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認識分化論入門(04)

第四章 比較の三結果(ヘーゲルの弁証法)

第一節 ○×


 認識が分化すれば、相手の意見を聞くことができます。

 そこで、自分の考えと、相手の意見とを、比較することができるようになります。

 比較の結果は、大きく三つに分けることができます。

 本当は四つなのですが、最後の一つは、どちらの考えも間違っている、というケースなので、実は、この比較だけでは、わかりません。

 残りの三つのうちのどれか、一番正しいと思うものをとりあえずの結論としておき、それ以上にすぐれた考えを受け取った時、実は両方とも間違っていたことに気がつく、ということになるのです。

 さて、三つのケースのうち、最初の一つは、結局は自分の考えが正しかった、という結論に落ち着く場合です。

 この場合、人の意見を聞いても、結局はあまり意味がなかった、と思われるかもしれません。

 しかし、二つの考えを比較し、検討するということに、意味があるのです。

 また、なぜその考えが正しいのか、その理由が、今まで以上に明確になったはずです。

 さらに、その考えが正しい内容であるために、どのような前提が必要であるか、正しくない可能性はどういう場合に起こり得るか、より深く知ることになるのです。

第二節 ○○

 第二のケースは、どちらの考えも正しい、という結論に達するケースです。

 これは、一つのものを、それぞれ別の面から見ている、という感覚になります。

 たとえば、とても大きな象という動物を、ある者は体が大きいと言い、ある者は鼻が長いと言い、またある者はザラザラで灰色の皮膚を持っている、と言うかも知れません。

 それらは、どれも正しく、そして、それらを総合していくことで、象という全体像に近づいていくことができるのです。

 どちらも正しい二つの考えを統合することで、一つ上の段階に到達することができるのです。

第三節 ×○

 三つ目のケースは、相手の意見の方が、より正しいという結論に達するケースです。

 この場合は、自分の考えが、よりよいものになるのですから、間違いなく得をすることになります。

 間違っていたことに気がつき、より正しい考えにたどり着くことで、進歩・成長することができるのです。

第四節 いずれにしても、プラスになる

 このように、人の意見を素直に聞き、純粋な心で冷静に比較してみることにより、どのような結論が出るにせよ、自分にとってのプラスとなるのです。

 気をつけなければいけないのは、正しい比較を行えば、という条件が発生することですが、それもまた、次々に比較を行うことにより、次第に比較そのものも、より正しい方向に向かってゆくことになるのです。

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