見出し画像

【超短編小説】ミュート芸


Ⅰ.この小説について

本作は改札口西口さんという方をモデルに即興で執筆しました。

また、本作は2024年1月11日に行われたCLUSTARS TRYでの出来事がモチーフになっています。

以下にYouTube動画を埋め込みますが、ご覧の通り改札口西口さんがMCを務めた回でした!

改札口西口さん:X(Twitter) note

Ⅱ.【超短編小説】ミュート芸

「マイクミュートです」と主催者から告げられた瞬間。
悲鳴とも愚痴とも判別つかぬ、いつも聞いている曲が脳内再生された。
『板の上には魔物が潜むぜ』
あの一節にこれ程まで共感した瞬間が、今まで生きていてあっただろうか?

今思えば、あの日は自分でも恥ずかしくなるほどハイテンションだった。
「失敗上等のイベント!」だからと、あの時は勢いでMCを引き受けた。
『板の上』にいるパフォーマーたちに限らず、スタッフたちの力になりたい、応援したい、そういう心もあった。
いざ自分が『板の上』に立つと、彼らはこういう魔物と戦っていたのかと、強く思い知る。

そうなりゃ、後は思いっきり失敗しまくるまで。
恥ずかしさをかなぐり捨てて、パフォーマーの紹介したイベント名を連呼したりもした。
「ちょっとコメントがピンクになってません?」なんて、(みんな面白いなぁ!)という笑いを含みながら楽しそうに言い放ったり。
おかげで、観客やスタッフから沢山のニコチャンマークが上がっていたと思う。

無事、イベントが終わった後、一人ひとりに声を掛ける。
「こんな自分でも頑張ったんだから」って、笑いながら登壇者たちを労った。
演劇でいうところの『追い出し』、お客様やスタッフを送り出す演奏。
音楽は『ミュート』で、代わりに惜しみない称賛を、全員に。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?