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種族解説:ノール

🔰序章&項目一覧

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ノール。夜行性の凶暴かつ邪悪な亜人の種族で、強靭かつ頑健だ。家族単位の小さな群れをなし、街道ぞいや人里に近い山林の洞穴を住処とする。住処近くの一帯に、食糧や金品を得るための狩場を定め、群れの縄張りとするようだ。人里離れた地域にノールはいない。なぜならノールは、自身の獲物となる知的種族の集落を…特に人間の集落を…常に必要としているからだ。

ノールは二本足で立ったハイエナのような外見をしており、その性格は残忍かつ冷酷だ。ほとんどのノールは茶色がかった灰色の皮膚を持つが、体のほとんどの部位は、ハイエナやコヨーテによく似た色の短い毛で覆われている。上半身、特に腕は人間によく似た作りで、手深い指を用いて様々な道具を使うことができるようだ。論理的な思考はあまり得意ではないが暗愚ではない。ノールは、自分たちの言語と文字を持ってすらいるのだ。

ノールは農業や手工業の文化を持たず、もっぱら狩りと略奪で衣食住をまかなうが、それは彼らが怠惰なせいではない。もし必要に迫られれば、不器用ながらも武器や防具、あるいは家具を作ることすらできる。

だが、他者を傷つけることや破壊的な行動に大きな喜びを見出すため、自分で仕方なくものを作るのは、他者からどうしても奪えず、なおかつ取引できるズノート(オーク豚)の隊商が近くにいない場合だけだ。ノールが農作物をいかに育て増やすかの知識を持たず、また知ろうともしないのは、その必要性がないためである。人間たちは、ノールが頼みもしないのに過分な食料をいつも貯め込んでいるし、人間自体が良質な食料となるからだ。

ノールの住処はたいてい不潔で殺風景であるが、縄張り内のどこかに、他者から奪った金品が隠されているのが常である。人間の用いる武具の多くはノールにとって丈が短いが、自分たちが優れた職人でないことは、ノール自身もよく分かっている。そのためノールは、自分にとっては価値のない貨幣や貴金属を集め、ズノートとの取引用にため込んでいるのだ。

他方、ノールは優れた狩人だ。群れは文字通り一体となって獲物を取り囲み、連携攻撃で弱らせてから仕留める。集団ではもちろん、一人でも抜け目のない戦士であり、一部で喧伝されているように臆病ではない。彼らは確かに不利な戦いを好まず、危険と感じればすぐに退く。それは彼らが状況判断力に優れた現実主義者だからだ。それをさして彼らを卑怯と評するのは、名誉や誇りを過剰に重んじる人々の一方的な思い込みと言えるだろう。

自身の狩場を持たない、あるいは小さな狩場しかないノールの群れにとって傭兵や用心棒は天職だが、生来の傲慢な性分と他種族に対する強い軽蔑ゆえ、雇い主との友好関係が長続きすることは非常にまれである。

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ノールの社会においては、女性が群れを率いるのが伝統だ。女ノールはただでさえ大柄でその声も野太く、乳房の隆起もなく、男性生殖器めいた擬似器官まで備えているため、外見的には大柄な男ノールにしか見えない。事実、多くの学者が「ノールには男しかいない」という説をつい最近まで主張していたほどだ。

群長(むれおさ)となった女ノールは、他の群れから婿を取り、夫と子供たちを守る。子供たちのうち、一番強い女ノールが次の長となり、他の群れから婿を取るのだ。一方、他の子らは成人するとともに他の群れへと嫁入り、または婿入りしてゆく。こうしてノールの群れはその顔ぶれを変えながら親類を増やし、血の鎖をつないでゆくのである。

なお、一つの群れの中に複数の成人したノール女はいない。女は数自体が少ないうえ、成人すると同時に嫁に出されるか(別の群れの新たな長になる)、成人となる前に死ぬからである。ただし男の中には婿入りがかなわず、生まれついた群れで生涯を送る者も少なくない。長命なノールは50歳ぐらいまで生きる。
 
ノールは“ノールでない者”をあからさまに軽蔑するため、他種族との仲はすこぶる悪い。同じノール同志でさえ、他の群れとは常に精神的・物理的な距離を置いて暮らしており、嫁取りや婿取り、あるいは呪術師を訪ねる事以外での交流はほとんどないのだ。

嫁婿取りの他、ノールの群れ同士が交流する数少ない機会は、呪術師のもとを地域の長たちが訪ねるときである。呪術師はノール社会における語り部であり、医者であり、長たちの相談役であり、神への供物をささげる血なまぐさい祭をとりしきる人物だ。

ノールが持つ信仰がどんなものかは、あまりよく分かっていない。だが、ノール社会において呪術師は確かに神聖な存在とみなされており、いかなるノールも呪術師には大きな敬意を払い、その助言に耳を傾ける。とはいえ呪術師はノールの王ではない。あくまでも一帯で縄張りを張り巡らすそれぞれの群長たちを補佐する役目にあり、それぞれの群れにあっては、長の影響力が絶対だ。

ノールの呪術師は、近隣に点在するノールの群れを把握しており、群れ同士での諍い(それは縄張りを巡ってよく起こる)にあっては、調停者ともなる。この点ノールは人間とよく似ており、もともと血を分けた親兄弟でさえも、群れが異なれば些細な縄張りを巡って平気で殺しあう。

呪術師はふだん他のノールたちとは距離を置き一人で隠れ住んでいるが、特定の群れと一時的に行動を共にすることもあるらしい。ノールの呪術師がどうやって後継者を見つけ、その権力を譲渡しているのかも、まだよく分かっていない。ノールの信仰や文化社会がより明らかになるには、さらなる研究が待たれる。

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ノールはしばしばハイエナドンを猟犬や番犬として飼うことで知られている。ハイエナドンは洞窟を住処とするどう猛な大型古代獣で、平野部に住むハイエナと姿が似ているが、直接的なつながりはない。

ノールは、ハイエナドンを家畜化しようと長年試みているが、今の所うまくいっておらず、友情は一代かぎりである。それゆえハイエナドンを飼うことは、他の群れに対する優越を意味しており、群長たちはこぞってハイエナドンを求める。

ハイエナドンは生来獰猛で警戒心が高いため、成獣を慣らすことはできない。そのため、野生のハイエナドンから生まれたばかりの仔を盗みだす「仔取り」でしか、ハイエナドンを飼う手段はない。ハイエナドンの親は当然ながら激しく抵抗するので、時には死者を出すこともあるようだ。こうして捕らえられたハイエナドンの仔は、やがてノールになつき忠実な友となるが、こと外敵に会えば野獣の本性をいかんなく発揮して戦う。

ハイエナドンは普段、ノールの縄張り内に放たれており、領域内で自由に行動している。飼われているとはいっても、ノールたちが成長したハイエナドンに食事を与えることはほとんどないため、彼らは縄張り内で自由に狩りを行う。常に飢餓状態に置いておくのは、単にノールが世話下手だからではない。侵入者がいれば、勝手にハイエナドンが追い回し、腹の中に収めてくれるからだ。

オールドスクール・ファンタジー世界ハルクウーベンは、ミニチュアを用いる1人用ファンタジーアドベンチャーゲーム『デス・オア・グローリー』の背景世界例でもある。デスグロがどんな遊びかは、上の記事をぜひ読んでみてくれ!


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