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季語六角成分図「熱燗」

俳句ポスト 第252回 2020年10月1日週の兼題。

季語六角成分図「熱燗」より。「うまい」「沁みる」だけで分析を終えるところでした…
(視覚)日本酒の透明さ、ほのかな褐色、湯気。お猪口、蛇の目、ぐい呑。徳利、お銚子、ちろりなど燗をつける道具、様子。料理、お酒のあて、居酒屋、カウンター。
(嗅覚)ふくよかな米や麹の香り。樽香、熟成香など。上立ち香や吟香など、飲む段階によって変化する香り。
(聴覚)とぽとぽと酒を注ぐ音。漏れる息、器の音、静寂。
(触覚)口内を焼き、喉を流れ落ち、五臓六腑に沁みる温かさ。
(味覚)コクがありまろやかで濃厚、舌に残る甘さ。辛口純米酒のキレや酸味。とろり、ふくよか。
(連想力)愚痴に薀蓄に説教に武勇伝、くだを巻く、積もる話、なんでもござれ。静かな夜も宴会も寒い日にも。回りが早い。過去を思い出す。
★なんといっても味覚、嗅覚。視覚及び触覚がそれに続く。温度によって味も香りも変わり、なかなか奥深い味わいです。自分も昔は吟醸酒の冷酒一択でしたが、だんだんとその美味しさがわかってきたという感じ。吟行と称して熱燗をたらふく飲んだハイポニスト多数(私含む)。
★飲んでいる人、話の内容、状況、場所、日にち・時間、お酒のあて、燗をつける様子など、様々に発想が展開できます。自分の体験を盛り込みオリジナリティも出しやすい、使い分けに迷うような季語もあまりない(近い季語である鰭酒、寝酒、玉子酒などは明らかに印象が違うと思います)、使いやすい季語だと感じました。一方で、そこから一つ抜け出す発想が難しそう。この点、「熱燗や忘れるはずの社歌ぽろり 朝日彩湖」などは圧巻でした。また、俗に流れすぎるのも注意かしら。
★本意としては、冷えた身体に沁みる、心をも温める、過去を回想する、人生に対する諦念や哀愁などでしょうか。

季語六角成分図に関する注意事項


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