つかのま

あまりにきれいな夕焼けで、川辺を歩きながら多幸感と胸を締めつける切なさとこの時間が永遠ではないことを想って、小さく泣いた。
本当に時々訪れる、とてつもなく大きな幸せは私を翻弄する。それがどれほど貴重な瞬間なのか理解するのに頭が追いつかないのだ。
時間を切り取って持ち歩けるなら後から何度も反芻するだろう。風の心地よさや、優しく流れる川の音、とろける暖炉の灯のような橙。ずっとこの時間が在り続けたらいい、心から願ったけれど、それは叶うはずもない流動的なものでしかなかった。
いっそこのまま世界が終わればいい、それが私だけの世界であっても良いから今この瞬間に霧散したなら何も後悔しないのに、有り得ない位本気で思った。
諦めなければ願いが叶うとか思いは通ずるとかそんなのはひと握りほどの事で、すべて手離してしまった私には無縁だと思っていた。けれどこの時、存外に自分の諦めの悪さを知ることになった。
神様、あの人を私にください。

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