俵万智はサラダ記念日だけじゃないんよ
インスタのストーリー機能で、ちょうど3年前に投稿したアーカイヴがでてきた。
3年前のこの時期、俵万智の「サラダ記念日」という短歌の本にハマって、ひたすら絵を描きまくっていた。
これはその本の表紙を自己流に描いたもの。
「この味がいいねと言ったから七月六日はサラダ記念日」
というのは、学校の教科書にも載っているほど有名な短歌だ。
だけど、俵万智の魅力はそれだけじゃない。
この本のタイトルにもなっている「サラダ記念日」だけじゃない、彼女の作る短歌は実はめちゃくちゃ刺さるものが多い。
「この時間君の不在を告げるベル どこで飲んでる誰と酔ってる」
「約束を信じぬ君は波の来ぬところに城のお城をたてず」
「それならば五年待とうと君でない男に言わせている喫茶店」
「あなたにはあなたの土曜があるものね 見て見ぬふりの我の土曜日」
「金曜の六時に君と会うために始まっている月曜の朝」
「一時間たっても来ない ハイソフトキャラメル買ってあと五分待つ」
「君を待つ土曜日なりき待つという時間を食べて女は生きる」
「食べたいでも痩せたいというコピーあり 愛されたいでも愛したくない」
「思いきり見つめることの言い訳の小道具となる日もあるカメラ」
「ひかれあうことと結ばれあうことは違う二人に降る天気あめ」
「不用意に捨ててはならぬ燃やしても恋は大地にかえらないから」
「ペンシルで唇を描き思いきり冷たい言葉を用意している」
「逆さまのあなたを愛す夜の淵に二人メビウスの輪となれるまで」
「絡みつく視線という名の藻のなかを酸素欠乏の熱帯魚ゆく」
「イタリアンパセリの匂いの口づけを白きワインで洗い流せり」
「ブーゲンビリアのブラウスを着て会いにゆく花束のように抱かれてみたく」
「ふと思いついた感じのシャンパンの気泡のような口づけが好き」
どうですかこの得体の知れないざわざわとした胸を疼かせるような短歌は…!
彼女がシングルマザーだと知ると、なお見方も変わってくる。
短歌だけじゃなくて、「トリアングル」という本も執筆しているのだけれど、これがまた、彼女の自伝なのではないか(たしか本人もニュアンス的にそう認めている)と思うほど、不倫というか、相手に奥さんがいる人と付き合っているのだ。ナチュラルに。
もちろん短歌にはこういった切ないものばかりじゃない。
家族との関係性を表現したものや、教師をしていたときの生徒の様子など、俵万智らしい視点で描いている。
そのどれもが秀逸で、その中でもやっぱり恋に対する短歌は思わずこちらがどきっとしてしまう言葉の選び方をする。
俵万智のすごさは、サラダ記念日だけじゃないんですよ。
ブーゲンビリアという花なんて、知らなかったよ。
嬉しい!楽しい!だいすき!