アガサ・クリスティ『ポワロ登場』
はじめましての人も、
前から知ってる方も、
ごきげんよう。
偏光です。
Pixivで投稿してきた小説以外の文章を、
noteに移して行きます。
(文字数:約1400文字)
「ポアロ」表記と「ポワロ」表記の両方が存在しますが、
ごく個人的には「ポワロ」の方が好きです。
なぜならpoaではなくpoiであり、
フランス語圏出身者のイメージがより明確になる。
名探偵ポワロと、
相棒ヘイスティングスの初期短編集、
を今になって手に入れて読んだのは、
NHK「グレーテルのかまど」で紹介されてたから。
長編は読んでたしポワロ好きだったけど、
短編は紹介されるまで読んだ事が無かったから。
一旦読み終えて、
巻末の解説に発表順が載っていたので、
その順でも再読しました。
もちろん文庫版の短編集まで買うような人は、
すでに私のようなポワロ好きと思われますが、
また『チョコレートの箱』は、
大事なエピソード(何せ記録上唯一の失敗談)ですので、
文庫版はやはりそのエピソードで締めたいところですが、
クリスティさんが彼を、
如何なる手順で説き明かしていったかが、
徐々に窺えるのもまた一興。
私は幼少の頃から、
どのようなジャンルの小説であっても、
「異文化交流もの」がとにかく好きです。
異形(つってもヒゲの小男ってくらいやんけ失礼やで)で
風変わりとよく評されますが、
何のその、
彼はおそらく生誕国の、
ベルギーにいた頃は真っ当な常識人です。
ってか刑事だし。
イギリス人達とそのコミュニティーの中では、
いささか奇妙に映るだけ。
几帳面で潔癖症、
言うても真に几帳面な人達の中では常識の範囲内
(真に潔癖症な人達の中では全くもってラフだし)。
お洒落で美食家で、
紅茶よりもホットチョコレート好きで何が悪いかね。
あと口癖の「灰色の脳細胞」が、
原語で言えば「the little grey cells」が、
小学生の頃から私はたまらなく大好き♪
まず「脳細胞」って字面が、
薄気味悪くてゾクゾクしちゃうじゃない♪
そこに「灰色の」って、
わざわざ付けちゃうところがユーモラス♪
いらんねんその情報、って感じ♪
「私の灰色の脳細胞」
って言う時の自信満々感も好きだけど、
「君の灰色の脳細胞」
ってヘイスティングス達に言う時の、
勝手に人の頭の中解剖してくれんなや、
ってツッコミたくなる感じが、
ってかこのおっさん明らかに、
ツッコミ待ちやんけ可愛いやんけ。
原語を正確に訳すると、
「ちっちゃな灰白質細胞(つまり大脳新皮質)」になって、
意味合いは微妙に違うけどニュアンスはかなり近いと思う。
わざわざくっついた「little」が多分ちょっとムカつく。
「ポワロ好きってちょっと変な人」感が、
読書家の間にすらはびこっているのも、
私の同情心とへそ曲がり気質を、
大変に掻き立てて最高です。
「みんな大好き」とか、
「嫌いな人いないよね」とか言われちゃうと、
「じゃあ私は良いや」って、
気持ちが遠ざかるんですよね私の場合。
しかしながらポワロのキャラクター無くして、
他にどのような名探偵が、
『オリエント急行殺人事件』を、
深く読み込ませてくれるだろう。
あの一作だけでも彼の真価は知られるべしだ。