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言語女と非言語男(映画『アメリカン・ビューティー』)

 はじめましての人も、
 前から知ってる方も、
 ごきげんよう。

 偏光です。

 何が誰にとっての珠玉に見えるか分かりはしない。

(文字数:約2000文字)


  『アメリカン・ビューティー』
    1999年 アメリカ
    サム・メンデス監督
    ケヴィン・スペイシー
    クリス・クーパー


哀しき事のみ多かれど

  ケヴィン・スペイシーに、
  ああいった疑惑が持ち上がった事で、
  (2023年7月無罪評決。
   ただし事の発端については謝罪している)、

  彼の主演作全てが、
  どうにも正面切っては誉め称えにくく、
  なってしまったが、

  バケモノレベルに素晴らしい、
  名俳優であった事は疑いない。
  

  配偶者とまだ付き合っていた段階で、
  CSで放送されているのを二人で観て、
  鑑賞後少しばかり潤んだ目を向け合って、

  「良い映画だ」
  「これは、良い映画だね」
  と頷き合った、

  我々夫婦にとっては心の奥の、
  最も大事な所にしまっておくべき、
  宝物の如き作品なんだ。

  え、これが?

  と人によっては怪訝な顔にもなるだろうが、

  そう。それがだ!


あらすじだけでは分かりようがない

  ウィキペディアや映画紹介サイトで、
  あらすじだけを見てもどうしようもない。

  一家のお父ちゃんが、
  娘の同級生に恋をして、
  それも本気で性愛対象として見やがるから、
  妻も娘も愛想を尽かして、
  一家が崩壊する話。

  そりゃ大抵の人がドン引きよ。

  そしてこれ以降アカデミー賞は、
  なんとなく権威が下がったというか、
  「本当に良い作品は選ばれていない」とか、
  「白人文化礼賛のためのお飾りの賞」みたいに、
  言われがちになっちゃった気がする。

  気がする。
  ごめん。私も雰囲気くらいにしか感じてない、
  適当な発言例を取り上げたけども。

  いやいやしかし、
  さすがに作品賞受賞作となると、
  何のかの言って伊達じゃないぞ。


この記事を作成するに当たって

  配偶者には報告してみた。
  (相談したところで私の場合は、
   書くと決めたなら書く。)

  「あの映画の良さを書き表せたなら、
   私は自分の文章力に、
   相当な自信を持っても構わない気がするんだ」

  すると配偶者は宣った。

  「いや無理でしょ」
  何言ってんの(・ω・)あっさり。

  「ラストのお父ちゃんの笑顔が全てだよ」
  「それだけで良いし、
   その他に何の言葉も必要無い」

  (・∀・#)←むしろ火が点いた。

  「おお貴様の価値観はそれで構わんが、
   私は何よりもまず文章マニアであり、
   長年目が見えない人向けの、
   文章作成に携わっているんだよ!」

  「『ラストのお父ちゃんの笑顔が全て』で、
   ごまかしてはいない。確かにその通りだが、
   そうと聞かせた映画好きな視覚障害者を、
   悲しませずに済むとでも思うのか!」

  「やってみたければやったら良いけど、
   どうがんばったって無理だよ」
  ムリムリ(‘・ω・)ノシ

  「俺らはずっとそういった、
   当然みたいな諦めと戦ってんだよ」
  (T∀T#)こんちくしょうめ。

なので無理は承知でやってみる

  決まり尽くさない美しさ、
  というものが理解できるか。

  要はそこに尽きる。

  全ては偶然と、
  その時々の、
  人同士の巡り合わせによるもので、

  あらかじめ何事も定められてはいない。


  多くの人はその事実に抗う。

  自分の欲望や、
  他人の主張に流されるのは、
  ネガティブであり、
  負け組として陥れられると恐怖する。

  しかしそこには恐怖など、
  微塵も存在していなかった。

  人の意志は人それぞれに異なり、
  誰一人として軽んじない方が良い、
  というだけの話だ。

  むしろ大切に守り通したい。
  運良く守っていられた事を、
  有難く思える美しさだった。



  だからお父ちゃんは微笑みを浮かべる。

  物語の中で決定的なラストを迎えても、
  微笑みを浮かべたままでいる。

  決まり尽くさない、という事は、
  現実に起こっている、
  あらゆる事柄からも自由だから。

  自由になれたお父ちゃんは、
  風に吹かれるレジ袋のように空を舞う。

  仏教でいう「悟り」のような感覚に、

  仏教になど一切触れてもこなかった、
  あくまでもアメリカ的な生活の中で、
  たどり着いた話だ。

  少なくとも彼の娘は、
  世間的な意味ではなく本当の意味で、
  幸せになれるだろう。

  初めからそうした美しさに気付いていた男が、
  彼氏になってくれてるから。


  ところでクリス・クーパー演じる、
  隣の一家のお父ちゃんに、

  共感は出来ないまでも、
  「そりゃあ今までつらかったな!」
  と思えたなら、
  この作品の理解度は更に深まります。

以上です。
ここまでを読んで下さり有難うございます。

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