2022年度の記録
1年のまとめ記事について、去年は2月に更新しながら「こういうのは数年後に自分で読み返すと、その時のムードがわかって面白いので、多少遅れても記しておこう。」と書いていた。
今年はなんと4月になってしまったが、まあ書いておくに越したことはないかな……
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Flags 「Jumpin' Shinjuku Flags」 BGM
新宿Flagsに音楽を作った。映像はわれらがfilmout氏こと五反田和樹さん。東南口の街頭ビジョンとか、店内エスカレーターで観てみてね。
ハンディレコーダー持って新宿で音を拾ってたんだけど、新宿駅を象徴する音ナンバーワンは「スーツケースのキャスター音」だね。同じく繁華街の渋谷とかに比べても段違いで多く、交通のハブ機能の強さを感じる。
Humidity Controller (DJ Mix)
Deep Houseというにはちょっと貧弱な、またLofi Houseというにはオーガニックな、ところが見過ごせない癖をかなり濃い目にアピールしてくるような、常温のハウスを中心につかったミックスで、もーほんと好きな曲かかりまくるので最高 for myself。
おわりのほうHouseではないおまけが35分ついてる。これはいつもどおりな感じで好きなんだ。
soundless remedy in 8 mar
以前投稿した、EP『compositions without hearing』の制作手法レポートがほぼ文字だったので、実践編もあるとよかろう、とYouTubeに動画を投げた。
だけど、マイキングをクソ適当なまま見切り発車したためあまりにモガモガ言うだけで終わったので最近非公開にしました 'v'
その成果物だけ残ってる。でもあんま上手く行ってないと思うこれ。時間方向の情報粗密が理想的なアンバランスから程遠い。
dure - autocerebrophagy
苦しみを感じてほしいです① 自己大脳貪食EP
3曲 + DL BonusのEPだけどまあ実質1曲。ジャケを描くのは苦しくなかった。
dure - mince me tomorrow
苦しみを感じてほしいです② 明日私をミンチにしてくれ
KORG Inc.系
製品の中身とかデモとか演奏映像とかいつもどおりやってますちょくちょく。
出演
3/19 FFF @clubasia, Shibuya
4/9 三十路ナイト @MOGRA, Akihabara
6/12 一気呵成 @SPACE, Shinjuku
創作活動が凍結してくれるのに呼んでもらえてうれしい。三十路ナイトのときにCola SplashがGREENGUMのEditを作ってくれたのもよかったな。
客としてもわりとパーティに行く頻度を上げた一年だった。これからも行くぞ。
作ったけど出せていないのは諸々あり、 The BooksにAmen乗せたbootleg、Goodnight Codyの出したスティールパン音源使ったダウンテンポダブ、303でリード弾いてる短調のハウス、140のブレイクビーツハウス、ロボボーカルボサノヴァ、ゲームさんぽにBGM提供した『smallest stilllife』のリアレンジ……
9割完成で出せてない曲もまあある。エレピカットアップのJungle、110スウィングのマイクロサンプリングもの、常温で特に元気の出ない2step、220のサンプリングレイヴ、Jon Caseyあこがれの128ハーフ……
もう出し方がわかんないんだよな。曲の。
どうでもいい と 固執 が同時にある。
さて自分の活動の話はここまで。以下はコンテンツ編。
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2022ベストヘビロテ:
Kansado
3月にはDarker Than Waxから『Futuro Tumbao II』、9月にはAcrylicから『Guaguansoul』と、アルバムを2枚出したKansadoをめっちゃ聴いてた。
アフロラテンの多層的パーカッションをベースに、エレクトロニックの芯あるビート、ネオソウル的な洒落た和声感とタッチ、時にボーカル……誰にとってもめちゃ聴きやすいと思う。へんにセカセカしたり小難しい感じはなく、なんならそのへんの雑貨屋で流れてそうなぐらい。でもほんの少しだけ、BGMにしてはやりすぎ。
わかりやすく新しい発明があるわけじゃない、ミックスは行儀よく整頓されていて、アプローチはなんなら「こういうdownlifterの入れ方ゼロ年代っぽいよね」とか思う瞬間もある。なんか上から目線な言い分だけど、それでなおベストなんですよ……!!
つまり、正解のほぼ理論値を浴びられる心地よさ! そして半歩の"やりすぎ"のバランス感は、和声感のキャッチーさ (ネオソウル的混濁より、J-POP的な濃い味を感じる)と、効果音装飾量の込み入り方に見出すことができる。ベッドルームプロデューサーだからかな。それがめっちゃいいね。
これ、現行アフロミュージックをおれの何百倍も真剣に追ってる人からしたらサイアクのレビューになってる可能性が大いにあるな。
おすすめはM4『Sombra Bajo El Limero』と、Futuro Tumbao II のほうはM3『Limber De Coco』, M5『Suave Como Va』。にぎやかで暖かく、スムース!
2022ベスト安定打率:
wev
ブルックリンのハウスプロデューサーworldwidewev。最初に知ったのはhoodboiとの共作だったんだけど2022年も魅力的な曲をコンスタントに出してくれて毎度買ってる。
付点八分のコードスタブリフによく動くベースライン、909 OHの裏打ちに若干のスウィング、ハイファイよりウォーム、そしてかなり多めに配置される効果音。おれが元気系ハウスに求めるものをいつも出してくれる、学食のA定食みたいな感じ。効果音にN64ネタがしばしば出てくるのも95年生まれらしいなー。
2023になってから、France Joliの再発に提供されたRemixがA-Trakと合作なのも激良いディスコエディットだった。
2022ベストジャケ:
Zanshin 『In Any Case, By Any Chance』
Dorian ConceptやCid Rimを輩出したオーストリアのAffineより、Ogris Debrisの片割れであるZanshinのフルアルバム。先行公開されてたEPにも入ってたM8『Identity Slices』に心奪われチェックしてたところ、アートワークも非常にかっこいい (自作らしい) のでLPで買いました。
Zanshinは去年からまじめに聞き出したんだけど、2016あたりのGergaz周りで耳にしてはいたはずで、ビートものは今作でもかなりガチャガチャしていて、2010年前後のWarp感がある (ClarkとかTim Exileとか)。いい。
一方でノンビートインストは、パーカッションを封じた時にリズムやハリみたいなもんをシンセに担保させようとするののバランスがこれまたいい。より好きかも。
2023ベスト催眠音声:
Meowsn' 『Vihodnoe Posobie』
2022"年度"ということで2023年2月のリリースも書いてしまう。2年連続でMeowsn'を選出してて、もうゾッコンなわけ。その後Running Out Of SteamからのLPも買ったし、Scruscruの共作集での新曲もかっけえ。
オールドスクールなビートテープシーンっぽい音作りのまま4つ打ちにするスタイル、バシャバシャの埃っぽいサウンドにかなりエグいヨレやつんのめりは今まで通り。
今作は更にいい意味で投げやりというか、6分半もあると思ったら単に3曲分のネタが並んでいる感じで、流しで聴いてると切れ目がわかんない。それもテープっぽい。ビザールなネタがひたすら垂れ流され、ビートは脱臼気味なのが逆にノれる。過去作よりもグッと磨きがかかって感じるのはネタの量(多さ)と質(非力さ)かな。超中毒です。離れられなくなる催眠。
2022ベスト千鳥足:
King Mutapa 『Children will Play』
2021のリリースだけど彼のこともKooley Highも今年知ったので。いざみてみると、Remix繋がりはLast NubianやIntr0beatzらおなじみの顔ぶれ。そりゃ気に入るね。リズムのモタり、ヨレ、つっかかりの気持ちよさだけでなく、音程方向も不思議なフレージングにあふれてて浮遊感満載。
南アフリカのディープハウスプロデューサーを掘るのがアツい年だった。シーンが盛り上がってる噂だけは聞いたことあったんだけど。
Kooley Highから出してるEven Da Twilightや、BNinjas、Kurtx、Besta Evo、Elvis27、またそいつらが集結してるレーベルであるSelvilleは湿度感もオフグルーヴもかっこいいのが沢山。まだ掘れていないけどDeep House Catsも気になってるな。
南アにはフィットするハウスプロデューサーがまだまだ沢山いそうだ。国で区切ることに大した意味はないのかもしれないけどね。
なにせ、同程度の規模のレーベルがサンクラ上でよそのリリースを相互Premiere公開する流れがある。ドイツのレーベルから出る4曲のEPを、ロシアとフランスと南アのレーベルが1曲ずつ自アカウントで公開する、のを持ち回りで4回繰り返すみたいな。単純によく知らなかったんだけど、昔からあったのかな?
2022ベストチョップ:
Zito Mowa 『Eat Like Goku』
上記南アの流れで、特にヘンテコだったこれはサイコーだった。
サンプリングチョップ系の4つ打ちで、キックがいるにはいるんだけど、サブベースにちょびっと暗いアタックを足す役割しかしてなくて、いわゆるハウスの鳴りではない。抜群にかっこいいチョップフレーズが味わえるスペースがじゅうぶんにあるし、「ここからがつんと盛り上がりが来そう」とソワソワしたまま最後まで行っちゃうのもいい。
音はだいぶ違うけど、食品まつりさんがライブでやってた「最後までキックの鳴らないハウス」を思い出したな。
逆に、一般的なハウス鳴りに変えてもかっこよさそうだしedit作ろうかな
2022ベストレーベル:
Mechanical
たまたま耳にしたKabinを追って見つけたレーベル。知ってるアーティストがほぼいなくて (2021にShigetoが出しててちょっと驚いた)、Jungle 〜 Breakbeats DnBを中心に、Dub Technoっぽいのも低速Breakbeatsもあってジャンル的には色々。総じてAtmosphericとは言えるかも。
面白いのが、雰囲気の似てる別アーティストをリリースごとに紹介してるところ。
たとえばandrea_andreaのVGMアーメンなリリースには「Plays nicely with DV-i, Yeule, Pesocom Music Club」なんて書いてあったりするわけ (ペソコム……)。レコ屋が言うならまだしも本家がお節介を焼く……というより言いたくて仕方なさそうな感じに、いい意味でのアマチュアリズム、音楽オタク感があって推せる。
2022ベスト食べ合わせ:
Shopworn 『How Could Children Disturb Internet Dialoguè?』
怒涛のリリースペースなPedicure Recordsは良作揃いで、一番ひっかかったのがShopwornのこれ。構造のなんとも言えない素朴さと、音色の折衷具合が肩透かしなのがおもしろい。
よく伸びるdistorted 808とtearoutな激しいスネアに木琴やおじさんをかけ合わせたM3『Tibet』や、Hard Trapが30秒後にまぬけなアルペジオにほだされるM5『Bridge Baby』など。
つまり、ジャンルオリエンテッドなベース/ドラムと、あんま関係なくて適当なフレーズの上モノを同時に鳴らすことで記号性をハックする……みたいなことが、空間演出的にはすぐ目の前で起きてるのがおもちゃ遊びっぽくて楽しい。EPタイトルを見るに意図的なデザインでしょう。
アーティストの背景はよくわかってないのよね。Soundcloud垢も消えてるし、このEP以外にPedicureからもう1曲出てるだけ。別名があるのかな
2022ベスト説得力:
Fellsius 『Mesa』
2022年はフルアルバム『MONOEYE』という快作もリリースされたFellsiusさん (リリパ楽しかったな……)、DOMEOFDOOMからのEPも非常に良かった。曲目はひとつもかぶっていないのでどちらもチェックすべき。
異なるジャンルとかいろんな音色の組合せを一曲や一アルバムにアソートすると、秩序・安定に比べるとどうしても脆さが出るけど、音の迫力が超強いことで黙らせることが可能。
そうすると、クロスオーバーの跳躍距離はかなりあるのに妙な説得力が出てくるというか、聴き味がスムースになって他にないユニークな作品になる! カオスに暴れることでの解決 (Mashcoreとかね) とはまた違う感覚になるんだよな〜
M4『Bon』がこの中で一番ケレン味があるトラックなんだけど、こんなにデペイズマンが効いてて脆い危うさが全然ないのがすごい。おもろい。しかしBaileの訛りとかを見るに、構造がどうとかいうより単に取り入れ方がうますぎるのかもしれない。普通に音を強めるだけでこうはなれないな。
2022ベストドロップコント:
Louis Cole 『Let Me Snack』
YouTubeのコメントでclown coreのこと思い出すまでなんもわからんかった。clown coreは最初聴いた時しっくりこなかったんだけど、ちゃんと聴こーっと。
2022ワースト入手不可:
Luke Vibert, Posthuman 『Unitary Covert Sonic Procedures IV』
Balkan RecordingsのスプリットEP企画のUCSP第4弾。
二人のアメリカツアーの道中にあるレコード屋に置かれていった限定101枚の12"ということで非常に入手困難。いままでのUCSPシリーズと違ってBandcampなどにも降りてきてないので、ブツを手に入れなければフルで聴くことすら叶わない。Discogs Marketplaceに1枚だけ現れた記録があるんだけど……
まあね、それだけなら、そういうこともありますよ、限定品ね、Luke Vibertのカタログは全て入手したいおれでも、無理なものは無理なこともあるよね。
でもね、視聴1曲め聴けばわかるけど、『Still In Love』はさ、代表曲『I Love Acid』のほぼセルフリミックスなんだよ……ディスコネタ使いのアシッドブレイクスっていう全部盛りなんだよ…………
そんなハイパースペシャルなものをリミテッドで出さないでよ ほら、PosthumanもいるんだからM2みたいなアシッドエレクトロとかさ、ちょっとレイヴィーなやつでもよかったじゃん I Love Acidじゃなくてもさ
こんなことがあっていいのかよ なあおい
2022ベストコーヒー豆:
El ParaisoのRed Plumロット
たっけーけど、これのアイスは革命的にうまくてびびった。奇跡体験です。LycheeロットよりRed Plumのが好み。たっけーけど。
経堂Raw Sugar Roastで2023年3月時点でも買えたので、まだあるか知らんけど、おすすめです。たっけーけど。
2022ベストアートワーク:
Celyn Brazier 『London Lagoon』
Wagon Christのジャケを何十年も描いてきた、Luke Vibertの友人であるCelyn BrazierのポスターをEtsyで買って額装した。ガチで好き。これはクライアントワークじゃなくて個人作品のはず。
EtsyのDM越しにちょっと雑談できたのもうれしかったな。
2022ベスト服:
でけーオウムガイの描いてあるニット
まじ元気出るこれ。だってオウムガイがでかいから。ぴょん吉ばりにでかい。
国内で手に入らなかったから淘宝网(Taobao)で輸入した。ブランドとかはもうわすれた。
2022ベスト袋:
マムートでもらえたエコバッグ
こういう「化繊なんでシワくちゃとかどうでもいい」「丸めて収納する袋が本体と一体化していて」「外側に一体化してるから中身に干渉せず」「使い終わったら畳まずにブチ込んでOK」なエコバッグ、普通に売ってるのかな? もう一個ほしいんだよね。
2022ベスト破壊:
池袋BREAKROOM
YouTuberがたまにやってる、物壊したり投げたりしまくれる部屋に、純粋にストレス解消目的で行って1人で暴れてきた。15分4400円は割高に見えるが、そう何十分も暴れるのは疲れるからこれで十分だった。
コップを叩き潰したりしてたら副次的に、Glass Break系のFoley Soundの密度感と反響に関しての手触りが得られたのが収穫。
ガラスなどの材質としての非整数倍音列に、硬度によってどの程度のクラックが幾つ入り幾つの破片に分かれていき、数とその相関が音源としてだけでなくdiffusion networkを形成して……しかもdelay spreadもあるわけだ。破壊する道具 (ハンマーなのか壁に当てるのか踏みつけるのか) や室内環境 (コンクリ小部屋の反響)、特に「すでに割れた破片たちの中に投げ込んだ」時の破片数・相関数の暴力からなるshimmer spray感と密度には、高品位なデジリバを聴いた時のようにグッと来る。そういうのが理屈じゃなく肉体的にわかる。
なので"キラキラエレクトロニカ"を志す方々にもおすすめの破壊です。おれは志しませんが……
おわり
2022年の目標は「歯を治す」だけにしてて、それをほぼ達成したのでよかった。貯金は深刻なダメージを受けた。音楽のギャラは治療費に消えています!!!
音楽活動は、しなすぎ。徐々にフェードアウトするつもりか? しないの続きすぎてわりとちゃんとアイデンティティと生の意味に悪影響出た。音楽聴くほうは火が絶えてないけど、全力でぶん殴られるような衝撃体験は例年より少なかったかも。まとめるのも若干手間だった。うーん。
そして毎年やってたこういうまとめ、自分の投稿の振り返りは、Twilogに大きく頼ってきたんだけど、停止はほぼ確定らしいね。Basicプランで月10,000件取得じゃ話にならないだろうし、Enterpriseプランは最安でも月560万円って言われちゃあね……Twitter公式検索はすごく不安定だし。長らくお世話になりました。
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