見出し画像

27.抜糸と注入

7月19日、いよいよ本日は抜糸の日。
手術から毎日様子を見てくれていた形成外科の先生が、「今日は抜糸をします」
という。

抜糸というと、出産の時、会陰切開をして縫った後、抜糸してもらった時の事を思い出す。
あれは痛かった。
「い゛っ!」
痛がるワタシに先生が、
「アンタ出産の方が痛かろうて、なに今更…」
と言って笑ったものだ。
何回やろうが痛かった。


アレを思い出して緊張した。
正直手術室に向かうより緊張した。
怖い。


処置室に入ると先生が待っていて、椅子に座る。
すると、ゾロゾロと看護師さんたちが入ってくる。
「なんだ?」
先生が振り返って見る。
狭い処置室に、看護師さんが5人も入ってきた。
何事かと思っていると、
「あの、見学させてください」
と。
今日は、ティッシュエキスパンダーに食塩水を注入するので、それを見学に来たのだそうだ。

「え、良いの?恥ずかしいなら出しますけど」
先生がこちらをうかがうが、別に恥ずかしいということもなく、見て今後の参考になるのなら是非どうぞと言った。

「先に抜糸からします」
「痛いですか?!」
被せるように聞くと、いや、痛くないと思う、と先生。
言った通り、ハサミとピンセットで糸を取り除く作業に痛みはなかった。


その後、手術後に渡されていたマグネットを使って、食塩水を注入する位置を探って行く。

胸のバッグにもマグネットが入っていて、コレで探り、注入する場所を決めるのだ。
場所が決まったら、油性マーカーで印をつける。
先生が、食塩水を注射器に取り、準備をする。
その作業を、看護師さんたちは食い入るように見ていた。

マークに合わせて、先生が胸に注射を挿す。
「ちょっとだけ痛いかもしれない」
先生はそう言ったが、わずかな違和感だけで痛みはなかった。
今回は、50ccくらい注入する。
こうしてバッグの中に少しずつ何回もに分けて食塩水を注入していき、皮膚や組織を拡張して行くのだ。
最終的に、反対の胸の大きさと同じくらいになるまで注入していって、手術してシリコンバッグか、自己組織で再建を行う。


「中には、張るような感じがする人とか、痛い人もいるんだけどどう?」
どうともなかった。
「大丈夫です」
そのままゆっくり注入して、終わりとなった。


傷口に貼ってあったガーゼは剥がして、茶色いテープが貼られる。
(えっ、そんなセロハンテープ貼るみたいな…)
正に、破れた紙を貼りあわせるみたいに、ペタッと傷口にテープが貼られた。
「しっかりくっついてますよ」
先生も笑顔。


とりあえず順調。
胸のバッグは、夜中に少し張った感じがしたが、気にならず、そのまま寝てしまった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?