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季語六角成分図「蓑虫」

俳句ポスト 第266回 2021年9月20日週の兼題。

季語六角成分図「蓑虫」より。
(視覚)木の葉や小枝の固まり、糸。風に揺れる様。頭を出入りさせ、糸を吐き、糞を下から排出する蓑虫本体。枯れ枝、枯れ木、雑木林、雪、草庵。光や風のきらめき。突く、ぶら下げる、糸くずや色紙で巣を作らせるなどの遊び。
(嗅覚)乾いた木、土の匂い。
(聴覚)「ちちよ、ちちよ」と鳴くものとされる(枕草子)。梢のざわめき、凩。
(触覚)本体はやわらかい。巣は糸で固められており、しっかりとしている。
(味覚)なし。
(連想力)寒さ、貧しさ、つらさに耐え忍ぶ。閉じこもる・引きこもる。滑稽、諧謔味、無情、哀れさ、寂しさ。いじめられっ子、みなし子。蓑→着る、脱ぐ。家、職の有無。親しみ。

★ミノガ科のガの幼虫。口から吐く糸で木の葉や小枝を綴り、袋状の巣を作り、その中に棲む。雌は成虫すると蓑の中で卵を産み、蓑を出て死ぬ。孵化した幼虫は逆立ちで動き回り、とても可愛い。食害樹種はサクラ類、カキノキ、ツバキ、チャなど多様。子供の頃はよくみかけましたが、1990年代よりオオミノガが寄生虫の影響で激減したとのことで、近頃はなかなか見かけなくなりました。
★枕草子には「蓑虫、いとあはれなり。鬼の生みたりければ、…(中略)…、「ちちよ、ちちよ」と、はかなげに鳴く、いみじうあはれなり。」とあり、伝統的に秋になると親を求めて鳴くものとされた(実際には発声器官はない)。傍題にも鬼の子、親無子、みなし子などがある。
★寒さや風雪に耐える姿が哀れで、三秋の季語ですが晩秋~初冬の印象があります。子供の遊びの対象として、親近感、いじましさもあります。家や衣服への見立て、引きこもり、貧しさ辺りが類想か。

季語六角成分図に関する注意事項


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