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大阪大学大学院理学研究科数学専攻合格体験記【令和6年度】

こんにちは、ごうちゃん(@as_he0)です。
数学科院試に向けて勉強をしていたときに、情報の少なさに心をえぐられたので、阪大院に合格した今この記事を書こうと思いました。少しでも読者の助けになればと思っています。


プロフィール

  • 経歴:商業高校卒業→国立文系中退→岡大数学科編入

  • 専門:解析学(確率論)

いつから対策したか

本格的に院試の対策を開始したのは、大学三年の2月あたりです。ということは、対策期間は約半年ということになります。しかし、普段から院試を意識して数学の勉強を行っていた(大学三年の夏から杉浦解析のゼミに参加していたなど)ので、実質1年くらいは対策していたかもしれません。

勉強時間

大学1年の秋から院試まで3700時間くらいやりました。黒田関数解析を読むなど、院試対策以外の勉強も入ってます。授業時間は入れてないです。

スタプラ

試験対策

阪大は数学A(微積・線形・位相・複素解析)、数学B(群論・環論・多様体・位相幾何・ルベーグ積分・微分方程式から3題選択)、英語、口頭試問があります。数学Bで専門外の問題も1問解かないといけないのが、阪大の特徴です。

数学A対策

微分積分:一様収束が頻出テーマです。平均値の定理、テイラーの定理(口頭試問で剰余項について聞かれる人がまあまあいるので、阪大は重要視しているかも)、ワイエルシュトラスのM判定法を使う問題が多い気がします。

線形代数:対称行列・交代行列がらみの問題が多いと思います。ケーリーハミルトンの定理、次元定理を使う問題が多いと思います。おそらく、数学Aの中で一番難しいです。

位相空間:コンパクト、ハウスドルフ、商空間が頻出だと思います。〜でない例を作れという問題は密着位相や離散位相を入れれば大体できます。位相空間論の本に載っている定理がそのまま出ることが多いので、出そうなやつは試験前に暗記しておいた方がいいと思います。

複素解析:留数定理やCauchyの積分定理を用いて、広義積分の値を求める問題がほとんどです。解き方は決まっているので、複素解析は得点源にしたいところです。しかし、2023年度の問題だけ違う問題が出たので、ローラン展開のやり方、リューヴィルの定理、除去可能特異点くらいは知っておいた方がいいと思います。

数学B対策

わたしは、群論・ルベーグ積分・微分方程式を解くと決めていました。解く大問を3つ決めて、その3つに集中して対策するのがいいと思います。
群論:ラグランジュの定理を使わない年はほぼないです。赤雪江などを読み込んでおくのが一番大事だと思います。

ルベーグ積分:ルベーグの収束定理、フビニの定理を使いこなせるようになれば解けるようになります。フーリエ解析がでることもありますが、上に挙げた二つの定理を使えば解けるようになってます。覚えることが少ないので代数系・幾何系にもおすすめです。

微分方程式:ルベーグの収束定理、平均値の定理、積分の平均値の定理を使いこなせるようになれば大体解けるようになります。あと、1階線系微分方程式と2階線形微分方程式の解法は絶対覚えておいてください。ルベーグ積分と同じで覚えることは少ない。

数学Bでは異常に難しい問題が出題されることもあります。しかし、必ず基本的な問題もあるので、基本的な問題を落とさなければ大丈夫だと思います。

英語対策

簡単なのであまり対策しなくていいと思います。というか、数学科院試では英語はほぼ合否に関係ないと言われています。私は『数学のための英語教本』という本を一通り読みました。

口頭試問対策

英語の試験が終わった後に、口頭試問有資格者が発表されます。わたしは、紙に聞かれそうなことをまとめて自分の番が来るまでずっと眺めていました。口頭試問については、この記事を読むといいと思います。
1日目の数学Bの試験が終わった後に、試験監督が「大事なのは明日だからね」と言っていたので、阪大は口頭試問を重要視している可能性があります。

使用教材

基本的に過去問しかやってないです。より詳しく言うと、阪大10年分、京大10年分、名大5年分やりました。今まで読んだ本は私のTwitterのヘッダーをみればなんとなくわかると思います。

次に試験当日のことを書きます。

試験

0日目(試験前日)

京大と阪大の受験日程はとても近かったので、岡山には帰らずに京都から大阪に直接行きました。試験前日にもかかわらず、京大院試の口頭試問がトラウマでホテルで発狂してました。正気を取り戻したところで、モノレールで柴原阪大前駅までいき、下見を済ませました。

1日目(数学A,数学B)

午前8:30頃に試験会場に到着しました。張り紙に受験番号1001~1060とかいてあったので、「うわ、多いな。。。」と思い発狂しそうになりました(2023年度は受験者47人だったらしい)。周りを見渡すと京大院試のときにいた人がたくさんいたので、さらに不安になってきました。
さて、数学Aですが、例年よりだいぶ簡単だったので8割くらいできました。
できなかったのは、線形代数の(4)と位相空間論の(3)のみです。線形代数の(4)は反例をあげるだけでいいのですが、試験本番の緊張のせいか、なぜかできませんでした。位相空間論の(3)は補集合を考えればすぐできるものでしたが、(1),(2)で真真と来たので、次はどうせ偽だろうと思いずっと反例を探してしまいました。ア〇ですね~。
あと、複素解析の問題で留数が0になる問題があって、計算ミスを疑い5回くらい計算をやり直しました。今年は意地悪な問題が多かったかもしれないですね。
つぎは数学Bです。数学Aが簡単だったので、数学Bで合否がわかれる。。。と思いながら、解答開始の合図と同時に問題冊子を開きました。まず最初に群論の問題を見たのですが、難しそうだったので、自分の専門である解析の問題から解くことにしました。解析の問題は2問ともそこまで難しくなかったので、2問とも1時間半で完答しました。もういちど、群論の問題をみてもさっぱりわからなかったので、環論の問題を見てみました。すると、(1)が中学生でも解けるような問題だったのです。群論で全滅するよりは幾分マシだろうと思い、環論の(1)だけ解いてあとは寝てました。今確認すると、(2)もサービス問題でした。恥ずかしい。2024年度の環論の問題はかなり易化していたらしいです。数学Bは7割程度だと思います。

2日目(英語,口頭試問)

英語は合否にほぼ影響しないので、気楽に英語の試験を受けました。細かいミスはあると思いますが、全部書けました。13:00に筆記合格者が掲示されました。自分の番号があったのでほっとしました。筆記合格は47人でした。欠席者が多かったので、不合格者はあまりいないと思います。口頭試問対策は全くやっていなかったので、試験会場に戻って微積線形位相の基礎事項・例を必死に覚えました。控室に行くと、ほとんど京大院試にいた人だったので、外部専用の部屋だと思いました。私は順番が後の方だったので、自分の番を待つ時間は本当に地獄でした。
口頭試問の内容は以下の通りです。
微積
・有界集合の定義
・有界閉区間上の実数値連続関数が持つ性質を複数挙げよ
・開区間(0,1)上で連続だが一様連続でない例をあげて、証明もせよ
線形
・ランクの定義
・行基本変形をしてもランクが変わらないのはなぜ
・階段行列は一意的か
・行基本変形をするということは、どうゆうことか
・線形写像f:C^n→C^mをx→Axで定める。行基本変形は基底の取り換えだが、どっち側の基底の取り換えか
・dimImfをnとdimKerを用いて表せ
・カーネルの定義
位相
・位相空間のハウスドルフの定義
・ハウスドルフ空間の部分空間はハウスドルフか、証明もせよ
・(0,1]∩Rのコンパクト集合は閉集合か

こうみると線形代数の質問が多いですね。線形代数が一番苦手なので、それを見抜かれたんだと思います。
有界集合の定義とランクが変わらない理由以外は答えられました。上に有界かつ下に有界であることが有界集合の定義なのですが、頓珍漢なことを言ってしまいました。ア〇ですね~。あと、志望理由は聞かれませんでした。数学科院試では志望理由を聞かれることはあまりないのかもしれません(京大院試でも聞かれませんでした)。面接時間は約30分だったと思います。

合格発表

京大院の合格発表が9/1にあって、阪大院の合格発表が9/6にあったのですが、9/1に京大院の合否を確認したところ不合格だったので、阪大院に落ちたらニートだ。。。と思いながら阪大院の合格発表を待ちました。本当に地獄でした。鬱っぽくなっていたと思います。ところで、阪大院の合格発表は現地に見に行くか郵送です。今時珍しいですよね。友人も阪大院を受験していたので、友人に阪大院の合否を確認してもらいました(実家に帰省していたので、自分で合否を確認することができなかった)。結果は二人とも合格でした。一気に肩の荷が下りました。合格者は42人でした。口頭試問で5人落ちたということになりますね。

得点開示

結果が出たら公開しようと思います。

(2024/04/13追記)
最高点220点で私は128点(段階4/5)でした。低すぎるのがショックで更新できていませんでした。

阪大院試では、おそらく減点方式があると思われます。どうゆうことかというと、普通の試験は、0点かプラスの点が加算されますが、阪大院試では、簡単すぎる問題が解けなかったり、簡単すぎる質問に答えられなかったりすると、マイナス点が加算されるということです。

筆記試験で環論の簡単な問題が1問しか解けてないこと、口頭試問で有界集合の定義が答えられなかったことが大きく減点された原因だと考えています。

※あくまでも私の予想です。

最後に

X(旧Twitter)で毎年、多くの不合格ツイートを見ます。院試は簡単だという風潮に流されずに、頑張ってほしいです。


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