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「邦画は無理、アニメで勝負すれば?」にムカつく

世界中から映画関係者が集まり、新作映画の配給権の売買が行われるマーケット。3大マーケット(※)のみならず、ベルリン、香港、トロント、MIPをはじめアジアのテレビシリーズ関連、さらには南米は東欧などでも新設。2021年はコロナ禍で、会期短縮、オンライン開催など難しい状況が続くなか朗報が。3月5日、「第71回ベルリン国際映画祭」のコンペティション部で、浜口竜介監督の『偶然と想像』が、審査員大賞(銀熊賞)に選ばれたのだ。

まずは邦画を見てから言え、そのためには

大見出しは、以前友人A(洋画関連の仕事に従事)から出た発言だ。Aは、各種見本市で本編、台本、プロット、様々な形態で作品を見まくる。普段から、洋画や海外ドラマは見るが、邦画や日本のアニメーションは、ほとんど見ない。バイヤー仲間の間で話題になったという理由で、『バケモノの子』や『君の名は。』あたりは、公開後だいぶ経ってから見に行っていたが。

「(世界各地のバイヤーたちの間で)邦画や日本のドラマで、買いたいという意味で話題になった作品って、ほとんどないのよね」

でも、アニメはやっぱり話題に上る。

「日本が、国としてのエンタテインメント施策が遅れているのはその通り。一方、既に韓国は、映画もドラマも世界を席巻してるわけで。”世界で日本のコンテンツを売る”のが目的だったら”まずは強いものを”=手っ取り早いからアニメやっとくのが施策として正しいんじゃない?」

効率を考えたらそうなんだろうが…。私は一瞬、思考が停止してしまった。洋画のバイヤーとはいえ、映画業界の人間がこれを言っては…。

もちろん、日本のアニメーションは世界で最も認められるコンテンツ群だ。私も映画に加えここ10年はアニメもカバー。仕事の比重としてアニメが高まっているのは間違いない。よく言われる「日本のアニメが人気」という現象は、Japan ExpoAFAといった世界各地のコンベンションに行けば、さらに実感できると思う。これは、作品力に加え、大手販社から各スタジオまで、長い時間をかけ強い意志を持って外に打って出てきた結果といえる。

一方で邦画。例えばこんな記事もあるが、日本はかつて映画大国だったけどじゃあ今は、ドラマの映画化とか10代向け少女マンガ原作ばかりが目立ってレベル落ちたのか? 多分Aの発言はそういうところから来てるのだろうが、そんなことはない(エンタテインメントの正義の1つは「ヒット」。かつ、ドラマの映画化もマンガの実写化ものも今は進化の最中だ…というのはまた別の機会に)。

三池崇監督や黒沢清監督ら上の世代だけでなく、冒頭の浜口監督をはじめ、『すばらしき世界』がロングラン公開中の西川美和監督、『バイプレイヤーズ 〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』や『くれなずめ』の公開が控える松井大吾監督、20代前半で鮮烈な商業デビューを飾ち、映画上映企画「#SHINPA」も主宰する二宮健監督(『チワワちゃん』『とんかつDJアゲ太郎』などなど、名前を挙げていくと今の日本の映画界の多様性は半端ない。

よく韓国が国を挙げて映画やドラマ、K-POPを世界に売り出していて、一方日本は…という比較になるが、日本でエンタテインメント界、もっというと文化が軽んじられているのは、今に始まったことじゃない。さらに言うと、エンタ界の大御所?旧世代?の間では、いまだアニメやボカロP発の音楽はいまだ「分からないもの」扱いだ。

コロナ禍で数少ない良かったことは(超ざっくりいうとお金のかからない)ネットで世界が近くなったことだ。アニメはもちろん邦画に関してもさらに勉強して、少なくても日本人、しかもエンタ業界の人に「邦画なんて」などと言われることがないよう伝える手を作っていく。今の私の課題の1つ。

※フランス・カンヌ国際映画祭併設の「カンヌ・フィルム・マーケット」、イタリア「MIFED(ミラノ国際映画見本市)」、LA・サンタモニカの「American Film Market(アメリカン・フィルム・マーケット)」のこと。

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