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リスクテイクと価値提供のお話

複雑でなにも残らない記事よりはざっくりでなにかが掴める記事の方が好きなので後者でいきます。主に20代の方に向けた記事です!

1 リスクテイクとは何か

ビジネスではリスクを負った主体に利益が配分されます(なおビジネス上のリスクは基本的には金銭で負います。提供した金銭は「リスクマネー」と呼ばれます。)

プロジェクトがうまくいけば事前に負ったリスクに応じて利益の配分が得られ、失敗した場合には赤字になります(「事前に」という点はなによりも重要です。不確実性の中で意思決定するからこそリスクテイク足り得ます。)。これがリスクテイクの中身です。アップサイドの分け前に与りたい場合にはリスクを負う必要があります。

もちろん、リスクテイクすることなく報酬を得ることもできます。

あらかじめ決まった金額と作業内容を設定して仕事を行うことが当然にできます(「あらかじめ」という点はなによりも重要です。お互いが条件に納得した上で進行してこそ取引足り得ます。)この場合プロジェクトの成否にかかわらず働いた分の報酬がもらえます(プロジェクトがこけても、イベント当日作業した人、LPを作ったデザイナーやエンジニア、音楽を作ったミュージシャン、法的助言をした弁護士などなどなどの主体が赤字を引き受けたりすることはありません。)。その代わりプロジェクトが跳ねた場合にアップサイドの分け前に与ることはできません。なぜならリスクをとっていないからです。

いずれのやり方においても、裏で支える重要な基準はフェアであるか否かです(取引の前提や分け前の質について嘘をついたといった事情や、判断能力のないとされる未成年者を相手方としている等の事情があると、場合によっては、取引のフェアさが欠けるため法律によって契約をなかったことにしたり取り消したりすることすら可能です。)。

筆者の仕事に引きつけて「リスクテイク」について付け加えますと、「交渉」はフェアさを確保するための極めて重要な過程であるということを強調したいです。そして多くの場合、交渉において重要なのは駆け引きよりも自己の価値観の開示です。「誤解」「すれ違い」「良かれと思って」といった合意の失敗はとてももったいないことです。

2 価値提供とは何か

あらゆる取引は「価値提供」と「対価の受け取り」(反対当事者からみると「価値の受け取り」と「対価の支払い」)で成り立っています。

ここでも重要なのはフェアであるか否かです。そしてフェアさを確保するために重要なのは「価値」と「対価」を吟味することです。

この吟味に欠かせないのはやはり「交渉」です。強い単語にみえますが、広い意味での「交渉」をサボらず、しっかりと自己の価値観を表明して価値交換していくことがより良い社会につながるのではないかと素朴に感じています。価値観は実に多様です。思っている以上に多くのことは、言われなければわかりません。

また、金銭以外の対価で魅力的な人や企業を巻き込む発想は現代のトレンドです。ただしこの場合は、フェアさが達成されているかをいつも以上にお互いが吟味する必要があります。

いずれにしましても、何をするに当たっても、リスクとリターンをうまく調整してフェアさを実現していく過程が重要です。丁寧な価値交換が繰り返され優しい世界がつながるといいなと思う年の瀬でした。ありがとうございました。

ちょっとだけ具体例を添えます。
例えば映画では製作委員会というものがあります。製作委員会は出資者(つまり金銭的リスクをとった主体)たちの集まりです。リスクテイクのアップサイドを得るのは彼らということになります。
原作ものであれば、原作を作ったクリエイターさんは著作権という強力な権利を持っています。原作の二次的著作物である映画を作るか否かという点について拒否権(ライセンスを与えるか与えないかを決定する権利)を持っています。拒否権を発動するか、それとも取引に入るか。これ決める要素はさまざまあるでしょう。認知拡大など、原作の販売にとっての利益も見逃せません。ライセンスの直接的な「対価」はライセンス料となります。取っ払いの形もあれば、売上に応じて変動する形もあります(いずれがフェアであるかは当事者の価値観で判断することとなります。第三者が検証するとすれば、当事者が事前にさまざまな選択肢を吟味した上で合意に至ったか否かという点のみでしょう。)。もちろん場合によってはクリエイターさんにリスクテイクの機会を与えるという方法もあるかもしれません。

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