留学を終えて…
こんにちは、リンズィーヘレナ芽衣と申します。中高時代に私の名前を耳にされた方がいらっしゃいましたら、お久しぶりです。初めましての方へ、私は金沢中学と市立金沢高校で陸上に打ち込み、その後、2018年からアメリカの大学で活動を続けてきました。中学では中2から全中に出場し、5位入賞、そして神奈川県中学記録樹立。高校では高1からインターハイに出場する機会を得ることができました。また、中学時代から都道府県女子駅伝や東日本女子駅伝出場、そして日本選手権にも2度出場させて頂いた経歴があります。
この度5月25日の NCAA East Regionals をもって中学1年時よりはじめた陸上競技生活に区切りをつけた為、数ヶ月経ってしまってからのご報告にはなりますが、これまでの経験を振り返り、皆様と少し共有させていただきたいと思います。
陸上でのスカウトをきっかけにアメリカの大学で文武両道を志して渡米してから、もう6年も経つことに衝撃を覚えると共に、今までに出会い、支えてきていただいた数々の方々に感謝の気持ちでいっぱいな今日この頃です。正直なところ、横浜市立金沢高校を卒業してからの6年間は、転機が次々と訪れるような日々で、その変化に対応するのに必死な毎日でした。留学生活や近況をもっと発信したいと思いつつも、想像以上のハードスケジュールに翻弄され余裕がなかったとともに、誰が私に興味を持つのだろうと考えていた節もあり、皆さんに自身の近況を報告するに至りませんでした。今考えると、オーストラリア人の父を持つハーフとしてさえ言語の壁や食文化、ユーモアの違いに加え、中高での厳しい競技生活で遅れてやってきた思春期とそれに伴う体の変化、勉学と競技の両立の実現など、自分のことだけで精一杯だったというのが実情だと思います。この夏、ようやく学生生活と競技生活を終えたので、初めてきちんとした報告をしながら、この6年間を振り返っています。
最近の近況をまとめると、学業面ではバージニア大学で都市環境計画 (Urban and Environmental Planning) の学士号を取得し、データサイエンスとサステナビリティのダブル副専攻も修了しました。その後、ジョージア工科大学に進み、地理情報科学(Geographic Information Science and Technology)と都市解析 (Urban Analytics) の修士号を二つ取得しました。今年の夏には修士論文を完成させながらパートタイムで働き、今週からArcadis (アルカディス) というコンサルティング会社で地理情報科学スペシャリストとしてフルタイムの勤務を開始したところです。
競技面では、バージニア大学の4年時までは、文化やトレーニングの違い、怪我に悩まされ、なかなか満足できる成果を出すことができませんでした。第二言語での講義や、日本との文化の違いによる自己主張の難しさ、さらには思春期だけではなく食文化の違いによる体の変化に戸惑い、競技に集中する余裕が持てなかったのが実際のところだと思います。しかし、2022年には全米学生選手権に3000mSCで出場する機会があり、全米で24人しか選ばれない大会で4年目にしてようやく納得のいく結果を出すことができました。この成果は、10年間の競技人生の中で最も苦労した甲斐があったと感じた瞬間でした。大学院生として競技を続けるにあたって、大学院1年時には室内シーズンの2月に7年ぶりの3000mの自己最高記録(9'18"66) を記録し、3000m障害以外の全ての種目において、高校以来初めての自己ベスト更新となりました。その瞬間の感動は、人生で数えるほどしかないだろうと思うほど印象深かったです。2年目にはさらにその記録を1秒縮め、9'17"87をマークし、最後の年の室外シーズンに向けて大きな弾みをつけることができました。室外シーズンでは3000mSCに専念しつつも、高校2年生の時に出した5000mの自己ベスト (15'58) にどれだけ近づけるかと5000mにも何度か挑戦し、今年度の4月にカリフォルニア州の大会にて16’04の大学でのベストを出すことができました。自己ベストにはわずかに届かなかったものの、この6年間で経験した人生の変化や自己成長を考えると、悩み苦しんだ過去の自分を少しでも誇らしく思わせることができたのではないかと、競技結果以上に達成感を感じ、成長した自分に喜びを覚えました。
アメリカの大学スポーツには多くのカンファレンスがありますが、私が在籍していた大学はどちらも *アトランティック・コースト・カンファレンス(ACC)に所属していたため、大学3年生から毎年この大会に大学を代表して出場してきました。今年は母校であるジョージア工科大学が主催する特別な年で、3000mSCで大学記録保持者 (2023年に自己ベストの9'59を達成、日本学生歴代10位相当) としての名誉をかけて出場し、自己初の上位3位に入賞することができました (右) 。
振り返ると、正直なところ、大半が悩みや苦労の連続だったように感じます。しかし、バージニア大学での集大成となる2022年から大学院卒業までの2〜3年間には、全米学生選手権出場や大学記録更新をはじめ、二つの修士号取得など、留学当初では信じられないような出来事が続き、感謝の気持ちでいっぱいです。金沢中学校、横浜市立金沢高校時代にインターハイ出場や国体で4年連続入賞を経験し、競技者として明るい未来を思い描いていたのは事実です。今年のパリオリンピック代表者が高校時代に競い合った仲間たちであることに、とてつもない誇りを感じると同時に、何とも言えない不思議な気持ちを抱いているのも本音です。
留学や競技を通じて多くの経験や人生の教訓を学んできたつもりですが、その中で一つ感じたことがあります。それは、「成功」している人々に注目が集まりがちな中で、その背後には膨大な努力や苦労があるということです。高校時代の仲間たちと比べて大した結果は出せなかった私ですが、自分の経験を通じて、華やかに見えることにも多くの悩みや困難があることに感謝するようになりました。成功者の裏には、しばしば見えないストーリーがあることを理解することの大切さに気づき、今年度のオリンピック観戦中にも出場している選手たちがその日の向けてどれだけの困難や努力をしてきたかを想像しながら応援していました。
最後になりますが、今ここにいられるのは、多くの方々の支えがあってこそです。お名前を全て挙げることは難しいですが、この場を借りて心から感謝申し上げます。特に、中学校時代の恩師である小宮昌志先生には、厳しい留学生活を耐え抜く力をいただきました。高校時代のコーチであり、今は亡き加藤智明先生。そして何より家族には感謝してもしきれません。
しばらくアメリカに滞在する予定ですが、日本の陸上界には出来る限り関わっていきたいと考えています。もし私でお役に立てることがあれば、ぜひいつでもご連絡ください!
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