2021年記

的なものを去年末に書いてないことに気付いた2月中旬。

 まあ大して何もなかったんでいいんですけど…… でもこういうのは数年後に自分で読み返すと、その時のムードがわかって面白いので、多少遅れても記しておこう。

去年はこれ。


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Hercelot『Pre Paid Pog Punk Panic』

 SEGAのアーケードゲーム『CHUNITHM NEW』提供書き下ろし楽曲。制作の詳細はこちら

 音ゲーの曲って背骨とデリバリーがはっきりしてる曲が多い印象がある。情報量が多くてもちゃんとパワーやテーマの形成に紐付いてるというか。せっかく自分が起用されたので逆張りを狙った。社会性ギリギリでの散逸。


Hercelot『a blanket fondness』

 シングル。顛末はこちら。この音像で4つ打ちで明確に長調、って掛け合わせがやりたかった。少ないから。

 昔からあらゆるメロディを極力入れたくないけど、「展開上入れなきゃ締まらないし、メロディ以外(サンプルネタとか)置くのも不似合い」な場面はどうしてもあり、どうにか解決できて成長を感じた。よかったね。


dj newtown, Hercelot
『2005 - 2.O.O.S. (To Our Own Sentimentality)』

 2009年にdj newtownが『2005』をリリース
→2011年にHercelotが『2.O.O.S.』をトリビュートとして制作提供
→2021年に両者リイシュー・リマスター

 もとはRemixでなくTributeだったので、原曲の素材を使ってない。じゃあ何をどう踏まえているの?Hercelotは2005から何を汲み取って……って目線で聴くのはおれ自身だけでいいな。みんなはテキトーに聴いてください。

 リマスターに際してミックスダウン、ネタの置き換えもやり直したんだけど、制作当時のprojectを開いてみたら、win時代のフリープラグインが色々でてきて懐か死した。そんで全部読み込めなかったのも死んだ。


 あとは、8月に3曲入のEP出そうと思ってて、曲はほぼできてたんだけど様々な(プライベートの)理由により頓挫中。
 寒い雰囲気に合わない曲だから少し後に出すね。


出演

『暴力的にカワイイ (w/ Tomggg, アンテナガール)』@ageHaにて、
ageHaの最後ぎわに出演させていただけました。ありがとうございました。

 2021年は「出演」といえるものはこれだけ。同じくCOVID-19下であった2020年と比べても全然やっていない。


さて、自分の活動の話はここまで。

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(追記:せっかくなんで、以下紹介分の曲目をプレイリストにしました。あと紹介はしてないけど買ったりした分も70曲くらい追加した……)


2021ベスト音楽家:
letmode

 spotifyが勝手に痙攣的なビートをかけて、驚いて見てみたらRic Wilsonの旧譜!? 調べるとprod.はTK & Cory Grindberg。派手ながらもまっとうな作風のTKではなく、Cory Grindbergことletmodeが元凶だとたどり着いた先は……天国だった。
 ちなみにかれはSABAの旧譜でprodしてたり、daedaePIVOTと二人でCHADって名乗ってたり、つまりシカゴPivot Gangファミリー周辺人物なんだけど、ウェルメイドな提供作と自由なソロ作とではかなり異なる。

 ↑に貼ったのは2018年のEP『dem』収録の一番好きな曲。他の収録曲もやばいし、『uma』(2017)も全部すごい。シングルカットも軒並み凄ければ、マイケルジャクソンのブートレグは大爆笑。近い感覚で言えば、DIVERSAが狂った時とかと衝撃の質は似てるかも。

 いいなと思う点は色々あるが、まずサウンドが縦方向にソリッドであること。複雑な打ち込み音楽にも色々あって、今主流なのはモーフやアレンジの畳み込みによって見たこともない音の塊が錬成されるようなもんで、細かさとは細かくなるほど個数ではなく体積の単位系になっていく。一方こっちはあくまで個の接合に見えるというか、全体性じゃなくて局所に目が行くから画面酔いさせてくれるんだよね。どっちも良いんだけどね〜〜
 かといって横方向を見ると小さめの展開単位内でちゃんとオチをつけようとしてるというか、呼応の結びつきによって前進する感じがあってまたいい。「発散のみで全てを等価にしていく感じ」とは異なる。たぶんだけど鍵盤奏者だと思う。

↑読まなくていいコマい話

 かれの近作は、痙攣的ではありつつも要素数はわりとシンプルな作風で、トラップのスキームの中で色々試してる感じ。なので、おれは極端に濃い味の旧譜ばかり聴いてしまうかも。

 ああ〜letmodeになりてえな。全部おれの曲ってことにならないかな。そんぐらい好みの真ん中を撃ち抜いてくれたビートメイカー。


2021ベスト元気玉:
ethanplus

 確かワイパさんのsoundcloud likes欄をストーカーしてて知った。

 カートゥーンSEや野太いB-Boy的アイテムを沢山まぶした、愉快で骨太なヒップホップビート……なんだけど、空白の作り方・サウンドフォントっぽい歯切れ良いリフはTimberland的なとこも踏まえつつ明らかにパーティサイドだし、ビートの音色選び・張り付くようなコンプのグルーヴなどなどはしっかり今の音。パワー・爽快感・カラフルが揃ってめっちゃ元気出る。

 過去、早朝の通勤・通学が辛い時はよくDJ Funkか、初期ガバのコンピを聴くことが多かったんだけど、同じ感覚で聴ける。覚醒剤。

 リリースはあんまりされてないけどミドルテンポ/4つ打ちの手札もあるみたいだし、yuigotのRemixとかやってほしい(妄想)。ゆいごは明るい時に柔らかいか激しい感じになるから、ethanplusのヤン感はちょうど補完色で差さると思うんだよな〜


2021ベスト感動巨編:
Native Cell『After We Die』

 Native Cellは全曲最高なので毎年取り上げたい(年1曲でも出してくれていることに超感謝)んだけど、2021年に出た2曲はどちらもダンスビート的な享楽を排していた。『Beautiful Machine』は得意の声ネタカットアップすら無く、しかし確実に細切れにされた機械がなにか喋りかけてくる、ジャケット通りの曲だった。絶対になにか喋ってんだよこいつら。そんで感情ぐちゃぐちゃにされるダイナミクスのオケで、2分半の尺でも感極まってしまい……

 その半年後に出たのが6分オーバーの『After We Die』。Beautiful Machineでの叙情性をそのままに、過去Bobby BBQ名義で肉厚のSynthwaveを作ってた時のジューシーなシンセ使い(かれはコードワークも良いんだよな)、得意のマイクロサンプリング……と、かれの武器全部盛り。あと、今回は声ネタを歌詞として書き起こしてることが大事だと思うんだよな……

 超完成度高いスタイルを確立してるのに更に進化してとんでもなかったです。


2021ベストTTS使い:
アーバンギャルド『傷だらけのマリア (パソコン音楽クラブ REMIX)』

 よすぎ。とにかく好みのパーツばかりで1曲が形成されてるだけでまず嬉しい。曲の良さは各々聴けばわかるので、小手先の話だけしておくと、
 歌ものRemixってことで、TTSボーカルが合いの手の位置に来てるアイデアの時点で叫ぶ(オケの刻みやスピード感が原曲と違うから、歌の隙間を細かく埋めてくれるのが嬉しい)。あと、ファン目線で聴くとどうなるんだろう?と軽く検索したら、CR-68/78のRhumbaを『美術館で会った人だろ』として認識してる人が多くて、文脈の化け方に成程……って思ったり。

 このRemixがどういう分担で作られてるかはしらないけどそれはさておき、柴田くんの100%Onnyu名義のライブは見たかった……! ツイッターに上がってる動画、全部趣味直撃でよかった。


2021ベスト騒音:
low pulse

 年始にHyperboloidから出てたコンピに居た異常者。Hyperboloid自体、かなり尖ったロシアンテクノ派生攻撃的音楽が盛り盛りでサイコーなレーベル(2013年くらいまではPixelordやKoloahの純粋な遊び場って感じだったのに、磨かれたよねえ)だし、サブレーベルの#internetghettoもいっつもニコニコしちゃうんだけど、そんなかで目立てるくらい変な尖り方してる。過去リリースも見逃せない曲ばかり!


2021ベストぬるさ:
B.Visible『Seadoo』

 もとはWonky Beatをやっていたり、Synth Funkのなんかヘンなところだけ抽出した独自音楽やってたり、カテゴライズに向かないB.Visibleの、なかでもぬるくて鈍ってる4つ打ち。拠り所ないコードの動きと、それでも色んな音がもぞもぞうごめいている釈然としなさ。そしてカウベル!

 2022になってからこの曲が収録されたフルアルバムも出たのでチェック! おれはまだ聴けてない 楽しみ


2021ベストテープ:
Meowsn『Pop Music for Thugs EP』

 実際にテープが出たということじゃなくてスタイルの話だけど。
 たとえば1分台のローファイな曲が詰まったビートテープのスタイルで、そのビートがたまたま4つ打ちだってよい。ビートスキームでジャンル"分け"をして態度変える必然性はないし、4つ打ちならフロアユースライクに3〜7分くらいにしなきゃってこともないわけだ。垣根はあるべきときにあって、またあるべきでもないときがある。理由を見よ。Meowsnは己をMF DoomやMadlibの系譜にあると自称している。さもありなん。

 ちなみに同じく2021ならCatmousegame EPはフロアユースまでいける尺で作られててイケてる。
 あと、最初の方に書いたHercelot『a blanket fondness』はMeowsnのビートのスタイルをめっちゃ参照している。


2021ベストレーベル:
Minor Notes Recordings

 こちらもロシアより。Scruscruのリリースを追ってて見つけたんだけど、サンプルベースのいい温度感のハウスが多い。鳴りは厚すぎず薄すぎず。ネタに派手なシンガロングとかないけど味は平均よりはやや濃い目。好きだな〜


2021ベストジプシーウーマン:
flip season (paul mond)『gipsyy woman』

 無限にあると言われているGypsy WomanのRemix, Edit, Flipの中で一番おもろいし良い。ボトムが全然ないのに十分すぎるのもおもろい。


2021ベストTiktok現象:
Lakim『A Pimp Named Slickback』のスクリューのバズ

家のない女性を歌った原曲 + Boondocksの売春斡旋者のキャラの声ネタ の曲に乗せてセクシーに踊る動画が流行るんだーっていうのと、
それらを無用なしがらみとして拒否る誘惑を肯定できるくらい、そのスクリューが実際めっちゃかっこいいんだよね

 ジプシーウーマンで思い出した。Tiktokはナイトコアもスクリューも色々出てくる。YouTubeから引っこ抜いてきてるのか、動画作成ツールに機能があるのかはわからないけど、とにかく気軽にできて、誰かが使ったら"なんとなくノリで"音声引用できる仕組みがある。「仕組み」がこんなクールな遅回しを色んな人の耳に放り込んでると思うと爽快ね。

 ちなみに等速のほうもめっちゃ使われてて、ダンスだけじゃなく静止画のスワイプ動画とか色々な"型"が作られてた。


2021ベストあの日のFuture Bass前身形:
Mag.Lo『P A C H I N K O パチンコ』(2014)

 2021年に『パチンコ2』がリリースされたので、1の存在に気付いて、びっくりした。2も相当かっこいいんだけど衝撃は1のほうが……
 決定的アンセムであるCid Rim『Draw (Dorian Concept Remix)』(2012)直系のヴァイブ(1:45あたりの落とし方なんてまさにだよね)で、こんなに完成度高い曲あったのか……


2021ベスト1周して今しっくり来た:
twenty knives『the royal we』(2011)

 #2、5、8、12あたりの声使い、シンプルな和声、きらめき、アルペジオと歪み、あたりを今聴くと違う文脈ですごいしっくり来る。ビートの当時っぽさはぬぐえないけど(といってもこれも2011だから、2002くらいのIDMを再演しようとしてる気はする)。
 まーそんなことはさておき、新鮮に聴き直せて嬉しかった。


あと良かった曲

↑これで踊りて〜〜〜
 むちゃむちゃな複雑サウンドは、Sterfryとblake skowronZonraをよく聴いてた。Billegalほどピュアでなく、voljumやAnomalieほどサービス精神なくても十分で、EDM的な鳴りよりは乱雑で、かといって音割り系のパンクスでもなく、じゃあ線が細いってわけでもなく、ただ味が濃いっていう……
 てかletmodeにしろDIVERSAにしろ、おれの好みの方向性ってわかりやす…… ちょっとアブストラクトだけど近年のSlugabedとか、あとサンクラで掘ってるといいなって思う人がだいたいBell's Worthを支持してたりね!


↑推しがMr. Billのコンテスト優勝しててうれしかった。


↑spotifyのsuggestionがめっちゃ推してきて聴いてたらまんまとハマった。


↑「一番聴いてた4つ打ち」つったら、上に書いたMeowsnよりもScruscruかも(ちなみにその二人の共作EPは激いい)。あとはFelipe Gordonも引き続きずっと聴いてた。
 Bandcampフォローしておくと、一日限定公開の和モノEditが買えたりする。でもエディットものだけじゃなくてハイファイで元気なトラックもかっこいいぞ!


↑Local Talkみを完全に残したまんま非4つ打ちでイイ〜


音楽の話はここまで。

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家具やインテリア、服の買い物話はときどきnoteに書いてる。
冬編春夏編がある。


2021ベスト家電いじり:
空気清浄機にキャスターをつけた

 花粉対策で買ったlevoitの小さめの空気清浄機、サイズとルックと機能満足度は十分だったんだけど、筒状で吸気の指向性がないから部屋の真ん中にぽんと置くことになって、キャスターを両面テープで貼って移動させられるようにした。

 適当に蹴って動かそうとすると倒れたりするんだけどそれは手で動かすとして、何より足をつけたら人格が生まれたように思えたのが良かった。↓みたいなことだ。


2021ベスト生物未満:
mi woolliesのウールダスター

 actusで見かけて買ったけど、amazonにもある。
 良いところは「グリップの適度な長さが持った時に良い」「手触りが良い」「茶色の差しが入っているから、ダスター自体のゴミについて神経質になりにくい」ということの他に、そのへんにかけとくだけでなんか生物っぽさがある。猫だ梟だまで言う気はないけど、その10%くらいの気配を放つので面白い。

 機能性でいえばより静電気の出る化繊の方が強かったり、あるいは電化製品向けに除電特化のやつ買ったほうが良いかも。前はそういうの使ってたけどなんかテンション上がらなくてやめた。
 あと大体同じ見た目で半額ぐらいからあるんで、まあ大してクオリティも変わらないだろうし、実際触らずに買うならそういうのでも良いんじゃん?


生活総括

 2021悪かったことは、精神をがっつりやってしまって、心身かなりやばいんですね。年齢の10の位が1つ増えてしまったことだし、SNSにそういうこと言わんようにしよ……と決め、呪詛は当社比1/100ほどに抑えられてるハズだけど、漏れる時は漏れる。

 2021良かったことは、心身崩したのの裏返しでもあるけど、とくに外見のセルフケア→自身の応答が理解できてきたこと。外にも出ねーくせに過去イチ服を買ってたし、最小限の化粧を始めてコンプレックスポイントを自覚することができた。「服への興味はあと10年早く持ってろよ、もう三十路だよ」と思うけどハタチのころは金と時間のすべてを音楽に突っ込んでたから仕方ないね。

 いま興味のないことを徐々に取り入れていく時に真っ先に捨てるべきなのは「最初から効率良くアタリを引きたい」欲で、いかに他人のオススメを聞こうとも、感覚面は自分の体で試して失敗して掴んでくしか無いわけだよね。あったりまえ〜だけど中々実行しづらいよ。金/時間のある程度の余裕と、億劫さの分割解釈が要る。通院にも適用していかなきゃな。


 それでは、もう始まってる2022年もがんばっていきましょう。

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