魂からのありがとう

ある時電車に乗っていると、喪服を買うことを自然に想像している私がいた。

意味が分からなかった。
ばあちゃん?母さん?いや、違う。そんな予兆なんてない。

その日か次の日か忘れたけど、知り合いの女性と電話することになった。
その女性がふと息子さんの話を出した時、私は鳥肌がたった。

その息子さんは電話の前日の夜、母であるその女性にいきなり「昔あの時、本当は◯◯学校ではなくて▲▲学校に行きたかった。でも親に反対されたから諦めた」ことや、他にもこれまで生きるのに大変だったことを言い出したそうだ。

そして、親が全然自分のことを理解しようとしないことを察した彼は「もうこのまま理解してくれないなら死ぬことも考えてる。死ぬ方法もネットで調べてるから。」と言ってきたとのこと。

その女性はそんな息子の言葉を聞いて、ただ甘えてるだけなのだと感じたそうだ。親である自分を脅して、バイトに行かない言い訳をしてるだけなのだと。

しかし、その話を聴いた私は、即座にその息子さんが本気で死のうとしていることが分かった。そして、その本質的な原因も。

その女性はある仕事をしていて、ずっと前から辞めたくて辞めたくてたまらなかった。でも、辞めるのが怖い。お金がなくなるのも怖かったし、その仕事で称賛を得ているところもあったから、そんな自分を認めてくれる仕事を手放すのが怖かったのだ。かと言って、その仕事をしたいわけではなく、本当にしたい仕事が別にあった。

しかし、その本当にしたい仕事は簡単にお金にできることではなく、そして(その女性にとっては)取り組むことが難しいと考えているようだった。

とはいえ、辞めたくて辞めたくてたまらなかった彼女はストレスで太り、身体にもいろいろと支障が出始めていたという。

そんな時のこの息子さんの件。


私はその場で言った。

「今すぐやってる仕事やめて」

と。

それでもグダグダ言っている彼女に、

「何が一番大事なの?息子さんを失くすことより、今すぐ仕事を辞めて申し訳ない気持ちの方が大事なの?後悔するよ?」

と。

息子さんからの明らかなSOSにも関わらず、彼女はそれがSOSだとも気づかないほどに心が麻痺していたのだ。

そして、息子さんの話を一緒に聞いていた旦那さんも同様に。


私は驚愕した。

そして、気が気でなかった。もう1日2日の内に事が起こってもおかしくない状況だったのだ。

なんで分かるの?

と問われても、分かるものは分かる。本当にやばい状況だったし、その彼女が取るべき行動も明らかだった。

彼女は怖いながらも背に腹はかえられぬと諦めたのか、目の前の仕事を辞めた。
本来はもっと段階を踏んで辞めたかったのだそうだが、状況が状況なだけに油断できないし、私も事が起こってからじゃ遅いとすぐに辞めてもらうように伝えた。

そしたら、すぐにその息子さんに変化が起きた。
今まで同じような服ばかり着ていた彼が新しい服を着だしたり、食べたいものを彼女に伝えてきたり、つまり明らかに活気が出てきたのだ。

息子さんにアプローチをしたのではない。彼女が彼女自身にアプローチをして仕事を辞めたから。

つまり、彼女が変わることによって、彼女の鏡である息子さんが変わったのだ。

ここには書かないが、最初に息子さんの話を聴いた時、他にも死を予感させるさまざまな予兆が彼女やその息子さんの周りに散りばめられていた。
そんな予兆も含めて見事に解消されていったのだ。もちろん、彼女自身も息子さんと真摯に向かい合って話したってのもある。けども、一番の根本的なところ、彼女が仕事を辞めるということに取り組まないと、息子さんは本当にやばかっただろう。


彼女が仕事を辞めることに取り組み始めた頃、急に私に、ある魂が話しかけてきた。

「本当は死にたくなかった。生きたかったんだ。だから、助けてくれてありがとう。」

と。息子さんの魂だった。
私の内奥に直接話しかけてきたのが分かった。

私は息子さんと話したこともなければ、会ったこともない。しかし、魂を通して私に感謝してくれたのだ。


決してフィクションではない。

自分の子どもというのは、自分の身体を張ってでも自分の母親を助けようとするのだ。

もしあのまま彼女が仕事を辞めずに続けていて、仮に息子さんがいなかったら、彼女は病気になっていた。それを予め息子さんは助けたのだ。


あぁ...本当に良かった。

その後、息子さんはますます元気になり、彼女と息子さんの関係も豊かになっていったとさ。

そういえば、あれから私に喪服を買うイメージは来なくなったな。

まあ、もう必要ないか。

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