の姿をしている。

人間の形をしていないもの…動物や怪物の像がゴーレムとして不自然な命を吹き込まれたという記録はないものの、それらが存在しないとも言い切れない。なにせ上古の遺跡や遺構は数多く、発見されているものはごく一部にとどまっているからである。

上古の遺跡内において、ゴーレムは重要な場所や物品、あるいは遺骸などを侵入者から守る衛兵として配置されている。彼らは話すことはできないが何らかの形でものを聞き、見ることができるようだ。

侵入者の形跡があれば、ゴーレムはかりそめの眠りからたちまち目覚め、まるで生きているかのように動き出す。動き出したゴーレムを止めるには、再起動の原因となったものが無力化されるか、ゴーレムを破壊するほか手段はない。

興味深い情報として、ゴーレムに出会い、相手を破壊することなく逃げおおせたと思しき冒険者の詩歌がある。これは、ケイポンの学者であるヒルヌスの著述『民の智慧』に収載されたものだ。

その内容は、“動く粘土像の額に書かれた文字を消したことで、像は動きを止めた”というものだが、「額に文字の書かれた粘土像」の記述はこれ以外になく、その信憑性はかなり疑わしい。

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