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【へんくつばんがいへん】令和版「ブラック・ジャック」によろしく言いたくて

【本文は読むのに約3分かかります。ご参考までに】

 こんばんは。安藤奈津美です。
 表題の通り、先ほど放送が終わった、高橋一生主演版「ブラック・ジャック」を見終わりました。そのうえで、

 主演もこうコメントしているとのことなので、一切忖度無しで感想を述べたいと思います。

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 ちなみに私の「ブラック・ジャック」履修歴は下記の通り。

・学生時代に原作漫画を読破。内容は覚えていたりいなかったり。好きなエピソードは「六等星」。
・学生時代に本木雅弘版実写作品を視聴。双子のピノコに驚きましたが、全体の雰囲気は好き。
・今年になってOVA版「ブラック・ジャック」を配信サイトで視聴。山路ボイスのドクター・キリコに痺れる。
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 それでは以下、本日放送分の感想を箇条書きで。

・単発のテレビドラマとしては見ごたえがあった。
・良くも悪くも画として独特の強さが特徴の柘植デザイン(人物デザイン他)を、演出はよくまとめていたと思う、特に前半。ただ、後半になるにつれ、現代日本の風景との違和感が(仮に「ブラック・ジャックは都市伝説」という独自設定を前フリにしていたとしても)滲み出ていた。これは獅子面病にまつわる夫妻の住居のシーンに顕著だったかと。
・主要な登場人物をほぼ出して、2時間にまとめ上げた脚本は極めて難産だったろうと推察される。ただ、琵琶丸の原作の設定がまるごとスポイルされていたり、ドクター・キリコが女性に変更された必然性の弱さがどうしても引っかかった。一方で、ピノコをあれほど3次元に落とし込んだのは驚きのひとこと。演者、衣装やメイク、演出等、どれがかけても成立しえない最高級のピノコだったろう。まさしくアッチョンブリケ。
・本作のドクター・キリコについて少々掘り下げる。今回、中盤以降の主なエピソードが獅子面病の女性をめぐる物語だったわけだが、多少なりとも美醜にこだわらざるを得ない環境にあるという視点から「キリコを女性にしよう」という発想が生まれてもおかしくはない。ただ、性別がどうであれ、人間社会で生きていく以上、美醜にこだわる局面は幾らでも想定しうるのではないか。なんなら心身ともに女性である人物よりも美醜にこだわる、心身ともに男性である人物だって少なからず存在するだろう。もっと言えば、本作で描写された獅子面病は、社会生活を送るうえで大きなハンディキャップになりうるほど容姿が変貌する病だった。である以上、「女性であるが故に寄り添える」という意味合いから、ドクター・キリコを女性に変更した必然性は、そう高くはなかったのではないか。

・……と散々書いてしまったが、本作に光るポイントやシーンが幾つもあったことは確かである。
・高橋一生の比較的淡々とした演技は、ゴシック調の映像や音楽が表現した(良くも悪くも)バタ臭さを巧いこと中和していたようでもあり、2時間の長丁場をじっくりと魅せてくれた。淡々とした一方で、原作でも印象的だったコミカルな表情の再構成も素晴らしかったと思う。
・役者は特に宇野祥平が白眉だった。「妻の顔が病で変わった。今まで通り愛せない」という、字面だけなら酷いような人物を、市井の人間として立体化させただけでなく、2次元から3次元に放り込まれたような登場人物たち(ブラック・ジャックやピノコ、ドクター・キリコなど)を、画面の世界観に馴染ませ固定するような、異次元の「生」っぽさを顕現させていた。
・冒頭、法務大臣と秘書のシーンが、マジで原作を上手いこと分解して3次元に再構築して地上波に流したようで、非常にいい意味で目を疑った。特に秘書の「手塚治虫の漫画に一人はいそうな人」感は素晴らしかった。

 後で追記するかもしれませんが、今日はここまで。(6月30日23時23分)

(文責・安藤奈津美)
(文中敬称略)

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