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【法務受託】企業の個性と向き合う。

1 Individuality 

多数の法務アウトソーシングを引き受ける経験からみる最も重要な経験則は、結局のところどんな企業にも通用するゴールデンな打ち手はなく、企業の「個性」を意識せざるを得ないということかもしれません。

DX議論における典型的な機先にもなりつつありますが「私はベストプラクティスを持っています。貴社に導入します。」では本当にどうにもならないのです。

どう足掻いても「果てはあるが近くはない道のり」を歩かねばなりません。

私たちは「合理的経済人」というやむなしの仮定でなんとか変数を絞りモデルを作っていた時代には生きておらず、運良くその先の世界にいます。前提が変わる度に結論を修正する柔軟さを持ち、イデアを追いかけたりせず、目の前の現実の存在に向き合う複雑な考慮に慣れてきています。

(とはいえ、だからといって「やむなしの仮定」を嘲笑するのも誤りであることは近年の行動経済学の躓きが教えてくれました。時代ごとに使い勝手の良いモデルが変わっているだけなのです。)

日常レベルで見ても、SNSに無限に湧き立つ「自分と違う誰か」に慣れ、個性の多様性に驚くこともなくなりました。メンタル面での準備は万全です。

ついに「自分の物差しを他人に当てること」がいかに野蛮な行為であるかを知るに至った私たちは、少しずつ相手の個性を分析してから行動をとるようになりました。その道理は法務アウトソーシングにおいても同様です。このことを自分自身もしっかり確認し、企業の個性と向き合って仕事をしていきたいと思います。

2 Games with Incomplete Information

個性を扱う難しさは「常に情報が足りないこと」です。

神の視点がない以上、確実な前提をもとにプロジェクトを進めることは常に不可能です。常に情報は足りていません。確信も持てません。いくつもの判断留保の中で意思決定する必要があります。だからこそ世界に干渉する試みの何もかもが難しいわけです。私たちは常に、その時々に判明しているなけなしの情報を必死に収集・選別し、浮かび上がる「個性」に合わせて打ち手を仕立てる必要があります。

「これまで会社のどこに問題があったか」「監督官庁との関係はどうか」「会社のビジョンやバリューはどの部分を大切にしているか」「どの部分のリスクであればとれるか」「この分野の話は社内の誰に確認をとるべきか」「担当者とどのようなコミュニケーションをすべきか」といった事情を踏まえずに適切な法務アウトプットを提供することはできません。

情報をうまく拾えるかどうかは成否を分けます。分かった気になった瞬間に職業人として終わります。止まれません。

3 Good News

個性が短めのリードで連れ歩く希望は、魔法の両面テープがくっついていないことです。すなわち、個性は耐久性のある現実ではなくコンテクスト次第で色を変えます(職場の自分と五反田で見知らぬ女子大生と向き合う自分は異なるはずです。)。

個性は、個人の氏名や企業名に魔法の両面テープでベッタリ張り付いたなにかではありません。すべてはコンテクスト次第です。

※なお、魔法の両面テープについてはこちら。

物事がどうしても立ち行かないときは、「自分」ではなく「自分が身を置くコンテクスト」を疑う方が役に立つケースも多いでしょう。そのためにも「抜け出す手立て」をできる限り多く整備するのは急務です。

3歳児がマグフォーマーを手に様々に試みる姿に希望を感じました。「法務受託」が各社のコンテクストに前向きな変革を与えられるサービスになるように、様々な方と触れ合いながらブラッシュアップしていきます。




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