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「嫌なことはしない」が一番強い

7~8年前までよくお願いしていたライターAさん。

本業は映像関連だったが、非常に丁寧に人の話を聞き、インタビューだけでなく解説や分析も書ける(※)。絵まで描ける。非常に多彩な人だった。

一方私は、専門ジャンルはありつつ関心の幅が広く、どんどん企画・記事化していくタイプなので、Aさんにも業界の仕組み、クリエイターインタビュー、タレント本の書籍のゴースト等、あらゆるジャンルの記事を依頼した。

しかしその蜜月はある日突然、強制終了となる。

部数減少により組織が変わり、新編集長になって、原稿料の見直しが入った(実はそれ以前から他の方々は下げられていたのだが、Aさんについては、最も担当ページが多い自分の記事を多くやっていただいているということで、手が付けられていなかった)。

「うーん…」

「原稿料を下げさせてもらいたい」「でもAさんとは仕事がしたい」という私の半泣きの話を聞いて、Aさんは小首をかしげた(ちなみに、実にかわいらしい人なのだ)。

「でも私、悪いことしたわけじゃないのに、それっておかしいですよね?」

もちろん、その通り。というか、Aさんは間違いなく、屋台骨の1人だった。私だって今までは突っぱねてきた。しかし、もう会社は許してくれない。

「気持ち良く仕事ができなくなるのは嫌だから。気にしないでくださいね」

そう笑って、Aさんは去っていった。

その直後、Aさんは、長年レギュラーだったテレビの仕事もなくなってしまう。うちの原稿料だけで毎月20万~30万円になっていたはずだが、Aさんは今、どうなっているのか。

ベストセラー作家となっている(いつか明かせる日が来たら、ここにも書きたいけれど)。

もともと人への興味が尽きず、様々な取材を丁寧に積み上げてきたAさん。ある出版社の企画本がシリーズ化し、そこからいろいろなジャンルに進出。そんな彼女がインタビューで言っていたのが、今日のタイトルだ。

自分が”面白いと思えることだけ”。今はそのほうが、全然生きてける。

一番難しいのは、実は ”面白いと思えること” を見つけることだと思っている。でも、いろんな手段、人とのつながり──経験を重ねて、コロナ禍だから今だからできることがあるかも、とも思っている。

※売り込みいただくライターさんで一番多いのが、「人が好きだから(有名人に)インタビューをしたい」というもの。でも、得意ジャンルや関心を持っているジャンルがあって、足を運ぶこと、見て聞くこと、調べることを厭わず、分析や解説といった文章を書きたい、という人が少なく、そのほうが絶対にニーズがあるんじゃないかな、と思います。どのジャンルでも。





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