映画感想(1)ヴァチカンのエクソシスト


 こういう“実話を元にした”や“ノンフィクション”を謳う宗教の映画って、大きな括りで言うとオウム真理教の布教アニメとか幸福の科学制作の映画と同類なのではと思うけど、上記の考えに至る前は数千年前から今日まで大衆に信じられて存続している長い歴史のある宗教だから信憑性があるという、根拠にならないものを根拠として無意識に本当にこんな感じの事があったんだと思ってしまった。悪魔の実在の有無についてはともかくとして宗教との付き合い方を考えるのにはとてもいい映画ですね。
 過去にスペインで行われた異端審問や聖職者による児童への性的虐待といった実際にあったキリスト教の不祥事や汚点を自ら言及するという自己開示の後に見せたい(主張したい)ものを見せるというやり方、悪意を持って意図してやってるとまでは断定できないが、やろうと思えば悪い事ができてしまうテクニック(例:マルチ商法やネズミ講等の悪徳商法の勧誘者の言う「ネット上で悪く言う人が多いように我々は世間からは誤解されているのですが実は違って…」から始まる騙し文句等)を使っているなあと感じた。
 実話を元にしたという体の他のエクソシスト映画に『ザ・ライト / エクソシストの真実』という作品があり、その中で「悪魔憑きとされる人間の9割方が精神疾患なのでまずはそれを疑う。それでも中には科学では説明の付かないような現象を起こす悪魔憑きがいる」というシーンがあった(『ヴァチカンのエクソシスト』でも同様のシーン有)。それを正しい事としてしまったら教義との間で矛盾が生じるので病気になっても医者にかからせないとか、進化論を教えないといった宗教が科学を軽視する事例を幾度も目にした事があって、ヴァチカンの悪魔払いも悪魔憑きだという人が来たら即儀式だと思ってたので意外だった。それでもルシファーだのベルゼバブだのアスモデウスだのといった大物悪魔が実在したとして、一個人に取り憑くなんて事があるのだろうか…そもそもキリスト教から見た悪魔って殆ど元は…と思う。
 ラッセル・クロウについては『L.A.コンフィデンシャル』と『3時10分、決断のとき』と『アオラレ』ぐらいしか出演作を見ていないうえにサウスパークの『ラッセル・クロウの世界ケンカ紀行』で描かれた人柄も相まって役柄でも素でもパワー系(パワー系の語源的に「パワー系の何なんだ?」とツッコまれたら返答に困るので今はこういう言い回しもアウトなのだろうか)の人というイメージがあって理知的な神父を演じられるのだろうかと思っていたが、理知的でパワフルでユーモラスと三拍子揃った良いキャラでした。具体的にどことは言わないけど、主人公のモデルになったガブリエーレ・アモルト神父の人柄が端的に伺える所が作中にあるんですが、ラッセル・クロウのパブリックイメージと合わさっていい配役だったんだなと思います。
 鑑賞中は全く気付かずにパンフレット見て驚きましたが、教皇役があの伝説のマカロニ・ウエスタン映画『続・荒野の用心棒』のジャンゴを演じたフランコ・ネロですよ!存命のマカロニ俳優ではクリント・イーストウッドと並ぶ大スター!予想外の驚きで嬉しくなりました。
 「絶対に見た方がいい!必見!」とまでは言わないけど、エンドロールの後に何かある映画なので明るくなる最後まで劇場にはいた方がいいです。

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