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ポルトガルは、住む地域でかかりつけ医が決まっている?

みなさん、こんにちは!
ヘルプユー編集部です。🩺

少しお時間が空いてしまいましたが、いかがお過ごしですか?
ヘルプユーでは最近、新たなメンバーも加わり益々楽しくなりそうな予感がしています!

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今までTwitterやfacebookといったメディアを通じて情報発信してきましたが、私たちのプロジェクトについてより深く知って頂きたいなと思い、新たに『 ヘルプユー・ マガジン』を発刊することにしました🗞
私たちは普段、慣れ親しんだ環境で生活していて、海外の方と接する機会もコロナ以前よりも減ってきているのではないかと感じています。今後、海外の方が日本へ旅行や留学・仕事でやってきた際に、怖い思いや不安を与えないような工夫をするためにも、「日本と海外の医療の違い」について深く理解してもらおうと考えました。
各国の医療制度や保険・診療内容等について、実際に海外出身の方にインタビューしながら発信していきますので、みなさま楽しみながら読んでいただけたらうれしいです!

それでは早速、ヘルプユー・マガジン を初めたいと思います。記念すべき第1回は「ポルトガル🇵🇹の医療について」です。これまでヘルプユーから発売している医療通訳本『HELP YOU』の英語翻訳に携わっていただいたポルトガル出身のアンドレ・ピント・テイシェイラさんにインタビューしました。

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André Pinto Teixeira(アンドレ・ピント・テイシェイラ)
ポルトガル・リスボン市出身。リスボン大学文学部卒業。新潟大学大学院現代社会文化研究科修了。現在は都内の人材会社に勤務しながら、翻訳・通訳や外国語教育にも力を入れて活動中。


生まれてから、かかりつけ医が決まっているというポルトガルの医療制度(ホームドクター制)。日本との医療の違いについてアンドレさんに聞いてみました。

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日本で病気になったり怪我をして、クリニックに受診したことはある?

新潟に来てからは幸いにも病気にならなかったからクリニックには行かなかったけど、僕が通訳アシスタントとして友達の付き添いでクリニックに行ったことがあるよ。大学を卒業して上京してからは、歯科と耳鼻科に行ったね。

アンドレは日本語上手だから、通訳者として行くこともあったんだね(笑)

その友達は日本語話せなかったから、僕のところに連絡きて一緒に行くことにしたんだよ。

実際に受診してみて、医療制度の点でポルトガルと違うところはあった?

ポルトガルには home doctor っていう『かかりつけ医』がいて、生まれてからずっと一緒の先生なんだよね。まずそこが大きく違うところかな。住んでいる地域には必ずhome doctorがいるから、何か病気になったらまずはその先生のところに行って診察してもらう。

日本だと自由にクリニックを選べるけど、ポルトガルだとかかりつけ医が決まっているんだね。

そうだね。このかかりつけ医はあくまで国立の場合なんだけど、自分でクリニックを決めることもできるよ。例えば、Privateの私立病院を受診したい場合は個々人で自由に病院を選ぶことができる。私立だから自己負担が大きいのが欠点なんだけど・・・。

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そうなんだ!ちなみに国立の病院ってお金はどのくらいかかるの?

無料で受けられるよ!ポルトガルの税金は23%で、学校や医療が無料で受けられるのが特徴。日本だと自己負担が2割〜3割程度だと思うけど、その点も日本と違う所かな。あとポルトガルには身分証カードがあって、国民一人一人に番号がついている。日本でいうマイナンバーカードみたいなものだと思うんだけど。表面には個人情報や本人の写真、裏面には医療保険の利用者Noなどが記載されているカードが国民に支給される。原則、このIDカードを持って受診することになるんだけど、なくても利用できる。特にホームレスの人たちはこのカードを持ってないから、病気になったらそのままクリニックに受診する。実際にはホームレスが社会的スティグマとしてのプレッシャーや、ホームレスという恥ずかしさを感じていて、受診にまで至らないケースが多いんだけどね。

日本でホームレスの方と出会う機会は少ないけど、ポルトガルは多いの?

日本よりは多いと思う。特に都心の賑やかな地域に住んでいるかな。お金を恵んでくださいって言う方が多いね。日本の場合は、ホームレスの方たちに対して無関心な人が多いんだけど、ポルトガルはちょっと違う。『困っている人がいたら助ける』というのが国民性かな。僕の父親もホームレスの人にサンドイッチを買ってあげたりしてたよ。

サンドイッチ買ってあげたんだね!日本だと、そのまま通り過ぎる人が多いと思うな。それがポルトガルの文化であり、国民性なのかもしれないね。

そうだね!ホームレスだけでなく、何か困っている人がいたら、声をかけて手助けすることが多いかな。
ちょっと話題がずれちゃったけど、医療は無料で受けられるって言ったけど、入院費も基本的に費用がかからないよ。手術費用もかからないことが多いかな。内容によって違うと思うけど。ただ、国立の場合は、手術するのに予約してから2〜3年くらい待たないといけないのが弱点かな。

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そうなんだ。2〜3年もかかるのか…。

基本的に手術費用もかからないことが多いから、みんな国立病院を受診するんだよね。そうすると、患者数も多くなって順番待ちになるから、実際に診察するまでどうしても時間がかかってしまう。町医者の home doctor に診てもらう場合でも、予約してから1週間くらいはかかるね。田舎のほうの home doctor の場合は、もうちょっと早いかな。2、3日くらい。
あと、これも日本と違う点なんだけど、home doctorにいけば、コンドームとかピルも普通に置いてある。日本だと避妊用ピルやアフターピルを使用するのに、産婦人科に行って処方してもらうと思うけど、ポルトガルではピルの処方も無料だし、コンドームも無料でもらえる。性のことに関しては、日本社会と違って理解のある文化だと感じるかな。

ちょっとびっくり!日本だと考えられない…。普通に町医者に行けば、ピルやコンドームがもらえるんだね。
インタビューを通してたくさん聞いてきたけど、留学生だったりビジネスマンとして働いている海外の方にとって、もっとこうした方が良いこととかあれば教えてください。

やっぱり言葉の壁は大きいかな。僕も旅行でタイに行った時に、当時夏だったんだけど、暑さと食中毒で、倒れちゃったんだよね。救急車で病院に行ったんだけど、英語で言葉が出てこなかったな。

アンドレでさえも言葉が出てこなかったのか…。😭

うん。英語でしゃべろうと思ってもなかなか言葉が出てこなくて、ポルトガル語しか話せなかったのを覚えているな。だから、心身ともにしんどい時には母国語しか出てこないと思うから、病院の受付だったり、理解しやすい言葉で書いてあるととても助かる。
例えば、受付でもらう問診票も、どこまで書けばいいのか不安になると思うんだよね。問診票でよく見る血液型とかも、海外の方だとわからない人も多いから。

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その人にとってわかりやすく伝えることが大事なんだね。

そうだね。問診票を渡すときも、「指さしでここまで書いてね」とか「分からなかったら空欄でもいいよ」とか伝えてくれると安心する。
あと、これは日本に住んでいる外国人に向けてなんだけど、日本の医療や制度、慣習について理解してもらうワークショップみたいな機会も作った方がいいと思う。自分の国の医療については知っていると思うけど、日本の医療のことはよく分からず生活している人も多いと思うから。また、初めて日本に来た留学生とか研修生とかにも、このワークショップはオススメかな。

色々アイディアも出してもらってありがとう!ポルトガル出身のアンドレが、日本の医療について発信するのも面白そう。近々アンドレとワークショップできたらいいね!

うん、そうだね!
その他ポルトガルのことについて追加で質問したいことがあればいつでも言ってね🙋‍♂️またお話しできることを楽しみにしています。


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取材者:栃丸冬羽(とちまる・とわ)
イラスト:オオカミタホ
編集者:古山正裕(ふるやま・まさひろ)
発行所:ヘルプユープロジェクト

今回、アンドレさんが英語翻訳いただいた医療通訳ブック『HELP YOU』はこちらから👇


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