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全てを救おうとして、大失敗を重ねたあの1ヶ月

この記事を読む前に知って欲しい事が2つある。
僕は、HSPだということ、それから僕は、とある飲食店で店長を生業としている。

僕のいる飲食店では社員は店長である僕しかおらず、残りはパートとアルバイトの非正規雇用のスタッフで構成されている。人数は20人弱といったところであろうか。

入社して2年で店長まで昇ることが出来た。正直、僕より以前から入っていた同年代の社員を追い越しての出世だった。
その分辛い経験も沢山してきた、その分今があるのだと実感出来る。
今日は、店長になって3ヶ月ほどした時のある1ヶ月の事を綴ろうと思う。結果から言うと大失敗の1ヶ月だった。
人は壁にぶち当たらないと、問題と戦わないと強くはなれない。人もそうだし、ポケモンだって一緒である。経験値となった今、あえて綴ろう。

始まりは小さな一言だった。
「店長、バイトリーダーの子が店長が作ったシフトの事で不満があるみたいで」
ドン・キホーテでお店の買い物をしていた時、信頼出来るパートリーダーの女性から電話を受けた。
どうにも話を聞いてみると、僕がベテランの子より最近勢いが付いてきた高校生達のシフトを多く入れているとの事だった。
ベテランの子より高校生を入れている事に確かに心当たりはあった。
理由としては、その子たちは稼ぎたい子が多く、シフトの穴を埋めてくれ、ロング勤務になっても文句どころか礼の言葉を言ってくれるからだった。
贔屓している実感は無かったが、結果として生まれたこの不満は特に解決しなければだった。
相手はバイトリーダー、自分が休みの日に営業を回してくれる、替えのきかない存在だったからだ。
後日、その子と話そうと決めた。

次に訪れたのは、パートの問題だった。
パートは3人体制なのだが、パートリーダーではないパートが、「私たちもう少し働くから、店長もっと遅く入って来ていいよ」と言ってきた。
これに関して、確かにパートも稼げるし僕は本来の社員の出勤時間より早く出勤していたため、良い案だと思った。
パートリーダーからの意見は、想像を絶する否定だった。
「あの人は本当に何も仕事しない。仕込みをお願いしてもタラタラやって間に合わないし、ワンオペだってしてくれない。それなのに稼ぎたいだなんておかしな話。歴代の店長ともシフトの事で問題を何度も起こしてる」との事であった。
だが、持ちつ持たれつを並行しているパート間のため、お互いの不満が僕に向けて放たれてきた。間を取り持つ事に精一杯で、良い解決案が何も浮かばなかった。

1週間程した時に、アルバイトの面談を行おうと決めた。日々、アルバイトが何を思っているのかを探るため、1人15分程ずつ面談を行った。
学校・掛け持ち先の事やシフトの事、繁忙期は出れるのかと言う質問、好きな、嫌いなスタッフはいるかという問をした。
今思えばこの面談も、失敗を産む原因の1つであったのである。

そこで目立った意見はふたつだった。
ひとつは、アルバイトのA子というスタッフ(ベテラン)と一緒のシフトに入りたくないというもの、
残りは、信頼を置いていたスタッフのB子が、面談で何を聞いても特にありませんと答えたことだった。

A子はベテランなのだがお店で禁止されているネイルをしていて、カラコンを入れ、最近僕の休みの日の営業態度がすこぶる悪いらしかった。
ネイル、カラコンに関しては以前にも注意していたが直らないため、シフト数を減らしていた。
そして、それを伝えた。
酷く立腹していて、その日は終わった。
だがその日に返ってきたLINEには、長文の反発心が綴られていた。
「今まで言ってこないのがずるい」「クビにしたかったらして下さい、むしろクビでいいです」「先輩達はネイル注意されたことがなくて、なぜ自分だけ言われなければならないのか」
本当に都合が良い奴だなと思った。でもHSPである僕には痛みとして心に文章が突き刺さってきた。言わなかった自分が悪いのか。
そして後日、親が乗り込んでくるかもしれないという話にまでなっていた。親も立腹しているとの事だった。

B子には信用を置いていた。感性が少し似ていて、普段ならシフトの事など言ってくれる子だった。だからあの面談はショックだった。何も思わ無いわけが無い。現に、B子もシフトに不満があるとの声を聞いている。
B子にはその後何度も面談をしてみたがダメだった。何も、言ってくれはしなかった。
B子が辞めさせて欲しいと言ったA子が辞めたあと、B子から言われたのは「また大学生減っちゃいましたね」だった。
お前が辞めさせろって言ったんだろ、と思ってしまった。

この翌週のシフト作りが、全く進まなかった。1人コマに入れる度にその子の稼ぎ、周りの稼ぎ、嫌いなスタッフとは被らないか、入り時間に不満は無いだろうか、等と考え、30分で終わるシフト作成に2時間も掛けてしまった。

店長になってすぐに周りの店長から言われた言葉は、「全員に好かれることは無理」だった。
僕は当初その言葉に愕然としていた。それは、あなた方が歩み寄る努力を辞めたからではないか、と。だから現状シフトが組めていないのではないか、と。
でも経験してわかった。全員に好かれることは、無理、なのである。
1人の意見を通すともう1人の意見を通せなくなる。当たり前だ。それを20人弱いっぺんに通そうとしたんだ。無理に決まっている。僕の脳はパンクした。上司に相談し、全てのことを解決しようと、1つずつやって行こうと決意した。

バイトリーダーの子と話した。不満を持たせてすまないと話した後、驚く声が返ってきた。
「その件なんですけど、実は私は何も言ってなくて、パートリーダーが勝手に私の名前を使って言ってるんです」
衝撃だったがホッとした、この子は味方でいてくれるようだ。パートリーダーも、僕のやり方に不満というよりは正そうとしていてくれたんだろう。このままでは問題が起きるぞ、と。

その計らいもあって、バイトリーダーの子がA子を止めてくれた。親を呼ぶより、言いたい事があるなら店長に直接言えばと説得してくれたようだ。A子から連絡は来なかったが、親も来ることは無かった。

B子については、OBでB子と仲のいいスタッフを飲みに誘い相談した。「B子はそういう子、真正面からぶつからないけど不満を周りに撒き散らす。でも、その人の事は嫌いじゃなくて、寝れば忘れる。ただの一日の出来事に過ぎない」との事だった。OBは酔った拍子にB子をなんとその飲み会に呼んでくれた。酒の入っている僕は、B子に思いを告げた。B子も不満を色々言ってくれたが、今は良好な関係を築けている、と思う。

パート問題は、人件費がうちの店はギリギリという事だけ告げて諦めてもらった。裏では愚痴愚痴言っているらしいが、それでも表面上は解決した。そのパートは転職ももうする気は無いようで、実は稼ぎたいのも生活は関係なく、ただ自分より仕事の出来ないパートより稼げないのが嫌、というプライドに過ぎなかった。

これで一応は、起こった全ては解決?した。

人の上に立つというのは、ひどく険しいものだ。そしてこの1ヶ月で思ったことがある。
自分は、人の上に立つのは向いていない。

HSPが酷く邪魔をする。嫌な顔を見逃せない。声のトーンで感情を読み取ってしまう自分には、これだけの人を束ねる事は出来ない。
人を束ねるのには、ある程度の自分の教科書を押し付けられる力が無いと難しい。
それには多少の溢れが存在するが、それを拾わない気質が必要だ。
容器の形は決まっているが、溢れないように出来るだけゆっくり運べるか、と
容器そのものの形を変え、絶対に溢さないように尽力するか、

何を見ても、前者の方が良いだろう。
僕には出来ない、共感力が高すぎる。

この記事をいつか、こんな事もあったなと見る日が来るだろう。
その時僕は、違う仕事をしているのだと思う。

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