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シノハラさんとの出会い

ハンバーガー屋さんでは、最初はアルバイトの先輩が教えてくれましたが、青年はすぐに仕事を覚えたので1人で厨房を任されることになりました。

ところが、これはあまりにも忙し過ぎます。お昼時の超忙しい時間はさすがに店長やマネージャーが手伝ってくれましたが、他の時間帯はずっと1人です。これには、参ってしまいました。

しばらくすると、新人のアルバイトが入ってきました。同年代のメガネの青年で、今はボクサーを目指してがんばっているそうです。

「ボクサーになるのに視力が低くて大丈夫なのかな?」と思いましたが、そのコトは聞きませんでした。

メガネボクサーもフルタイムでシフトに入ってくれたので、すぐに仕事を覚え、2人はタッグを組んで厨房を任されるようになります。そうして、無敵のコンビネーションを発揮します。おかげで随分仕事が楽になりました。

何もかもが順調過ぎる時というのは、かえって危険なものです。特に青年の人生は、紆余曲折を経て波瀾万丈なものになりがち。自分では普通にしているつもりなのに、なぜだかどんどんトラブルに巻き込まれて行ってしまうのです。

         *

そんなある日のコト…

いつものようにハンバーガー屋さんで働いていると、1人の男性アルバイトがお店にやって来ました。背の低い浅黒い肌をした男の人で、顔はアトピーで荒れています。仕事は休みがちで、あまりお店には顔を出しません。

でも、悪い感じはしませんでした。どちらかといえば気さくな感じで好感が持てます。

「いや、実は凄くいい人がいて。ぜひとも君に紹介したいんだけど」

アトピー君はそんな風に誘いかけてきました。

青年は好奇心に駆られてちょっと行ってみることにしました。


案内されたのは西新宿の高層ビル街。きれいなオフィスの一角にその人は座っていました。

その名はシノハラさん。年齢は30くらいでしょうか?粋なスーツに身を固め、かといって固すぎず温和な雰囲気をかもし出しています。

「やあやあ、君かい?紹介されてきた子ってのは?」

そんな風に話しかけてくれました。

シノハラさんは非常に情熱的な男で、起業について熱く語ってきます。

「これからの時代は、雇われ人ではいけない!」とか「男なら、会社をおこすことを考えなければ!」といった感じで。

特にナポレオン・ヒルという人物が大好きで、ナポレオン・ヒルの「成功哲学」という本がいかに素晴らしいかを熱心に説明してくるのです。

「いいかい?ノミという生き物がいるだろう?ノミは最初とんでもないジャンプ力を持っているんだ。ところが、ノミの上空にガラスの板を敷いてやる。すると、ノミはガラスにぶつかって落ちてしまう。やがてノミも学習してガラスにぶつからないようにあまり高く跳ねなくなる。最後には、ガラスをどけても、元のように高くは跳ねられなくなるんだ」

つまり、人間もそれと同じで、「常識」や「固定観念」というものに縛られてしまうと、本来持っている能力が発揮できなくなるというわけです。

シノハラさんは、このようなお話をいくつもしてくれました。青年は、それらの話に感銘を受けました。

「なるほど、これは素晴らしい。中学生の頃に読んだ『君もイノベーターになれる』という本にも似たようなことが書いてあった。この人は、信用できる人だ!」と思いました。

「こういった話をもっと聞けるセミナーがあるんだ。君も参加してみないか?君は見所があるから、きっと役に立つと思う。いや、ぜひとも参加して欲しい!」

シノハラさんにそう言われては断れません。

青年は、成功者になるための秘訣を教えてくれるセミナーに参加することに決めました。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。