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傘をバサバサするおじいさんのお話

皆さん、こんにちは。
ヘラルボニーの西野彩紀です。

皆さんSTAY HOME期間は、いかがお過ごしでしょうか。
私はずっと家にいた間、ぼんやりと考え事をしていたのですが、そんなときに思い出したお話しがあります。
今日は、ぼんやり思い出したお話①「傘バサバサおじいさん」をお届けしたいと思います。

・・・


これは私が中学生から高校生のとき、毎週通っていたダンスレッスンの帰り道でおきた出来事です。

今の私を知っている人からは、全く想像できないと言われるのですが、私が中学生・高校生の時に頑張っていたことといえば、ダンスでした。

毎週水曜日は21:00までレッスン。自転車で帰路につくのは21:30ごろ。

私はもともと夜はなにかでる(幽霊)、というぼんやりとした恐怖心があり、夜の帰り道が嫌いでした。
特に嫌だったのは、大きな公園を通り抜ける道。他の道よりも一層暗く怖かったので、通る時にはいつも少しスピードを上げて通っていました。

ある日の帰り道、いつも通る道に、ひとりのおじいさんが現れたのです。

そのおじいさんは、21:30の暗闇の中、一人、とても嬉しそうな、(あの頃の私にとってはとても不気味な、)笑顔を浮かべて、こちらを見ています。

怖い。

しかも、なんと、こちらにむかって傘をバサバサやってくるのです。

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私が近づくと、嬉しそうに声を上げながら、バサバサ楽しそうに笑っている。
怖すぎる…!!!

中学生の私にとっては、なにが起きたか半パニック。
いつもの何倍ものスピードで、そのおじいさんの横を通り抜けました。

なんだあのおじいさんは…
夜、公園、おじいさん、傘バサバサ、笑顔、
中学生の私には、とにかく恐怖でした。

まあその時だけだろう、と思っていたら、翌週。
なんと、また現れたおじいさん。
私の恐怖心を楽しんでいるのでしょうか。今日も通ることを予期されたかのような、身震いするような怖さ。

その翌週も、そのまた翌週も。
おじいさんは、それから1年くらい、だいたい毎週現れるようになりました。
(毎週現れるわけではないその気まぐれが、また怖かったのですが…)

だから、おじいさんが現れてからの1年間、その道だけは、常に爆速で通り抜けていました。

高校卒業を機にダンスを辞めてからは、もうその道も通ることはなくなりました。
あのおじさんは一体何者だったのか。その(不気味な)笑顔はずっと頭の中に残りながら、思い出すことはなくなっていました。

・・・

話はとんで、私は社会人になり、ヘラルボニーに入って、福祉施設に行く機会も増えました。
知的障害のある妹と月一度くらいでコーヒー屋さんを開くようにもなりました。

ある日、コーヒー屋さんの準備のため、妹の働く作業所(就労継続支援 B型施設)に行くことがありました。

妹のお姉ちゃんだから、という理由だけで、人がたくさん集まってくる。
こんなに人に囲まれることはあまりないな、と思っていたのですが、
そんな中で、遠くからひかる笑顔に目がいったのです。

素敵な笑顔のおじいさん。
ひとり遠くから、私にむかって手を伸ばしてくる。

その時、「このおじいさん、なんか見たことある…」とぼやっとした既視感を覚えていたのですが、誰かわからず、でもずっと笑顔で面白いなと思ったので、快くハイタッチをして、私は帰路につきました。

帰り道、自転車に乗りながら、ずっと頭から離れないあの笑顔。
おじいさんの顔を思い浮かべながら、なんで知ってる気がするんだろう、とおもっていたとき、びびっと思い出したのです。




傘バサバサおじいさん!!!!!


中学生の私に毎週恐怖体験を届けてくれたおじいさん。
ここにいたのか!おじいさん!

記憶の奥の恐怖体験の謎がとけた安心感と、昔と今の受け取り方の差に、一人で自転車に乗りながらくすっと笑ってしまいました。

・・・

今思うと、恐怖体験を、くすっと笑い話に転換できたのは、深く考えることができるようになったときに、知的障害のある人に出会う機会がたくさんあったからかもしれない、と思います。

知的障害のある人の、一見、意味がない、とか、なんでやってるのか理解できない、と思われる行動にも、その行動をとった本人にとっては何か意味がある、ということがたくさんあります。

傘バサバサおじいさんも、もしかしたら何か傘をバサバサする理由があったのかもしれない、と思うと(人を怖がらせるのはよくないのかもしれませんが…)、あの時の恐怖心は消え去り、むしろその謎を解き明かしたいと思ってしまうのです。もう、おじいさんの魅力に取り憑かれてしまっています。
(その謎が解き明かされた時には、また続編のnoteを書きたいと思います)

この「くすっと笑い話」への転換が、ヘラルボニーでもたくさん起こせたらいいな、と思うから、プロダクトや企画を通して、アーティストの作風の背景や、日常のおもしろエピソードなどを、伝えていきたいと、改めて思いました。

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今、ヘラルボニーで挑戦しているのが、
「日常をアートで美しく彩る、サステナブルなリバーシブルアートマスク」

マスク複数パターン

外にでるときは必ずマスクをつける時代で、せっかくならテンションがあがるマスクを。高性能で、リバーシブルでも使えるので、おすすめです。

ぜひ、なんでこういう作風なんだろう、とマスクをつけながら想像してみてください。

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最後に。
あのとき、私を怖がらせていた笑顔の素敵な傘バサバサおじいさん。
今は、とても大切な気持ちを教えてもらったような気がして、感謝しています。
ありがとうございました。




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