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種族解説:バグベア

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この巨大で毛むくじゃらの凶暴な種族がバグベアと呼ばれるようになったのには諸説あるが、おそらく古語由来であろう。今では話す者もいなくなった古の西方語(アルフモート古語の一種)で“燃やす”をバーグ、“けだもの”をボルアと言うが、村々を襲っては火をかけて回った人もどきをバーグボルアと名付け、これが訛ってバグベアとなった、という説がもっとも有力だ。この「古代西方語由来説」は、バグベア及びノール研究の権威たるケイポンの学者デンヴァンが提唱したものである。デンヴァンの著作『ヘネテガルトの穴ぐら手記』によると、バグベアはオウガの遠縁にあたる種族だという。

デンヴァンは、『ヘネテガルトの穴ぐら手記』の他にも驚嘆に値する様々な書物を著したが、バグベアの食生活に関する調査中、よりによって自分がバグベアの胃におさまるという壮絶な最期を遂げた。だが、デンヴァンの遺した研究のおかげで、今日こうして我々は、バグベアについて深く知ることができるのである。

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バグベアの記録自体は、大陸西方以外でもかなり古くから残されている。デコン高原の南端にあるさみだれ連山に住み着き、歴代アルアマン大公を苦しめた「山怪やまのけ」なる怪物どもの逸話をはじめ、シュトラウスの都市国家ユッソスがかつて擁した「ゴリライ怪兵団」など、大陸東部や南部でも“毛深いオウガ”の記録が散見されるのだ。近年、バグベアの報告は大陸北西部にある神聖アルフモート王国領内の森林や山地に限られるので、これは大変興味深いと言えるだろう。

バグベアは種族としての文化や言語、あるいは継承する智恵や技術をほとんど持たない。バグベアの小さな脳は、日々の糧をどう他者から奪い取るかで一杯で、彼らの口が話すのは、粗野で単純なオーク語だけである。成人したバグベアは、オウガやトロールと変わらぬ体躯を持ち、真に恐ろしい敵となるだろう。

その体格がどうであれ、バグベアの巨大な顔は人間と猿を混ぜ合わせたような醜いもので、尖った耳と牙を持ち、全身が針金のような毛に覆われている。女性のバグベアももちろん存在するが、体毛が薄いこと、髪を伸ばしていること、そして巨大な乳房を持つ以外は、ほとんど男性との身体的差異はなく、男性のバグベアよりもおしなべて凶暴だ。

バグベアは生来粗暴な種族で、他者をいたぶり、奪い、殺すことを無上の喜びとする連中である。バグベアが求めるのは即物的な勝利と食欲を満たすことだ。彼らは名誉や栄光、蓄財や権勢に興味を持たず、「今」以外のことを考えるのが苦手であり、必要ともしていない。

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