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あなたはバナナ3房食べられますか?

自分と向き合っていろんな執着を手放していったある時、本当に何にも無くなって発狂しそうになった。というか、発狂した。

ただただその"何にも無い"ことが耐え難く、私は食に走った。というか、一番心を麻痺させる手っ取り早いのが食だった。


近くに業務用スーパーがあったので、朝からバナナ3"房"、400gのヨーグルト2パック、10個セットの分厚いワッフル、1kgの生クリームを買い込み、バナナ3房とヨーグルト2パックをものの10〜15分程度で食す。

それから1〜2時間経った頃にワッフルに大量の生クリームをかけて、ワッフル10個を食す。
ワッフル1個が300kcalあったとしたらワッフルだけで3000kcalだ。私は一人フードファイトをしているのだろうか。


お腹がパンパンになり、苦しくて寝る。いや、寝たいわけじゃないのだけど苦しすぎて寝る。

とにかく"何にも無い"を感じたくなくて、それを感じるぐらいだったら吐くぐらい食べて苦しむ方がマシだった。

それだけ食ってるのに関わらず、ちゃんと太りたくなかった私はゴールドジムに入会し、ほぼ毎日筋トレをして10km走る。

筋トレもまあまあやり、結構なスピードで走るのに関わらず、来るたびに太ってやってくるアイツは何者だ?!という噂は立っていただろう。


夜は夜でご飯3合はペロリ、いろいろおかずを買い込んでかきこみ、ケーキも3〜4個食べる。
それでも飽き足らず、カップラーメンを食べて気持ち悪くなって吐きそうになるが、吐けずにただただ苦しむ。



それだけ私は感じたくなかったのだ。本当に何にも無い。これからどうやって生きていけばいいのか分からない。

何を目指し、何を糧に生きていいのか。私は人生に絶望していた。

だからひたすらバナナを朝から食べまくる生活を送った。
毎日のようにバナナ3房を買っていく男。きっとクレープ屋だとか、フレッシュジュースを販売する業者としか見えなかっただろうが、全部私が食べていただけだ。


1ヶ月半が経った時、毎日鍛えて走っていたにも関わらず11kg増えていた。そりゃそうか。

食欲もだいぶ落ち着いてきていたけど、心が死にそうだったから農業を始めた。そしたら、少しずつ回復していったけど、根本の"何にも無い"感覚が無くなったわけではなかった。


人は執着を手放したいと言いつつ手放したくないとも思っている。
人は本当の自分で生きたいと言いつつ、生きたくないと思っている。

でも、何にも無くなって大変だったけど、それでも何にも無いという体験や苦しみが私を成長させてくれた。



だから、バナナ3房ありがとうなんだ。

あなたはバナナ3房食べられますか?

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