稼ぎのモデル01 赤坂迎賓館

文化財の保存と活用のバランスをとることは難しい、と言われます。
毎年数百万円の維持費を個人で負担し続け、自治体に寄付しようとしたけど引き取ってもらえず、泣く泣く壊してしまったという話を聞きます。
自治体側も、たくさんの歴史的施設を持っているけどうまく活用できず、毎年維持費だけが出ていくだけで悩んでいる、という声も聴きます。

これまで、仕事で様々な歴史的建造物の保存と活用を支援してきた経験を活かし、全国の文化財建物を魅力的に活用しながら収益を上げている事例を対象に、「稼ぎのモデル」を分解してみようと思います。

第一回目は、迎賓館赤坂離宮を取り上げます。

1.施設の概要

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迎賓館赤坂離宮は、明治42年に東宮御所として建設されたネオ・バロック様式による宮殿建築物です。都内の一等地にありながら広大な敷地と荘厳華麗な建物美に圧倒され、日本にいることを忘れてしまいそうな異次元空間です。(2009年に国宝指定)
これまで多くの国王、大統領、首相などを迎え入れたほか、主要国首脳会議などの国際会議の場としても使用されています。

定休日(水曜日)以外は毎日一般公開されているので、誰でもふらっと立ち寄って観覧することができます。

■開館時間 10~17時
■参観料(本館・庭園の場合)
 一般:1,500円、大学生:1,000円、中高生:500円、小学生以下:無料
■特別利用料金(貸切利用。料金は参考例)
前庭・本館を3日間利用した場合: 約2,300万円

2.稼ぎのモデル

施設の公式サイトや国の公募情報、国の法律などをもとに、迎賓館赤坂離宮の収益構造をひも解いてみました。(スキーム図は、ビジネスモデル2.0図鑑の作り方を参考にしています。)

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管理者である国の収入源は3つで、
 ①利用者が支払う「観覧料」
 ②キッチンカー事業者が支払う「使用料」
 ③企業などが催事のために使用する場合の「利用料金」
から構成されます。

それぞれの料金の法的位置づけは、下記のとおりと考えられます。

■観覧料・利用料金
・迎賓館の施設に係る参観料の徴収に関する内閣府令
■キッチンカー事業者の使用料
・国有財産法
・行政財産を貸付け又は使用許可する場合の取扱いの基準について

3.参考にすべきポイント

①公開に必要な費用を観覧料で賄う
迎賓館が観覧料を取り始めたのは平成28年度で、インバウンドが盛り上がりを見せ始めた最近のことです。目的は観光振興のため。年間を通じて一般公開する代わりに、来館者から観覧料を徴収することで公開費用を賄うことが目的でした。
観覧料は1,500~2,000円とやや高めに設定されていますが、もし利用者が支払う観覧料で足りない経費は税金が投入されることになり、不公平となってしまいます。受益者負担の観点から料金設定が行われているのではないかと思います。
(参考:赤坂・京都迎賓館参観経費 ロジックモデル

②ユニークベニューとしての特別感を演出する価格設定
民間企業が施設を貸切利用することも認めていますが、用途は「経済、社会、学術、文化、スポーツ等の分野において我が国を代表するような国際交流活動としての行事」など大規模かつ注目度も高いイベントに限定しています。また、厳しい審査を経るため、開催される回数は必ずしも多いわけではありません。
しかし、特別感が演出できることから、一回あたりの利用料金はかなり高額に上ることもあるようです。過去にはメルセデス・ベンツ社の「自動車の最先端安全技術に関する国際交流会」や、株式会社ドワンゴ・公益社団法人日本将棋連盟による「第二期叡王戦 決勝三番勝負」の会場として使用されています。
(下記参考:料金プランの参考事例とイベントの承諾条件)

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■利用承諾の要件
・特別開館による利用は、迎賓館赤坂離宮が有する文化財としての価値及び国の迎賓施設としての品格を損なわない行事等であって、次のいずれかに該当することを要件としています。
・経済、社会、学術、文化、スポーツ等の分野において我が国を代表するような国際交流活動としての行事等であること。
・対日理解の一層の増進や海外への情報発信に資する行事等であること。
・観光立国の推進その他我が国の重要施策の推進に資する行事等であること。
(出典:迎賓館赤坂離宮ホームページ

4.施設情報サイト



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