ホルンという特別な楽器①
あなたにとって青春はなんですか?と聞かれたら迷いなくホルンと答えるだろう。音楽といえば孤独なものでしかなかった私が初めて手に入れた、仲間とつながれる楽器。喜怒哀楽すべてを経験した楽器。
どうしようもなく下手くそだった私
初めてホルンに出会ったのは中学のとき。吹奏楽部に入り、高音の派手な音があまり好きではない私は中音域あたりの楽器がいいなと漠然と思っていた。
そしたら顧問の先生が私の顔を見て、
「あなたはホルンがいいね。ホルンって顔してる。」
って言ったんだ。アゴがしっかりしてるから。
なんか分からないけどホルンに決定!
ただ誰も正しい吹き方なんて知らないから適当にやってたな〜。音が出ればいいって感じだった。吹奏楽のホルンは後打ちばかりで全然楽しくなかった。メロディはほとんど回ってこない。だから中学でやめて、高校は英語部にしてしまった。もう吹くことはないと思ってた。がしかし、またチャンスが訪れるのだ。
管楽器の授業、そしてオーケストラへ
大学の授業は、ピアノ、声楽以外にも管弦楽の授業があった。授業のためだけに楽器を買うんだよ。一年生の間しかない授業のために。貸し出しはやってないのであった。
みんな安く手に入るトランペットとかサックスにしてたけど、私は前吹いたことがあるからってホルンにした。いくらするかも知らないで。
親が張り切って買ってくれたんだ。ホルンにしては安いやつを。週に一回しか吹かないのに買ってもらった私は、ある日友達からオーケストラについて聞くのであった。
オーケストラとの出会い
音楽科の時々話してた子二人がオーケストラに入っていると言う。オーケストラについて何も知らなかった私は、楽器がもったいないから吹けるならいいかも、と思って参加することにした。
アマチュア学生オーケストラの世界。
吹奏楽とは何から何まで違っていた。
まず音の出し方が自己流すぎて、音程も音質も悪すぎた。合わせるというレベルじゃない。
先輩達は、困ったやつが入ってきたという感じだった。
下手すぎるのだ。私。
ここでオーケストラにおけるホルンについて説明しておこう。
シューマンが「ホルンはオーケストラの心だ」という言葉を残している通り、ハーモニーを担当することが多い。曲の芯になる部分。ホルンパートがハーモニーを奏でることで曲に厚みと広がりが生まれる。それは微妙な音程の違いを聴き分け再現するスキル、音質をそろえて合わせるスキルが必要なのだ。また、世界一演奏が難しい管楽器としてギネスにのるくらい音を外しやすいのに、その豊かで柔らかな音色から美しいソロを任されることも多い。
吹奏楽とは違うのだ。
知らなかったのだ。
しかし。
先輩方にあきれられた悔しさから、私の魂に火がついた。
「絶対上手くなってやる!」
まずプロの先生にお願いしてレッスンしてもらうことにした。
すべて一からやり直し。
いや、変な癖がついてる分、マイナスからのやり直しだ。
続く
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