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ザ・グリード~綺麗に終わることのできないB級映画、それこそが人生の縮図だ~

皆さんの記憶の中に眠るあの素晴らしきB級クソ映画の思い出を掘り起こしていきたい。
そしていつか当時(2002~2008頃)の「木曜洋画劇場」の制作に携わっていた番組関係者の方と繋がり、「木曜洋画劇場」という枠を作ってきた素晴らしい仕事への感謝の気持ちを直接伝えたい。
そんな想いの元、GOOD GUY’s THURSDAY TV SHOWでは毎週木曜日にテレビ東京系列「木曜洋画劇場」で放送されていた映画の紹介をしています。


GOOD GUY’s THURSDAY TV SHOW記念すべき1回目。
この遊びを思いついた時から「初っ端の作品は何にしよう…」とずっと考えていた。

認めたくないけど認めざるを得ない現実。
やっぱりこういう映画が大好きなんだ…

ジャケ

ザ・グリード
(原題:DEEP RISING)
1998・米
監督:スティーブン・ソマーズ
出演:トリート・ウィリアムズ、ファムケ・ヤンセン他
「木曜洋画劇場」での放送歴:2004年11月25日



実はこの作品、「木曜~」以外にもケッコーな頻度で地上波で放送している。
初めてみたのが2004年の「木曜洋画劇場」。当時小学4年生の時に通っていたお稽古(柔道か水泳)から帰った後に家で夕飯食べながら見たのを覚えている。
ちなみにその何年後かに「午後のロードショー」で放送した時はわざわざDVDに録画した。

なぜ2012年当時高校3年生の僕がわざわざ録画したかというとこの作品、実はレンタルが流通していないのだ。
DVDこそ出回っているが高値で取引され、2015年ごろ地元のBOOK OFFで9,800円という高値で販売されていたのを目撃した。※今も高い
地上波を逃してしまったら1万円払わないと見る機会に漕ぎつけられない、ある意味で幻の1本なのだ。


そんな幻のB級クソ映画「ザ・グリード」の魅力とこの映画から僕が学んだ人生の教訓を第1回では描いていく。

1.1分で読めるザ・グリード~あらすじと結末~
2.愛すべき無駄なこだわり
3.バッドエンドとその先にあるもの



1.1分で読めるザ・グリード~あらすじと結末~
主人公である密輸船船長フィネガンとその相棒パントゥーチ。
引き受けた仕事の雇い主がテロリスト集団だったがために豪華客船のシージャック計画に巻き込まれてしまう。

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右:本作主人公の密輸船船長フィネガン。
左:その相棒、パントゥーチ。おちゃらけキャラ。


しかし彼らが襲撃した豪華客船・アルゴーティカ号はひとっこ一人いないもぬけの殻。
実は襲撃の何時間か前に海中からの巨大生物の襲撃により乗客3000人全員が喰われていたのだった!!!

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本作のバケモノ枠グリードさん。
ミミズの頭に無数の牙が生えたみたいなこいつが至るとこから湧き出てフィネガン御一行を襲う。
悪名高きトラウマホラー映画「遊星からの物体X」のメイク担当であったロブ・ボッティンによるデザイン。

わずかに生き残った乗客とハノーバー率いる屈強なテロリスト集団たちと手を組み怪物の追ってから逃げるフィネガン。

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左がテロリスト集団のボス・ハノーバー。屈強な男たちも一人また一人と怪物の餌食になっていく…


最終的になんとか生き残ったフィネガンとヒロインのトリリアン、パントゥーチは無人島に流れ着く。しかし安心したのもつかの間、無人島の茂みの奥から新たなモンスターを思わせる鳴き声が聞こえ、カメラはズームアウトしていく。
そしてフィネガンが一言で締めくくる。
「お次は何だ?」

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???「ギィアアアアアアアアアア」

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(3人のいる浜辺からカメラがズームアウトし…)
フィネガン「お次は何だ?」


まだこの頃の僕はハッピーエンドの映画しか知らなかった。
だってどんな映画でも最後には絶対に人間が力を合わせて怖い怪物を倒す結末になっていたじゃないか!!!
「ジュラシックパーク」だって最後はラプトルの魔の手から逃げ延びることができたし、
「ジョーズ」だってクイント船長が死んだのは驚いたけど最後は大団円だったじゃないか!!!

ハッピーエンドしか知らないこのころの僕はなんとも後味の悪いこの映画のラストに心底気持ち悪さを覚えた。

※しかし彼はこの出来事の数年以内に「デッドコースター」「ゴジラ(US版)」、「ドーン・オブ・ザ・デッド」、「スピー・シーズ」によってさらなるバッドエンドのトラウマを味わうことになる。

なぜ僕はこの映画が好きなんだろうと深く考えるとやっぱりこの映画のラストが「お次は何だ?」で終わる展開でなければここまで好きでは無かっただろうと思う。


2.愛すべき無駄なこだわり

とはいえ、この作品ならではのキャラや設定への面白いこだわりは見受けられる。
作中随所で流れる重低音で構成されるBGMには「ゴジラ」などの往年の怪獣映画へのリスペクトを感じとれる。

また、この映画でテロリスト集団が使う架空の武器「M1L1三銃突撃銃」というがある。
※この映画を見た人しかわからない武器なのにご丁寧に一部のファンによるこの銃の解説ページまであるのだ
「五本の銃身部分が発射と連動して回転するガトリング型となっており、自動冷却装置付きで1000発の連続射撃が可能な中国製の銃」という性能が劇中でしっかり言及されるのだが物語上、別に上記の性能でなければ描けなかった描写など特にない。
つまり制作側の中二心的なものがつまったロマンの塊なのだ。


テロリストの悪玉ハノーバーの死に方もまた秀逸だ。
主人公フィネガンの相方パントゥーチ(おちゃらけキャラ)と二人で逃げる中、パントゥーチの片足を撃ち抜き囮にする。

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しかしパントゥーチが逃げ延びた先ですでにハノーバーは怪物に喰われかけていてなんとか両腕で机に掴まって生き延びている状況。
パントゥーチは自決用にハノーバーにお情けで拳銃を渡すが、何を思ったかハノーバーは貰った拳銃でパントゥーチを殺そうとするも失敗。

腹をくくり自決しようとこめかみに拳銃を当て引き金を引くも先ほどのパントゥーチへの銃撃で拳銃は弾切れだったためこれも失敗。

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ハノーバー心の声「やべ、今ので弾切れだ」

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自分の行いの結果により。最も避けたかった「生きたまま怪物に喰われる」という最後を迎えてしまう。
このあたりの因果応報の下りは最高。

とまあ随所に「これ最高」というくだりがちりばめれれているのだがやっぱりラストの一難去ってまた一難を迎えるラストシーンが大好きなポイントなのだ。


3.バッドエンドとその先にあるもの

本当に薄っぺらい人生観しか養ってこなかった25年間だが、
今この映画から学んだことは
「人生の中間においてハッピーエンドなど無い」ということだ。

パーソナルな話になるが今年で25歳になる僕は十代の頃はお受験するタイプの中学校に通っていた。
そこでは地元で一番頭のいい高校に進学することが絶対的な正義だという風潮で、それ以外の選択肢を考えることが邪険なこととして扱われていたといっても過言ではないような空気だった。

そんな空気感に違和感を感じながらも甘んじていた僕は地元のまあまあ頭の良い進学校に進んだ。
が、そこでのマジョリティ(頭の良い大学に行くという結果を目指すこと)に屈するためにはさらに今まで以上の努力と苦労をしなければいけないという現実にぶち当たり、腐った。

「結果を出してもその先で報われるとは限らない」という現実にぶち当たった時に思い出したものこそが、この「ザ・グリード」のラストシーンだった。

「ザ・グリード」と僕の味わった感情を照らし合わせてみよう。
悪役は全員怪物に喰われ、怪物もろとも船を爆破しすべて解決する。
船中で出会ったヒロインと恋仲になり、流れ着いた無人島で死んだかと思われた相棒パントゥーチとも合流し大団円で終わるかと思われた矢先、無人島で生息していた難敵に向き合わなければいけない現実にぶち当たるフィネガン。

「大学に進めば」「社会人になれば」とか憑りつかれたように勉強や就活に励み、その時々の年齢の多数派が所属する立場についたことで得られる安心感や収入。
しかしそこはゴールじゃなくただの通過点にしか過ぎないと気づき始めた社会人3年目。

ハッピーエンドなんてないといつも思う。
自分の人生は自分で決められない。「努力したから」「辛い時期を乗り越えたから」なんて気持ちが報われるだなんて限らない。
何をしたってどう落ち着いたつもりだって予期せぬ方向から困難やトラブルは常に発生するし、それと向き合っていかなければならない。

僕たちはこうやって延々と”あの化け物”と戦っていかなければいけない。


話は戻ってこの映画を初めて見たその時から、
絶対に「ザ・グリード2」がいつか木曜洋画劇場で放送されると思っていた。
辿り着いた無人島でのラストシーンからのフィネガン達の活躍が見れる、と。
冗談抜きで続編の展開を勝手に想像していた。
しかしこの映画の続編など作られなかったことをその後知った。


だから僕の心の中ではフィネガン達は今もラストに姿を見せた怪物と戦い続けている。

「スター・ウォーズ」も「ブレード・ランナー」もその後の主人公の物語を見せつけられてしまった。
続編が個人的に気に入らなかったという結果論ありきだが、十代の頃見た名作はそのままでいいのだ、と思う。
困難を乗り越えて未来を手にした主人公たちと同じように僕たちも歳を重ね同じように困難に立ち向かっていく。

だから今もフィネガンたちはあの無人島のどこかでひっそりと仲間たちと謎の敵に立ち向かいながら生きながらえている、と思っていたい。

僕たちは歳が許す限り、迫りくる現実という”あの化け物”と延々と戦っていかなければいけない。

そんなことをこの映画から学んだ。

ありがとう「ザ・グリード」。
終わりがすっきりしないB級クソ映画こそ終わりのない人生の縮図だということなんだ。




ということでGOOD GUY’s THURSDAY TV SHOW、第1回目「ザ・グリード~綺麗に終わることのできないB級映画、それこそが人生の縮図だ~」を終わりにします。
こんな感じでその映画に対する思うことをつらつらと書き溜めていくスタイル、かつ体裁を模索していくスタイルで書いていきます。


最後までお読みいただきありがとうございました。
また機会がありましたらよろしくお願いいたします。


次回。

アイルビーバック。
ダダン ダン ダダン

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