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鋭利なチクワ血抜き【毎週ショートショートnote】

「出来なくもないぞ」
 と漁師の知人が語り出してくれたので、そのまま書き記す事にする。
「チクワは所詮竹などの棒に巻きつけて、輪状に成形する、という形状を表した名称だからな。例えば魚の骨などの硬い素材を、輪状に削り出して、先端を鋭利に研ぐことは可能だ」
「血抜きに便利だな」
 とそれを聞いていた猟師も呟いた。彼の居住地そばにはイノシシも出るのだから、現代社会においても現役である。
「槍先が細くチクワ状に作られてあったなら、例えば頸動脈などに刺して、絶命させると同時にチクワの穴から、そのまま余分な血液を抜く事が出来る。なるべく肉は新鮮かつ腐りにくい状態で保存したいからな」
「可能は可能なんだが」
 漁師が腕組みで呟いて、猟師も隣で頷いた。
「流通に乗せ切れるかが問題だ」
「それで採算が取れるかもだな」
「結局目新しい事など何もやらない方が無難になる」
 そこで二人は目を見合わせ、
「あるいは」
 と同時に言って口をつぐんだのだが。


(407文字)

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