再「1億2614万人(切り捨て、以下同)」

 いつもの新聞2022年1月19日夕刊の「時代の栞」という企画にあった一節です。栞だから、往年の「本」を紹介しているようです。今回は残間里江子さんの2005年の著作『それでいいのか蕎麦打ち男』を取り上げました。ご自身も「団塊」である残間さんが、同世代の男たちが定年(現役引退)を迎えて、〈蕎麦打ち、楽器、陶芸など趣味に走って〉、まあ、不甲斐ないというような内容の本だそうです。わたしは読んでいません。出たのは知っていましたけど、そもそも、「団塊」の人たちには批判的でしたから、今風に言えば「べつにどうでもよくね」という思いでした。

 おっと、表題の「1億2614万人」とは、2020年の国勢調査での日本の総人口です。そんなに多かったんだあと思ってしまいましたが、焦点はそこではありません。小林伸行記者はご丁寧に「(切り捨て、以下同)」を付けました。

 必要でしょうか? 今調べると、1億2614万6099人だそうです。なるほど、四捨五入すると1億2615万人になりますね。小林記者はそれを嫌ったんでしょうか。「べつにどうでもよくね」

 こんなところ、神経質になる部分ではないんじゃないかな。

 このマガジンは、「日本語の破壊についての簡潔な報告」と題しています。で、破壊が許せん!ではなくて、なるべく「破壊」のおもろいところを取り上げようと思っています。言い換えると、旧来の「正則」から逸脱していようが「わかりゃあいいんです」、さらに「こっちのほうがニュアンスがよく伝わるじゃん」てな視点でネタを探しています。

 だからこそ、切り捨てと四捨五入の違いを気にするような言葉が、気になるのです。(笑) だって、有効数値を考えたら、団塊の世代の行動様式を紹介する文章の中では日本の人口を1億2000万人にしたところでなんの問題もないと思いますからね。それを…。

 さらに小林記者、団塊の世代を1947年から49年にかけて生まれた世代と規定したうえで--これは、記事の文脈から察する限り、たぶん残間さんの著書に則ったんじゃないかな。一般には1946年から1950年じゃないかと思うんですが、該書を今は確認できません。まあ、とりあえずそれは問題にしません


※ここの部分、団塊の世代とは、1947-49とするのが多勢みたいですね。わたしの思い込みの「1946-50」も間違いではないようですが。この点、きになっていて、いったん、下書きに戻しましたか、再び、公開します。書き直したらアレなんで、こういう形で、元の文を残したままの注意書きとしました。※

-、団塊直後の1950年生まれの188万人から遡ると、団塊は〈突如ふくれあがる〉と表現しています。

 曰く、49年生まれが205万人、48年が201万人と。ふむふむ。ところが、次、47年生まれは〈189万人〉なんだそうです。

 ふくれあがってないじゃん。1万人しか違わないじゃん。おっと、現代若者正則文法だと、違くないじゃん、か(笑)。

 念のため書いておきますと、この数字は2020国勢調査時点での「生存者」の数字です。で、この3年代を合計すると〈596万人〉になるそうです。205+201+189=595ですから、1万人差が出ます。なるほど、先の「切り捨て」をわざわざ注釈で入れた意味が、ここで分かりますね。

 話を戻しますが、分母が200万規模の1歳違いの世代の人口が1万人増えたからといって、〈ふくれあがった〉の表現はいかがかな。189÷188は0.53%増ですから、切り捨てたらゼロ。ふつう、横ばいと言いますよね。

 半世紀ぐらい前に書かれた本で、地球は46億年前に誕生したと書かれていました。最近の本でも46億年と書かれています。50年も経っているんだから、最近の本では「地球が誕生して46億50年」とするべきですよね。いや、50年は億の単位のうちでは有効ではないからハショリます。一応、「切り捨て」と書いときます。みたいな(笑)

 さらに、小林記者は、これら3ケ年代より半世紀若い3ケ年代の人口を〈団塊の半分強の356万人にとどまる〉と紹介しました。356÷596は59.73%です。どの桁で切り捨てるかにもよりますが、この数字だと--切り上げにはなってしまいますが--、「約6割」とするのが常識的じゃないかな。

 ※「3ケ年代」なんて、変ですね。団塊が47・48・49年生まれ。半世紀後が(たぶん)97・98・99年生まれのことだと思います。記事では〈21歳~23歳〉と書かれています。このことを指して、わたしが勝手に考えた言葉です。小林記者は関係ありません。

 6割と半分強。この2つの言葉は同じ印象を与えるでしょうか。


 わたしはそう思いません。最初に神経質になって有効数値を考えずに「切り捨て」を神経質にエクスキューズしたわりには、ここでは、なんとアバウトなことでしょう。

 ちなみに、残間さん、1950年3月生まれです。う~ん、微妙やなあ。生まれ年だと、ここで言う団塊からは外れて逆〈ふくれあがった〉の”しばんじまった”世代に属してしまう。学年で言うと、49年と同じ代ですから、団塊になります。

 ああ、めんどくさ。

 酒を飲みながらのくせに、そんなめんどくさいことを考えて、この投稿になりました。

 えっ、わたしのほうが小林記者より神経質で、ナンセンスを理解してないって。ごもっとも。この投稿を書きながら、そう自覚しました。

 で、シークヮーサー果汁を使ったオルタナ・ジンリッキー、赤ワイン半分、シェリー酒2杯が終わったんだけど、たしか、まだ紙パック純米酒が2、3合残っているはずなんだな。イッチマイナ!(オーレン石井風)

 小林記者、何歳なんだろう。

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