ある手法に数か月から数年こだわり続け、突如、別の手法に移る。佐々木早苗がつくる不揃いな作品たち。

2020年4月17日 22:04

HERALBONY（@heralbony）は、岩手県花巻市にある「るんびにい美術館」との出会いから、すべてがはじまった。

野球の強豪校、花巻東高校の向かいにある美術館。

入った瞬間、「ヤバイ。」

その一言しかでなかったことを今でも鮮明に覚えている。

くりかえし、くりかえし描かれた繊細なタッチ、無数の色づかい、気がつけば小一時間ほど経っていただろうか。

異彩を、放て。

知的障害。その、ひとくくりの言葉の中にも、無数の個性がある。
豊かな感性、繊細な手先、大胆な発想、研ぎ澄まされた集中力・・・

“普通”じゃない、ということ。それは同時に、可能性だと思う。
僕らは、この世界を隔てる、先入観や常識という名のボーダーを超える。

そして、さまざまな「異彩」を、さまざまな形で社会に送り届け、
福祉を起点に新たな文化をつくりだしていく。

このミッションステートメントも、知的障害のあるアーティストに出会ったことが原体験となっている。

社会は、「障害」というひとつの単語で障害のある方をひとくくりにしている傾向があるのではないだろうか。

HERALBONYは、アーティストたちの個性と、アート作品を社会に送り届ける。そして、アーティストたちと共に世界にはばたくブランドを目指す。

（撮影場所：るんびにい美術館内アトリエ内）

HERALBONYがお送りするアーティスト紹介。
第１回目のアーティストは、佐々木早苗です。

ARTIST -SANAE SASAKI -

About
絵画のみならず織り物、切り紙、刺繍など、いずれも緻密で色彩と構成の妙に富む様々な表現を生み出し続けている。彼女は一つの仕事に数か月から数年集中して取り組んだあと、不意にやめて別の仕事に移るのが常。2019年現在の彼女が打ち込んでいるのは、丸く切り抜いた紙をいくつもの色で同心円状に彩色し、塗り終わった紙を壁に並べて貼っていくこと。

Title : 「無題」

編み物をしていたはずの彼女の手が進まなくなった。紙とペンを渡すと円を描き始める。どこからその発想になったのか、誰も知ることができない。恐らく編み物の中にあった円の形が彼女の何かを動かしたのかもしれない。

前傾姿勢で机に向かう。そんな彼女がペンを置いて周りを見渡す。これが今日の作業の終わりのサイン。休憩して、また描き始めるときもあれば終わりの時もある。

よっこらせ。とゆっくり腰を上げ、ゆっくりとお手洗いに向かう彼女の足取りは独特のテンポだ。

作品だけでなく、行動やテンポにまで惹きつけられる。

今度は、どんな世界を見せてくれるのだろうか。