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ベトナム料理店の彼女がしてくれた「常連さん割引」の話

とてもおいしいベトナム料理のお店がある。バンミー(ベトナムのサンドイッチ)もプレートもおいしくて値段も手ごろ。いつも学生やオフィスワーカーでにぎわっている。

3-4年前、ランチによく通っていて、店のスタッフともなんとなく顔なじみになっていた時期があった。

その後、私の勤めるオフィスの場所が移動して、ランチに行くにはちょっと遠くなってしまったこともあり、しばらくこの店に行くこともなかった。

昨年末、このお店の近くで用を済ませることがあって、とても久しぶりにお店に入ってみた。3年もたてば、スタッフの顔ぶれもすっかり変わっている。

注文したものがテーブルに運ばれて、食べ始めた時だった。テーブルに近づいてきたベトナム人女性に、挨拶された。

「どこかで会ったかしら?」ときくと、「前にここで働いていたの、覚えてる?」と、にこりとする。思わず10秒くらい彼女をみつめたあと、思い当たった。

あの女性だ!
私がお店に通っていたころ、顔なじみだったあの女性。

彼女はサーバーではなくて、レジの担当だった。おしゃべり好きで、支払いをする1分ほどの間に、たわいのない会話をすることが多かった。

そして、彼女に言われた忘れられない一言をすぐに思い出した。


このお店にのドリンクメニューには、何種類かのスムージーがある。
どれもフルーツ味のシロップで味をつけるのではなく、冷蔵庫から出した果物をざくざくとカットして使っていたので、私は大好きだったのだ。食事をしなくても、スムージーだけ持ち帰りで買うことも多かった。

特にハニーデュー(メロン)のスムージーにはまっていて、4日間続けて買いに行ったことがある。でも、4日目にオーダーすると、「今日はハニーデューないわ」と彼女に言われたのだ。「え?」と聞き返すと彼女は笑いながら言った。「あなたが毎日飲んだから、なくなっちゃったのよ!

私が知る限り、このお店ではスムージーに使う果物は隣のスーパーて買ってくる。だから、なくなったらスーパーに行って買ってくればよいだけのことなんだけど、まあ、買いに行く人がいないとかいろんな理由で、なくなったハニーデューは、なくなったままだったのだ。

そんなことがあったので、彼女のことはよく覚えているものの、どうも顔つきが私の記憶とうまく一致しない。

細身で華奢な印象だったのだけど、今目の前にいる女性は顔つきがふっくらとして、あのころのおもかげがほとんどない。
訊けば、子供が生まれてしばらく仕事を離れていたが、最近またここで働き始めたのだそうだ。なるほど、お母さんの顔だ、と納得した。

ランチを済ませレジで支払いをした。店を出てからレシートを見たら、マイナスの数字があるのに気づく。よく見ると、Regular Customer(常連さん)のディスカウントとして、10%の金額が割引されているのだとわかった。

3年もたったのに、私のことを覚えていてくれて、常連さんとして割引してくれるなんて、ちょっとやるなぁとほっこり嬉しくなった。

また行くからね。

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