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秋日 2022年11月6日週次投稿

週のはじめの記述のストレッチ、週次投稿です。
今回は拙いフィクションです。



ずいぶん昔からの知り合いのように思えるものの、振り返って思い出した記憶からすれば七八年くらいの付き合いの友人から何年か越しの引っ越しの連絡があり、互いに日をまたぐ近況報告ともいえないような連絡がまばらに続いて、そのうちに、と滞る。

何か気にかかることがあるか連絡の内容からは読み取れない。連絡ひとかたまりをスクロールすればそこに読み取るべきものがあるかのように思えてくるものの過去からの延長のようなやり取りのほか外れた調子がない。

いつだったか昔の知り合いに少し遅い出勤前の時間に最寄りの駅前でばったり会って、促されるままどちらにせよと割り切ってドトールコーヒーの喫煙室で少しの間話した後、乗り換えの駅のトイレで見た自分の顔が幼くなっていた。
急行電車のひと区間の後、目だけは遅い出社のものに戻っていたのか、鏡越しに自分の顔から友人との付き合いのあった時期の時間を読み取ったらしい。

―仕事は最近どう。
ー最近はなるべく店にでるのはやめて、外で人の話をきくようにしてるかな。
話すにつれて昔のようにはいかないと、音楽は最近どんなものを、共通の知り合いには会っているかと横滑りして、また連絡するよ、とそのまま喫煙室に残って作業する方に手をあげて店を出た。

目に、顔まで設えて、と謂れのないことをたしなめられて不意に、気味がわるい、と口をついたその日の仕事帰りには、何だかんだ会えたのはうれしかったと思うようになっていた。

ふと、久しぶりだねと一言挨拶をするあなた、からはじまるBoAの曲を思い出してYoutubeで聴き直す、歌詞を検索する。

久しぶりだねと一言挨拶をするアナタ
嬉しいけれど何故だろ ちょっぴり悲しくて
何を話せば 離れてる距離埋められる?
離れてる時のほうが そばにいる気がして

お互いの物語は きっとひとつなの
淋しい想い 擦れ違い それは結び合う途中の駅

次の日の朝の散歩でもBoAの同じ曲を聴きながら西側に向かう道を歩いていると、住宅に狭められた眺めとも言えない道沿いの見渡しの背景に山の稜線がはっきり見えて、何はなくとも続くものだね、と取りなしたようになり、それきりしばらくは思い出さなかった。

良ければ子どもも連れてきてよ、とまた連絡が届いて、パック酒かついでいきますよ、と折り返した。帰りのバスで子どもにもたれかかって面倒そうにされている自分の姿が思い浮かんだ。

少しずつでも自分なりに考えをすすめて行きたいと思っています。 サポートしていただいたら他の方をサポートすると思います。