アドバイスの文型 みんなの日本語35課

新人時代の鬼門

35課 (笑)

まず最初に、みん日に準拠して教えません。少なくとも自分は。

なぜなら、みん日は「似たような文型、意味を一緒に教える」というスタンス(と自分は思ってます)ので、”教え方の手引”(高い教師用の副本)のとおりに教えると、学生は「全然わからない」か「『ば』と『たら』と『なら』の違いは何ですか?」と100%訊いてきます。

で、自分は「文化」(文化外国語専門学校版)に準拠してます。

この教科書では、文型のコアな部分だけ教えます。だいたい以下のとおりです。

ば:機械の操作説明、一番良く知っている人への質問/答え

なら:自分が持っている中でベストな答え

たら:ifの疑問文、前件と後件が時系列の関係にあるとき

35課の今回は「ば」「なら」ですね。文型のコアな部分だけを教える、だけあって例文の精査は注意を払わないといけません。


①機械操作の「ば」

スイッチを押します →100%→ 電気がつきます

=スイッチを押せば、電気がつきます

ここで、「ば形」(条件形)の活用の練習と、前と後ろの関係が”100%”ということに慣れさせます。この文型で難しいとすれば、後件(後ろ)に自動詞がよく使われるという点です。どの国の学生でも難しいと思う点なので、授業の最初に自動詞の復習を5分ほど挟むといいかもしれませんね。※自動詞の意味について不安な先生は、先輩の先生に聞いておいたほうがいいです。


②アドバイスの「ば」

ここでは2つのステップに分けて教えます。つまり後件が「~ば、いいですか/~ば、いいです」と「~ば、○○」(後件がパターン多い)です。


ステップ1 「~ば、いいですか」

ここでアドバイスの場面に慣れます。

導入例文)

A:日本でラーメンが食べたいんですが、どこで食べればいいですか。

B:「やまもとや」で食べればいいですよ。

ステップ2 「~ば、○○」

A:ケータイを書いたんですが、どれを買えば便利ですか。

B:AISを買えば便利ですよ。


③アドバイス「なら」

これは、アドバイスを回答する人はプロフェッショナルじゃありません。普通の人です。でも、持っている知識から一番いいものを教えます。

ステップ1 動詞、い形容詞のみで文型に慣れる

日本人A:タイを旅行するんですが、どこがいいと思いますか(質問の文型は自由)

日本人B:タイを旅行します。プーケット、バンコク、チェンマイ……my bestの答えはプーケットがいいです。

=タイを旅行するなら、プーケットがいいです。


ステップ2 名詞、代名詞に慣れる※質問の文はあえて長く

日本人A:タイできれいな写真をとりたいんです。

日本人B:それ(タイできれいな写真をとる)なら、チェンマイがいいですよ。


以上。

意外とシンプルでしょ? 実際、会話場面でもこれだけできたら十分だと思います。


おまけ1 取り立ての「なら」

実は35課、アドバイスの文型の中に取り立ての「なら」が混ざってます(笑)学生がカワイソウ。。。

「取り立てってなんですかそれ?」という方もおられると思いますが、実はみん日では既習なんです。出てくる課は忘れましたが、以下のような文型です。

例)みかんは好きじゃないですが、りんごは好きです。

これが取り立ての「は」と言われるものです。ネイティブは「~じゃないですが」を言わない(よく日本人のステレオタイプの”日本人はNoと言わない”というやつです)で、「りんごは好きです」と言いますね。

「は」→「なら」と換えて「りんごなら好きです」

ハイ終了。ただし、「に」「と」「へ」「の」「で」「 」(時間の言葉の後の空欄)は、「になら」「となら」「へなら」「のなら」「でなら」「なら」はやや難しいので、中国、韓国、大学の専門課程など学習ペースの早い学生にのみ提出したほうがいいと思われます。


おまけ2「~ば、~ほど、」

「恋人はかわいければ、かわいいほどいいです」という文です(笑)ポリコレなご時世、ダメですけど。ま、「かわいい」の定義は人それぞれなのでいいでしょう。

自分の教案だと、い形容詞の「~ば」はここで初出になります。

導入ですがグラフは書きません。あくまで日本語で日本語を教えます。

例1)

タイ語を書きます→わかります

もっとタイ語を書きます→もっとわかります

もっともっともっともっとタイ語を書きます→もっともっともっともっとわかります

=タイ語は書け書くほど、わかります。(主語はかならず「は」格なので気をつけてください)

例2)ソムタム(タイの辛いパパイヤサラダです)

唐辛子 → おいしい

唐辛子唐辛子 → もっとおいしい

唐辛子唐辛子唐辛子唐辛子唐辛子唐辛子→ もっともっともっともっともっともっとおいしい

=ソムタムは辛ければ辛いほど、おいしいです。


ハイ終了。導入例文(説明)は極端に面白く書くほうが印象に残る、という持論です。

個人的には思い入れがあって、以前先輩日本語教師の授業見学をした際、「もっとわかりやすい導入があるよなあ」と教室の後ろで考えた導入です。自信作です、はい。


まとめ

35課は、教師がしっかり整理しておかないと学生が混乱します。じつはタイ語のみん日は4冊に分かれていてタイ語の文法解説書が付いています。しかしこれが学生の悩みのタネで、矛盾した内容があったりということで、みん日後半は日本人教師に任せられている理由でもあります(汗

1,2年目のころは、ここが当たらないようビクビクしていましたが、今では笑顔で教えてます。ので、皆様、自分でhow toを書いていてアレなのですが、何冊もの文法書や問題集を分析して文型のパターンを探すのが、遠回りなようで一番の近道です。(自分の理解もまだまだな部分がありますし)

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