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季語六角成分図「嚔」

俳句ポスト 第251回 2020年9月17日週の兼題。

季語六角成分図「嚔」より。
(視覚)歪む顔、目をつぶる、反射運動で大きく傾ぐ上半身、飛ぶ唾、鼻水、口を覆う手、ハンカチ、マスク。
(嗅覚)蓄膿、鼻水の不快な匂い。
(聴覚)はっくしょん、クション、ぐずぐず、息を吸う音、鼻をすする音、うめき声。後の静寂。
(触覚)身体の筋肉に力が入ったのち、脱力。鼻腔の引き攣り。寒気、熱っぽさ。
(味覚)なし。
(連想力)異物の排除→浄化。悪霊、魂がぬける、うわさ、悪口→悪いことの兆候。不意打ち。無防備、惨めさ、悲哀、滑稽といった人の様。破壊的。
★聴覚が抜きんでており、視覚及び聴覚がそれに続く。俗信が多く連想力も強い。季語には珍しい身体反応で、他には風邪、咳、水洟、夏痩などがありますが、強烈さでは頭抜けています。それもその筈、くしゃみの速度は160~320kmと新幹線並み。意志ではコントロールできない不随意運動であり、人智を超えた何かを感じさせるのでしょう。
★滑稽なカッコ悪い人の姿を詠みたい、と思いつつ、それでは川柳になってしまうな…と悩んでいます。例句を見ると意外と川柳と見紛うような滑稽やイキの句も多い…??いや、ぎりぎりのところで俳句としてのバランスを保っている!これは下手に滑稽に作ろうとすると火傷するやつ…!また、コロナ禍でくしゃみをして気まずい、という句多数と見た。
★個人的には鼻炎持ちで年中くしゃみをしているので、冬の季感を感じません…冬の季語なのは、勿論寒くなって風邪引きが増えるからでしょうが、花粉症の多い春や気温のぐっと下がる秋だってくしゃみは出る…では、冬における嚔の本意とは何か。嚔により一瞬自失し我に返った後、周りにある冬の寒さの厳しさ、対照としての自己の頼りなさ、それに不意に気づかされることではないか。などと、妄想が広がります。

季語六角成分図に関する注意事項


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