『失恋墓地』 #毎週ショートショートnote

線香をつける。
煙が優しく私を抱く。

生きてた頃のあなたみたい。

墓石の前で手を合わせる。
目を瞑ると簡単にあなたの顔が思い浮かぶ。

出会った日、誕生日、クリスマス、、、。
いつだって優しい人だったな。

あなたが別れを切り出した時、
本心じゃないって分かってた。

私は水筒を取り出しお茶を湯呑みに注いだ。
隣にクッキーも添える。

墓石の隣に腰掛けて、自分もお茶を飲み、クッキーを食べた。
一緒にお茶を飲むなんて久しぶり。





私のクッキー、いつも喜んで食べてくれたよね。嬉しかった。

相変わらず、奥さん綺麗だね。
お子さんも、ますますあなたに似てきたみたい。

日本の警察を甘く見てるわけじゃない。
どうせすぐにばれちゃう。

私、十分待ったよね。
もう、我慢しなくてもいいよね。

やっと、隣でぐっすり眠れるね。

線香の煙に腕枕され、
私はそっと目を閉じた。

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こちらの企画に参加させていただいてます！