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新譜出したレポート

 これは実験なんで、しっかりレポートを書いておかないと。

 compositions without hearing。6曲入りでトータル6分くらいのミニEP。2020年12月11日に全曲を制作しリリース。ダウンロードも0円からできる。これを素材としてサンプリングしてもいいよ。サブスクでもどうぞ

 タイトルの通り、「耳を使わずに音声コラージュを作る」というコンセプトで全曲が作られている。音声コラージュとは、「既製の音データを集めてきて、部分的に切り貼りすることで、一本の作品に組み替える」ことだ。その素材集めと切り貼りにおいて、「耳を使って判断する」ことを禁止した。

・なんでこんなことしたか
・どうやったか、やってどうだったか
を以下に記録した。後者は技法的な話だけど、前者はオレバナだからザックリ飛ばしてもらってOK。「***」の区切りを目安にしてね。


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毎日しんどくて……

 ここのところガチで心身の健康が悪い。一日が14時間だったり40時間だったり不規則で、文章で会話ができなかったり、地面がゴムのようにたわんだり、なにもしないで胸筋をつったり、内蔵が冷たく、胸が蒸されたような不快で起床したり、依頼の制作も進捗悪く、仕事の能率も芳しくなく、ようやく脳が回ってきたかと思ったら深夜4時で、翌日も平日なのになぜ……

 ベッドの中でWonder Muddleという、好きな曲に好きな映像足して上げてるお気に入りのYouTubeチャンネルを見ていた。そしたら、マックス・エルンストの小説『百頭女』(1929)が1967年に映像化されたやつ……の英字幕つきが上がってることに気づいて、原作読んだことないなーと思いつつ観た。


客体的なコラージュ

 かつてブルトンが行った自動記述とは、考えるより先に手をどんどん動かして文章を書いていく実験だった。理性的な思考や判断を介さずに半自動的・野性的に高速記述していくと、文章は主語を失っていきオブジェの羅列へすすんでいった、っつう話がある。

 エルンストはコラージュを発明して、 既製の図版のイメージが唐突に結びつくさまを出力した。描写内容が図版により制限される……主体的意図の限界、オブジェの併置により初めて見い出される唐突、創造に客観的に"立ち会う"、そういう表現のための手法だったわけだ。(シュルレアリスムのめっちゃ初歩みたいな話だな……合ってる?)

 こういうことは知っていたのだが、今日世間でいわれるコラージュは広義で、手法そのものだけを指すことが多く、手法を選択する意図やその効果は付加情報にすぎない。それにおれは主語を失わない表現……「完全に主体的に創作されるコラージュ」のことがめちゃめちゃに好きだった。


無限にやり直せる記録作品

 「ライブと音源作品、どっちが好き?」って話題あるよね。おれは偶発性・即興性・生のフィーリングよりも、「一人のヤバイ人間の意図が隅々まで行き届いて、完全にコントロールされた、ヤバイ記録作品」「無限にやり直せる中で究極的に煮詰められて弾き出された天才の回答」が一番カッコイイと思ってる節がある。頭脳や思考、計画や判断、再現性のある実力を崇拝したいんだな。

 創作に唯一解は無いけど、当人の中で"完成"に辿り着いた確信があったらきっとそれは素晴らしい。満点じゃなくても、どこまで諦めずにやるのかの判断までが創作というか。(だから締切じゃなくて、本人のジャッジで完成が決まってほしい願望があったり……どの目線で言ってんだこれ。)

 ……まあつまり、いま濫用されているような主体的コラージュが十分に好きだ、その人の地力が出てる気がして。ミュジーク・コンクレートはそんなに掘ってないんだけど、コンサートやインスタレーションよりも固定された録音物(を完成とみなす当人のジャッジ)を欲望している。

 で、そういう好きなコラージュを、当然自分でもやるのであった。だけど、ヤバイ天才でないがゆえに沢山悩むことになる。


はたして、Hercelot少年はどうだったのか

 (こんな文章読んでるってことは、Hercelotの音楽性に多少は興味があると思って話を進めるけど、)おれが音楽を始めたきっかけも、最初に作っていたものも音声コラージュである。

 TVを見て「音楽とは、音符・楽器・歌詞によってできている(それらに興味がある人だけ音楽を作る)」と思い込んでいたのが、中3で出会ったHIFANAのCD作品によって溶けた。ドレミもピアノもマイクも無くてこんなに面白い! それで自分もこういうこと↓をしてた。

 むろん音符・楽器・歌詞が作る音楽だって聴く分には大好きだ。HIFANAだってイメージ想起力の高い具体的な既製音を多用するけどそれは装飾の範疇で、力強いリズムの面白さによる社会性がしっかり担保されている。

 それで、効果音……オブジェを並べる音楽を求めていく。

 有名所でShitmatAkufenPogoが好きなのは当然、Jean Jacques Perreyが1960年代には効果音のシーケンシングをしていたり、シンセトーンだけでもchoppedなEero Johannesのアプローチが好きだったり、Max Tundraのポップとの融合の塩梅、またデジタル編集ではないPascal Ayerbeのようなトイミュージックもオブジェが併置されていくという点でブレイクコアと同じ聴き方をしている。Seth GrahamらOrange Milkの面々もすごく好きだが、いま言っている大衆性の軸とは別の楽しみ方をしている。

 だからおれもいろんな楽しい音楽を真似ながら、装飾の手法として局所的に(でも頻繁に)コラージュを用いてきた。


理想に自力で挑むのはかなりつらい

 んで、最近やっと初心に立ち返って、コラージュを装飾でなく主題にしてやろうと思い1曲作った。↓で録っていただいたライブ動画の0:28〜の曲で、まだリリースしてない。

 1分強の尺に半年かかった。半年ソレだけしてたわけじゃないけど、2小節に1〜2時間かかるペースだった。なんでそんなに? 理想がはっきりあるからだ。

 理想とは? オブジェを併置していった時に唐突さが感じられるほど気持ちがイイ、無連想ゲームみたいに。音楽は時間芸術なので、多少スピードを上げれば鑑賞がついていかなくなって、大体何をやっても唐突さは感じられるが……イメージの跳躍した結びつきによる興奮がないとツマラナイ。

 だから、音ネタの高/低、長/短、有/無音程、粗/密、左/右、mono/stereo、acoustic/digital、lofi/hifi、dry/wet、そして想起させるイメージが理想的にばらつき、また理想的に偏った状態、を自分の主体性で導ききることがゴールとなる。管理された混沌。これはかなりつらい戦いになる。↑の曲は頑張った甲斐あって、まあ80点出してあげようかなって出来だ。

 同じようなことを実践しているNative Cellという素晴らしい天才と話したらやはりつらがっていた。天才でもつらいことを好きになってしまったぞ、と思った。

 キミは遊戯王やポケカみたいなカードゲームをやったことはあるか? まあUNOやトランプでもいいけど。
 最初に手札を5枚引いて、同名カードが3枚ダブってると「ああ、よくシャッフルできてなかった」と感じるかもしれない。しかし単純に確率論で言えば、偏ることも含めて完全ランダムであり、むしろ必ずバラけていたら「よく混ざっていない」のだ。
 ゲーム的にはふつう偏らないほうが嬉しいので、混ぜる前に同名のものをわざとバラけるように山に戻す。人間はざっくりとしかシャッフルできないから、バラけは維持されやすい。これってルール的にはセーフだけど、極論言えば積み込み(イカサマ)の一種と言えなくもない。
 (ゲームソフトとかで完全なシャッフルが行われると逆に「混ざってない」と感じたり、シャッフルの違いだけでデッキ構築すら変わったりもする。)
 というわけで、あまりにキレイにバラバラな配列にすると、人工みが滲んじゃうことがある。マジの混沌を求めるなら、偏りを自らつくる姿勢が大事なのだ。大変ですね。


やってみよう、コラージュの客体化

 さあやっと話が戻ってくる。「管理されきった混沌の追求」という難題に疲弊していたので、エルンストの作品を見たのをきっかけに、ものは試しで自動性(オートマティスム)を導入してみようと思ったわけだ、眠れない夜中に。何か曖昧な操作を肉体にやらせることで、心身のつらさから逃れられるセラピーの効果もあるかと期待してた(特になかった)。

 「自分がめちゃめちゃ吟味して跳躍するように選んだオブジェ列」は「完全にランダムに選択・生成されたそれ」よりはマシだろう。フルオートはだめ。エルンストだって自ら図版を選び、切り抜くことはしていたはずだ。

 しかし、適切なルールを取り入れて主体を剥がしたら、完全な支配の時よりも素敵な跳躍が発生する可能性はまあある、わからない。やってみる。


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 オレバナがクソ長かったので、もっかいプレイヤー貼るね。

 さて、以下では各曲をどう作ったか記録しておく。

1. 基本ルールでの実践
6. 素材カテゴリの特化・レイヤーの意識・カットアップ禁止
3. 素材ジャンルの特化・音価の制限・空間系FX使用
2. テンポの固定・社会的構成の意識
4. ふたたび、基本ルールのみに立ち返り変化を観察
5. 素材パックの制限


1. deaf lemmings on your head

 最初の実践。基本手順はこうだ。

① DAWから一切音が出ないようにする。
② これまで集めてきた、約20万個のサンプルが入ったクソデカフォルダに、「s f n」「rh o」などランダムな文字で検索をかける。
③ 名前以外のソートで、ランダムに、あるいは名前を見ながら手近なサンプルを選び、DAWに貼る。
④ DAWは拍のグリッドを気にせず自由にサンプルを配置できるようにしておく。
⑤ 波形を見てサンプルを切り抜く。音量・音程・フェードを適宜編集。
⑥ ③〜⑤を繰り返す。同じサンプルパックのネタが目につきやすくなってきたら、②の検索ワードを変える。
⑦ 作品がダレてきたんじゃないかというタイミングでやめる。
⑧ マスターにOTTとSaturatorとLimiterを挿す。
⑨ DAWの音を出して聴き鳴りを整え、いまいちな箇所に手を加え、完成。

 完全支配的な制作がつらかったのは以下の3点なので、対応した。

・最適なサンプルを探すのがつらい→②③で解決
・最適な切抜箇所を探すのがつらい→⑤で解決
・最適な質感調整がつらい→⑧で解決

 あらためて目的を言うと、「素敵な跳躍を伴う作品をつくり、自分で聴いてキモチヨクなれるのか」。つまり最終的な"楽曲"が自分を満足させることがゴールである。ゆえに⑨の耳による判断は、している。

 しなかったらそれはフルオートに近い。コンセプト先行の縛りプレイをしてみんなに見せびらかすのが目的ではない。つうか2020年にそんなことでドヤ顔するのはサムい。耳を使わないという過程が作品にうまく作用するのかが焦点だ。

 そしてMaxや、グリッチ系のツールも使わない。自力で構築したシステムならば素晴らしい結果を出すだろうが、半端にツールに振り回されてしまうと舵取りが効かない。裏返せば、耳を使わなくても②〜⑤だけで十分に自分が創作に立ち会うことができると考えていた。

 あと、全体的な速度感は、緩急をつけるとは言え高速寄りとする。なぜなら、「ひとつの音の持つイメージが何であるか?」よりも「2つ以上の音の遭遇」を見たくて、ひとつずつを咀嚼する時間をあまり与えたくない。Plus-Tech Squeeze Boxのハヤシベトモノリ氏が過去インタビューで「滲みとカルナバルシンドローム」に言及しているが、おれも滲みを作り出すためにある程度の高速を選択した。

『断片をたくさん使って、最終的には滲みが作りたいんですよ。だから直接的な意味よりは、その場の雰囲気のようなものがいいな、とは思ってます。(中略)1つ1つの素材には、個人の中で思い入れを凝縮すればいいわけで、実際聴く人は、1つ1つに入っていく必要はなくて。』

<結果>

 ひとつの弱点が発覚。DAW表示の拡大率によって、サンプルを鳴らす間隔にあまり幅が出ない。「ある程度安定したタイミングで音色が切り替わるね〜」というつまらなさが出た。周期性があると唐突さが減る。テンポにテキトーにオートメーションを書くことで画面表示の横軸の実時間単位がランダムになって対策できた。

 また、すべてテンポストレッチなしでサンプルを扱っていたが、テンポオートメーションに沿わせる形で一部のサンプルをテンポ追従させることにした。ドラムループ系の素材は周期性が高く使いづらかったが、速度の変調によりうまく使えるようになった。

 マスターに「音を派手にする」乱暴なエフェクトを積んだことで、サンプルごとの音量調整や質感調整の手間が減っただけでなく、全体的にキラキラしてパワフルな出音になった。
 これはオブジェごとの跳躍距離を減らしてしまう処理に思えるが、単に迫力を増すことでオブジェがはっきりし、コントラストが明確になった。またエンタメ観点からも単純にカッコイイ音に近づいた。
 ただしOTTで音が平たくなるので、Timeを360%くらいまで上げたり、別途Transient Shaperを使ってニュアンスを調整した。

 仕上がりは上々。「楽器演奏系ループは波形を見てアタックが集まっているところに弱起のフレーズなど美味しい箇所がある。」「ワンショットは頭から使わず途中を抜いたりリバースを使うと退屈から逃れられる。」「1トラックに隙間なくどんどん音を置いてった後に、手動で別のトラックに置き直すと、微妙に横の位置がずれて無音のスキマが生まれたりして好ましい。」

 ただ音程についてはもうちょっといじったほうが良かったな。同じ調の音だなーと思う音が短い区間にあると陳腐に感じる。


6. can't save the body

 曲順飛ぶけど。

 カットアップ・チョップ・エディット=音の切断 には実はあんまりこだわりがない。そうしたほうが派手でおもしろい場面は多いんで好きではあるが、切断面がもたらす不自然さ・唐突さよりは、オブジェ併置の唐突さを楽しみたいからだ。

 つうことでこの曲では追加テーマを設けた。
・サンプルの垂直な切断をやめてフェードを使う
・同時発音もどんどんするよう重ねていく
・サンプル検索ワードを「Pad」や「FX」にする

<結果>

 ふだんのサンプル管理で、ファイル名に極力キー情報を入れるようにしているので、名前から類推してトランスポーズなどを行って、キーを合わせたり外したりした。

 予想通りの出来というか、まあ聴けなくもないけど、おれは好んでは聴かないかな。EPとしては1曲あってもいいくらい。


3. same talk

 次は逆に、思い切り短くパツパツに切断する。全部の音を10ms程度まで刻み、無音区間をランダムに大きく取って、その区間をディレイとリバーブで埋める。空間系が綺麗に映えるように、サンプルもElectronica系パックの上モノを対象に検索をかける。

 基本は1と同様の手順を取るが、10msの切断をサイドチェインゲートによってMIDI制御する。トラックグループに挿した空間系の前にゲートを置いた。

 またそのコラージュグループとは別に長いスピーチ素材を置く。黙っている区間が無いようにざっくりとchop&flipする。そしてAbleton Warp Modeを「Beats, Trans, →|」にしてTransient Envelopeを下げる。

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 こうすると、音素材のアタックから次のアタックまでの音の減衰を速められるのだが、アタックの箇所が不規則なスピーチ素材に対して使うとめちゃめちゃ変なリズムができておもしろい。Chuck SuttonのYouTubeのどれかで見たワザだったような気がするが覚えてない。
 コラージュの方とタイミングを少し同期したいので、こちらにも弱めにゲートを置く。

 今回もテンポオートメーションをランダムに書いているので、ディレイはテンポシンクにしておく。

<結果>

 すべて狙い通りでよかった。しかも好みの楽曲になった。

 グロッケンのようなアタックがカツンと飛び出してる音や、追加されるリバーブテールは、OTTと相性がいいと再認識。これはコラージュとは関係ない。


2. frail frail faith

 次は、テンポ概念のあるもの……言うなればもっと社会性の高いものは作れるのか?の実験。サンプルパックなんて親切にできているから、適当に選んで貼っても楽曲になるに違いない。一方で、唐突さはそこそこ残したい。

 ドラムの構築に、Ableton Live 11 Betaに追加されたコンピングを使う。↓の動画のように。この動画の時点でほぼ耳使わずにフレーズ生成しているので、どうにかなる確信があった。

 上モノは、テンポのわからないオールディーズの素材をテキトーにループさせる。4つ打ちpumpingの音量モジュレーションをかけたおかげで何となくテンポにそぐうように聞こえることを期待する。ループは2パターン作り、後半では別のchoir素材を重ねる。キーはファイル名から合わせる。

 ドラムループの選び方はUKG系から選びつつ、上モノが変わるタイミングでほんのり4x4を交え、ランダムでありつつも展開に応じたリズム変化を作っていく。
 そのためには、波形を見てキックとスネアの位置を判別できる必要がある。「振幅が大きく、ディケイが短すぎない」箇所は大抵キックかスネアであり、波形の粗密……周波数によって2択がわかる。

<結果>

 この1ネタでは1分で退屈するということがわかった。退屈しないためにはもっとグルーヴを作り込む必要があり、それは目視だけでは到達し難い。

 また、耳を使った鳴り調整を結構した。アレンジが社会的ならば、ミックスにもそれに合った社会性が必要となり、苦労する…… これはまさに普段悩んでいることだ。ローファイな曲を作るのは比較的ラク。ハイファイなポップスやクラブミュージックを作っている人は本当に偉い。

 だが、今回は別にクラブトラックを作っているわけじゃないし、苦労してまでミックスの社会性を得る必要ないなと思い直して、マスターにSausage Fattenerを挿した


4. umount otoliths

 1でやった一番基本ルールでの実践を、再度やるべきだと感じた。ここまでの経験と考察が生きて、より良いものができるのか? それとも、余計なノウハウを仕入れたことで陳腐化するのか? あるいは、純粋に運が強く出るのか?

<結果>

 大差なし。安定して満足できるものになった。ネタの振り幅、粗密はより大胆になり、経験が生きてうまくいったと思えるが、総体としてすごくよくなったとも言えない。


5. holepeeper

 ここまでの出力成果が結構良かったので、この時点でもうEPとして公開する気になっていた。「最後にもう1つくらいやっとくか、6曲あるとなんかまとまり感出るからな」と考えてオマケ的に実践したもの。

 ここでは、使える音色の種類を思い切り制限したらどうか。種類が一緒でも唐突が生まれうるか? を試す。対象は大好きな歯車・機構音のサンプルパックに絞った。

 追加で、逆再生をパラレルでレイヤーするエフェクトのオートメーションを書いた。

<結果>

 好きなサンプルパックの音をずっと聴けてよかったね〜以上のものにはならなかった。1分尺を目指していたが、30秒くらいで、これ以上発展しないなと思い終了。


まとめとしては、

 6曲作るのに3時間程度しかかからなかった。この文章の中腹にあげたライブ動画の曲は、同じ1分を作るのに半年かかっている。この差はすごい。

 それで結果が同じならコスパ差は歴然……と言いたいところだが、まあ結果は違った。どちらもそれぞれいい曲になったと思っているが、おそらくライブ曲のように固定テンポの曲を作るのには、今回のメソッドでは工夫が足りない。フリーテンポだからこそここまで好みな感じにできた。

 ちなみに"好みな感じ"について、おれは拘りをかなりこじらせている自覚があって、世にある「色んな音が出てくるコラージュ / マイクロサンプリング / カットアップ で〜す」の9割ダサいと感じている。自分の過去作もめっちゃそうだし、なんなら提出時点で締切に敗北してることもある。特にリズムとパン振りに共感性羞恥をよく煽られる。Akufenですら(さすがに9割ってことないけど)キツい時がある。1割のほうに遭遇できた時の感動は凄い。

 また、鳴りの面でも、作品群として似た音(キラキラ派手でうるせー音)以外を作ろうと思ったら、また工夫が必要だろう。地味な鳴りでも楽しく聴ける楽曲には、耳を使ったセンスある処理が必要に思える。こういった混沌の楽曲にはそぐいにくい。

 つまり今回の実験は、「固定テンポの、うるせーばかりではない、少しは社会性のある曲」は作れない手法だったというわけだ……大衆音楽への道はラクできないのだ、と今回は結論づけた。


 社会性が低い作品だってめちゃ愛しているし、その価値を疑わないが、努力して社会性を成就させている大衆楽曲作品のことをマジリスペクトしている。マジで作るのが大変だと思うから。おれは、その努力を放棄するだけで生みの苦しみがかなり減ることを知ってしまったので……

 われらがTomgggがアカデミックな作品をつくっていたあと、「方向転換し劇的な展開・キラキラした音を駆使し、ものすごく楽しくなる楽曲」をつくるようになった判断とかを思うと、こっち側に居続けるだけではやはりよくないなと思ってしまう。
 おれも頑張ってそっちの世界にも戻りたい。前アルバム『slowalk』も鳴りなどは相当社会性が低かった。早く制作依頼を仕上げなきゃ……
(追記:まあまあいい感じの、高速コラージュ要素のあるポップソングができたので、2021年以降、お楽しみに……)


 なんやかや言ったが、最終的に手元に残ったこの6曲を自分で聴くとけっこうブチ上がるのでそれは成功だった。コンセプトだけ考えれば同様の試みが過去に幾らでもあったと簡単に言えるだろうが、この配列のセンスにこの鳴りのコラージュは、おれが探し回った範囲では殆ど無い。「〇〇と一緒じゃん」って教えてもらっても、違うんだわ〜って言っちゃうと思う。いや、本当にあったらめっちゃ嬉しいけど。

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