春-vol.2 福田花

春の詩


ホコリ

部屋に差し込む光が
私の背中をあたためる
目の前で小さなほこりが浮遊して
キラキラ光っている
私の吐く息に沿って漂う
集まればきらめきはなくなって
これは何色
その前の彼らの自由を
私はどれだけ許せるか


ひとりででかける
ひとりででかける
歩く速さも考えないから
植木を見つめる時間があるから
通り過ぎても戻って苦笑いができるから
そうして、古い化粧品店に我が物顔で入れるから
へんてこなビルヂングを見つけられるから
石畳の色に沿って歩いていけるから
夕焼けの匂いに気が付けるから
ひとりででかける


両毛線
緑の濃淡がもこもこと変わる山が並んでいる
田んぼの間に家がぽつりぽつり
上り電車は通り過ぎる

人が襲った裸の山が
間違いなくこの町を潤している

同じ家が並ぶ街に近づく
呼吸が増えて
私の息が浅くなる


ステージ
ひとつのヘッドライトが私を照らす
横断歩道で
私は今夜のヘッドライナー
ステップを刻もうか
大きな声で歌おうか
赤いライトと青いライトも
一緒に私を見守っている

オーディエンスにはあなたがいたか
月までも私を見てる
まぶしいほどのステージ

下を向いて足早に去る


木蓮
木に気が付く時
私はたいてい花を見ている
木はずっとそこにいるのに
私はたいてい花を見ている

私はその木を忘れてしまう
次の年の同じ月にまた
その場所にいる
そして私はたいてい花を見ている


 春の詩と春に書いた詩です。

 春ももう終わりです。毎年毎年、季節に心も体も置いてかれてしまいます。世界と個人の時間の長さは一緒なんでしょうか。

 いい春でした。暖かくても冬を引きずって少し寂しい、いい春でした。春は好きです。みんな気が緩んでいて。庭にも近くの公園にも、駐車場やアスファルトの隙間でも、草花が待ってましたと言わんばかりに輝きます。
 梅雨が来ました。着実に暑くなって、でも急に寒くって、疲れます。それになんだかずっと眠たいです。

 大きな自然を見に行きたいです。命の周りをいっぱい感じたい。雨はそれをよく感じられる気がします。
 そういえば、膝下まで長い長靴があります!濡れてみたいお洋服を着てそれを履いて出かけたいです。河川敷にしましょう。

 濡れているお花も好きです。八幡山の紫陽花を見に行きたいな。花菖蒲と睡蓮も見たいです。

 また手紙みたいになってしまった。締まりの悪い春の記事。春だったから。



 一年かけて続けた四季シリーズは一旦ここまでです。
 ヘリポート「四季」は紙面化をします。やっと本物の同人誌になります。
 新しい詩をいくつかと新しいエッセイなどのnoteに載せてない読み物も載せようと思っています。ZINEのような形です。無料でお配りします。お声がけください。

 紙面化したい、それなら和綴じがいいということしか考えていません。いつ頃が見えましたらまたどこかでお伝えします。お待たせします。


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