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人物造形のヒント【付録】 特別な恋を演出するための、関係設定シート


世界です、こんにちは。

このところ筆が鈍っています、世界です…いえ、のろくても、とにかく前に、進むこと。意外に根性あるつもりです。今後ともどうぞ、よろしくお願いします…。

さて今回は、箸休め企画。恋愛小説に個別感がなくてお困りのかた向けに、特別付録として、設定シートを公開。おぉ〜太っ腹…!(お悩み一覧は、お悩み募集記事「小説の人物造形に関する悩みを募集します」へ。ちなみに、まだまだ募集中です!)

これね、私が恋のお話を書く時に、全部埋められなくても念頭に置く項目を、質問シートにしたものです。全部埋めなくてもいいんだけど、これが全然ない恋の思い出というのは、ちょっと物足りない気がする。そんな質問シートです。

え…?

「《好き》に詳しい説明なんていらなくね?」?

はい。ええ。説明はもちろん、要りません。

「僕は、恋に落ちた。」。

たとえばこの瞬間に、読み手もまた恋に落ちているか。それが、大事。質問シートに埋めた内容を、物語に全て詰め込む必要はありません。でも、そこに設定した内容が伝わるように行動や背景や出来事を調整するだけで、あなたの紡ぐ物語には驚くほど立体感が出るはずです。細々とした手法は、いままで、複数回にわたってお届けしてきました。たぶん。

きちんと人物描写ができていれば、きっと、このシートの相当な部分を人物の性格に鑑みて埋められると思います。そして、書き手の皆さまには是非、ご自分の原稿にお戻りになり、書き過ぎてしまったところ、書きそびれてしまっているところを、推敲していただきたいです。

恋、したい。

パワー読み手としても、私は恋愛ものが大好き。登場人物の恋に悩む書き手の皆さまを、全力で応援します…! で は…



恋するふたりのための設定シート

※便宜上、一人称または準一人称(三人称)で主人公がいる小説を想定し、主人公の恋愛対象を「恋人」と呼んでいます。質問はご自分のお話の構造に合わせて読み替えて考えていただけますと、幸いです。


1.主人公と恋人はそれぞれ、自分自身を何と呼びますか?僕?俺?私?姓?名?愛称? それはシーンによって、使い分けたりしますか?



2.ふたりが呼び合う呼び方は?



3.ふたりがそれぞれ、他の人に恋人の話をするときの相手の呼び方は?



4a.恋愛には春夏秋冬があると言います。ふたりの恋はいま、どの辺でしょうか?

 


4b.それを踏まえて、ふたりの恋のすでに起こった事実について、見せ場になったり支えになったりするエピソードを交えて、まず思いつく簡単なアウトラインを示してください。

※詳しくても詳しくなくてもいいですし、単語の羅列でもいいです。後から変えてもなんら問題はありません。





5.ふたりの社会的な立場、責任、経済的状況は?

これを考えることで、次のようなことが考えやすくなります。
・小物
・趣味
・デートへのテンション、デートプラン
・生活習慣、食習慣、購買習慣
・語彙
・基本的な価値観、プライオリティ



6.ふたりがその社会的立場になるに至った、それぞれの外部的な事情と、それぞれの性格上の事情は?




7.ふたりはそれぞれ、自分の過去、現在、未来についてどんなスタンスでいますか?



8.主人公が恋人といて、すごく幸せだと思う時をなるべく詳しく3シーンあげてください。(非性的なことでも、性的なことでも構いません)



9.主人公が「自分は、恋人のことを理解していないのかもしれない」と思ったことがあるとします。
それに思い至った、仕草や言葉、物品やちょっとした出来事のような、なるべく小さくて目立たないサインを教えてください。



10.主人公の性格がわかるエピソードを3つ、恋人の性格がわかるエピソードを3つあげて、それぞれ、お互いのその性格やエピソードについてどう思っているか(あるいは感想を述べたか)考えてみてください。


11a.お互い、出会いの瞬間に一番目に入った体のパーツはどこですか?


11b.ふたりで時間を重ねるうちに、とても素敵だと思うようになる体のパーツは、お互い、どこですか?


12.主人公が、一緒にしたいな、と思って言い出せていないことは何ですか? なぜ、言い出せませんか?



13.お互い、尊敬しているのはどんな点でしょう?


14.お互い、尊重しているのはどんな点でしょう?


15a.恋人の、とてもよくないところをいくつか挙げてください。


15b.恋人の、「とてもよくないところ」と、恋人の「とてもよいところ」の関連性をお教えください。


16a.主人公にとって、理想の関係性はどんなものでしょう?


16b.恋人にとって、理想の関係性はどんなものでしょう? それを主人公が知っているとしたら、どのように知ったのでしょう?


16c.ふたりの理想の関係性に対して、現実の関係性は客観的にどんなものですか?


17.現実の関係性のなかで、理想のそれよりずっと素晴らしい点があるなら、詳しく書いてください。


18.主人公と恋人はそれぞれ、デバイスやテクノロジーをどのように使う人ですか?


19.主人公と恋人はそれぞれ、何に興味を持っていますか?あるいは、何に興味を持ちたいと思っていますか?

単語で構わないので、できれば10個ずつくらい、あげてみてください。比べると、ふたりの共感やすれ違いの原因が見えてきます。


20.ふたりがそれぞれ、なにか新しいことを知るときの手段はなんですか?

※受動的か能動的か、探索的か冒険的か、発見的か定点観測的かなど、情報を得るスタイルがわかると、日常会話や行動におけるその人らしさやふたりの感覚のズレのヒントになります。



21.できればふたりともそう思っているほうがいいのですが、主人公にとってだけ、恋人にとってだけでも構いません、「ありきたりだけどすごく特別だ」と思えた出来事がふたりのあいだにあったとしたら、それはなんだったでしょう?



22a.主人公に恋人を、他のとても魅力的な誰かと比較させてみてください。

※とても魅力的な誰かというのは、恋人ついて主人公が考える褒め言葉を書き出して、それを全て、あるいはそれと等価な美点を数の上で等しく持っているうえ、恋人にはなくて主人公が求めているものさえ、持っている人です。


22b.…その比較には、多分意味がありませんが、そうやって比べられないのは何故ですか?  比較して主人公が気づくだろうこと(恋人の素晴らしい点や、自分の好意の再確認だけでなく、これには自分の未練、劣等感、恋人への幻滅、自己嫌悪などのネガティブな感情も含みます)と合わせて、なるべく具体的に答えてみてください。



23.主人公と恋人はどんなときに、どんな笑いかたをする人でしょう? 最後にふたりで笑い合ったのは、どんなとき?





…いかがでしょう? 

書きたくなってきた? 素晴らしい!

考えあぐねている書き手さん、攻めあぐねている書き手さん、書きあぐねている書き手さん…悩み多き書き手さんたちの、お役に立てたら、これほど嬉しいことはありません。


書けるって、素晴らしい。


ではまた、次の投稿で!


今日は明日、昨日になります。 パンではなく薔薇をたべます。 血ではなく、蜜をささげます。