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海のピ混濁【毎週ショートショートnote】

 自宅から水着で駆け出し表通りを突っ切ればすぐ砂浜に出られるほどの海近くで、幼少期の2年間を過ごしたもので、親や近所の大人たちからは、何事かあれば必ずのように海に連れて行かれて漬けられていた。
 風邪を引いたなら海。あせもが出来たなら海。食欲が無ければ海。食べ過ぎて胃がもたれても海。何はともあれ海。大人も子供も泳ぐでもなく文字通り肩まで浸けられるのである。まさに海水浴。おそらくは塩分による殺菌効果を期待した民間療法の一種であろう。
 波が寄るので未就学児童の体躯では、引き寄せる力に持って行かれないよう、顔までは浸かり切らないよう、あまつさえ海水などは口に入ったとしても飲み込まないよう、十分に気を付け気を遣いながらの五分から十分間である。
 誰のどういったどれほどの分量が紛れ込んでいるか分かりもしない事くらい、未就学児童ですら理解している。
 もちろん海のピの話だ。「ピ 英語」で検索してごらん。


(文字数:398文字)

 私がよく書き記す「地獄の2年間」ではなく、
 その直前の2年間です。


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