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基礎問題精講のレベル感―文系の数学 重要事項習得編と対比して

息子は晴れて浪人が決まり、おそらく武田塾に入塾することになるであろう。

なぜ武田塾であるかの話は別に譲るとして、数学の教材としておそらく指定されるであろう基礎問題精講について、「文系の数学 重要事項完全習得編(文系赤)」と比較しつつ、レビューする。

手元にある1Aの五訂版では、例題は149題で、文系赤の同範囲の59題(全体で152題)よりも大分多い。しかも、文系赤では、同じテーマでも問題パターンが違うと例題2題や例題と演習に分けて扱っているところを、小問にして例題1題にまとめられているところもあるので、実質的にはもっと多い。

もっとも、問題数が多いと言っても、問題のレベル帯は相当低いところから始まる。指数の計算、整式の加減、無理数の大小、一次不等式、連立一次不等式といった、当たり前に使えていなければならない事項についても例題となっている。
また、文字を含む方程式ax=bや不等式ax>bを解けのような、教科書の基本例題レベルだが、高校数学の基礎となる重要な考え方を学ばせる問題も例題としてあげられている。

基礎問題精講では、このような、文系赤では当然できているものとして例題になっていないような問題も多く掲載されているが、逆に、文系赤が例題で触れている問題は、一応、すべて触れられてているものと思われる。

もっとも、同じテーマが扱われていても、基礎問と文系赤では、例題が要求しているレベルが異なる。
たとえば、文字を含む2次関数の最大最小の問題は、軸と定義域の関係で場合分けする必要があるが、文系赤では自分で場合分けを考えさせるのに対し、基礎問では予め設問で場合分けしてくれている。
また、2文字を含む整式の最大最小の問題は、基礎問では、小問1で文字を消去して1文字の整式に変形させ、小問2で残った文字の取りうる範囲を求めさせ、小問3で最大最小を求めさせているが、文系赤ではこのような誘導がない(必勝ポイントとして、文字を消去した場合には文字の取りうる範囲に注意すべきことが指摘されている)。
この程度のことは、入試レベル(と言っても基礎レベル)では、誘導がなくても自力でできるようにならなくてはならない。そのためには、誘導部分でやっている作業がどうして必要になってくるのかを理解できている必要がある。そして、そのための最良の方法は、自ら考えて問題を解いて誤答し、誤答の原因を分析し理解することだ。そうすれば、その作業の必要性を実感するし、実感を伴った経験は、定着するだろうし、応用も効くだろう。
基礎問は、この自ら必要性を実感すべき部分を、小問という形で与えてしまっている。一を聞いて十を知るセンスのある子ならば、小問で解いたという経験だけでも、応用を聞かせることもできようが、例題を漫然と解いているだけの子は、問題数をこなしただけで、何も身につかなかったということになりかねない。
もちろん、基礎問でも、精講を設けて、その例題で吸収すべきポイントを解説している。しかし、自力で経験したのと解説を読んだというのとでは定着度が違う。本来なら、例題をやった直後に、じゃあ誘導なしにやってごらんという問題演習を積むべきだ。
本来、演習問題はこのような役割が期待されるが、上記の例題に関して言えば、一手間増やすという方向でのひねりが加えられているだけで、必ずしもそのような作りにはなっていないようだ。また、武田塾を始めとする参考書自習系の動画サイトでは、基礎問は例題を回すだけでよいということになっている。
適切なタイミングで適切な問題を解かせるような指導が受けられる環境にあるのであればよいが、自学自習で基礎問をやる場合は要注意だ。
入門問題精講をやるなどして、ある程度力がついているのであれば、いきなり文系赤に入った方がよいのではないか。ただし、文系赤は、基礎問の例題で扱われている重要問題が演習問題で触れられているところがあるので、演習問題もやるべきだ(それでも、ⅠAⅡBベクトルで例題152題、演習問題120題だ。)。文系赤をこなせれば、今さら基礎問をやるのは馬鹿らしいので、網羅系なら青チャート(すでに7割くらいはマスターできているであろう)、実戦力をつけたいなら文系青に進むことになろう。








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