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『運試し擬人化』#毎週ショートショートnote

「き、来た!」
商店街の福引コーナーがざわついた。


名物大家族の田中6兄弟が、アーケードを横並びで颯爽と歩いてくる。


長男、大吉22歳、

次男
三男
四男
(吉、中吉、小吉は年子なので、ぱっと見では生まれ順が分からない。)

五男、末吉16歳、
六男、凶14歳。



大吉が家族総出で貯めた、大量の福引券を受付に差し出す。



「凶、お前からいけよ!」
お調子者の末吉が言った。

黒いパーカーのポケットに両手を突っ込んでいた凶が、唇を尖らせながら渋々前に出て「ガラガラ」を回す。


ポンッ

と、白い球が出た。
景品はポケットティッシュである。


「あははっ、だからお前は凶なんだ!」
兄達が凶の頭をワシワシと乱暴に撫でた。



その後、福引券がなくなるまで彼らはガラガラを回しまくったが、全員が全員、白い球を出した。


田中6兄弟は、各々大量のポケットティッシュを携えて、来た時と同じく颯爽と帰っていった。



「あの子達、毎年すごい熱量で来るけど、ポケットティッシュ以外当たったことないんだよな、、、。」

商店街の面々は苦笑しながら見送った。






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