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ROCK or LIVE!-ロックお笑い部- vol.3 レポ

大阪のライブハウス・GORILLA HALL OSAKAの企画ライブ、ロックお笑い部に参加。出演者はダウ90000とBase Ball Bear。

ダウ90000は私がここ数年ずっと期待感を持って見ていた8人組コントユニット。演劇とコントを行き交う作風は舞台のお芝居を見ているように惹きつけられつつも疲れてしまうほど笑ってしまう。彼らの『笑い』にはリアリズムがある。こんな人、こんな境遇、こんなシチュエーションあるよなぁ、とどのコントを見ても思い起こさせてくれる。それはただ単なるあるあるネタ、ということではなく、自分事、或いはそれに限りなく近いモノだからこその求心力とそれに対する鮮やかなツッコミが彼らの笑いだと感じる。

そんなダウ90000、もちろん生で見てみたいと思っていたが、地方でのお笑いライブというのはなかなか無く、東京まで見に行くのもハードルが高く。そんな感じでYouTubeのコント動画をひたすら見続ける日々を過ごす中でこの「ロックお笑い部」にてBase Ball Bearとのツーマンライブを開催する報が。ニュースの通知が届いた日、1人家の中で電気も点けずに叫んだことを覚えている。その次の瞬間にはチケットを申し込んでいた。

通常、この手の音楽×お笑いライブというのはどちらかが先に曲なりネタなりを披露し、転換を経てもう片方がまた披露して...というのが定番である。この日は会場に入ると既にベボベの楽器が設置されており「ああ、ベボベが先行してライブするんだなぁ」と思っていた。

開演時間になると暗転と共にベボベお馴染みのSEである『Making Plans for Nigel』が流れ出し始まりを身構えていると暗いステージの上にはベボベメンバーとは違う誰かのシルエット。明転するとそこにはダウメンバーの上原と中島の姿。私がダウのネタの中で1番好きなコント『ピーク』が始まり、もう既にニヤニヤが止まらない。知っているネタなのに目の前で繰り広げられるとまた違った感慨を持つ。大オチに向かってスパートがかかるその瞬間、ステージ袖からベボベメンバーの姿。『ピーク』の大オチと共にスタートしたのは『不思議な夜』!日常のふとした出会いと別れをコミカルかつドラマチックに描く『ピーク』の世界観が、ベボベの楽曲を以てその解像度が引き上がっていくような感覚。シームレスかつリアルタイム、それも生演奏でコントの主題歌が演奏されているような。或いはオーケストラの生演奏を引き連れるミュージカルのような。それをお笑いとロックバンドでやってのけるベボベとダウの相性の良さ。その後もダウのお笑いとベボベのロックライブが交互に展開されることで、ベボベとダウ、お互いの持つ魅力がじんわりと滲み合い混ざりゆく2時間半。凄まじい物を見てしまった!!という気持ち。

ダウグループ内ユニットである1000の漫才や、ベボベの生演奏に合わせてレペゼン徳島こと飯原僚也によるダウメンバーへのdisラップと、コント以外の様々なダウの顔を見ることが出来たことが嬉しい。disラップのトラックは『EIGHT BEAT詩』が下地になっててベボベファンとしては堪らない。ラップに合いの手を入れる小出おじさん、マジでただのファンの姿だったな。主宰であり脚本・演出を担当する蓮見翔のサブカルチャーや時勢ネタへの視点や切り口、的確なコメントを発する頭の構造に驚きすら覚えた。「寿司屋の大将をキレさせた女」のくだりで大爆笑してしまった。切れ味高すぎる。

ベボベも貫禄のライブを展開。新曲の『夕日、刺さる部屋』の鮮やかなギターロックに2月のミニアルバムのリリースが益々楽しみになったし、『Endress Etude』の昨年夏からの進化振りに圧倒された。原曲よりもテンポがグッと早まることでよりカッケー!な曲に仕上がっていて。『The Cut』への繋ぎも抜群。小出が喉頭炎を発症していたということで歌の調子は万全とは言えなかったものの、演奏のキレは増していくばかりでどこまでも変わり続けるバンドだなと実感。

何よりこの日はダウメンバーである園田が完全に持っていく回だった。1週間前に彼女と別れた園田に纏わるネタが2時間半に渡って擦られまくる、正にこの日この場所ならではの展開。序盤にベボベが披露した『そんなに好きじゃなかった』がこんなに効いてくるとは思わなかったし、後半にダウが披露したコントは最早面白いを超えてちょっと可哀想な気持ちにすらなった。からの『kodoku no shynthesizer』とベボベが演奏する中座り込む園田。切なすぎるし『kodoku〜』を聴きながらこんなに笑ったことない。時勢と音楽に乗ってコントがコントの域を超えていた。

アンコールにはダウのドキュメント作品『ダウドキュ』の主題歌『耳を貸して』をベボベとスペシャルセッション。蓮見以外の7人がラップを回していくバチバチにエモーショナルなセッション。曲締めは今日の主役・園田がベボベメンバーとハイテンションで顔を合わせながら。園田の姿に堀之内みを感じつつ、次回開催への期待に胸を膨らませながらこのスペシャリティな夜は幕を閉じた。

配信などで見れないことがあまりにも惜しい、もう一度見たいと思ってしまうほど素晴らしい構成のライブであった。お笑いとロック、他業種なのにこんなにも噛み合いが良く、1つ1つではなく2組で1つのエンタメ芸術を作りだせるのかと。それはひとえにエンターテインメントに真摯に向き合う2者の姿勢があってこそのものだとも。小出さんがボソッと「自分がお笑いを志してたらダウみたいになっていたのかな」って言っていて、この2組は精神性の深い部分で繋がってるのかなと思った。構造フェチなところとか似てる気がする。こんなにずっとベボベを追い続けているのに、未だにこんな驚くようなライブを見せてくれることに喜びしかない。ベボベはもちろん、ダウも今後一層追い続けたい。

開演前の客入れBGMもいい感じだった。まさかベボベのライブの客入れBGMでフォーリミが聞けるとは。ロックお笑い部の文脈も踏まえつつ、大阪や対バン、お笑いというニュアンスも踏まえた選曲。『ロックお笑い部』は東京でのエキストラ公演も開催予定なので、次は愛知でも是非。

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