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「私、おつき合いしている人にお別れを告げてきました」

ある日、決定的なコトが起こりました。

それでいて、何も起こらなかったんです。起こさなきゃいけなかったのに!

「私、昨日の夜、おつき合いしている人の家に行ってお別れを告げてきました」

突然、あの人がそう言ったんです。いつもの通り、青年の家にいる時でした。

そのセリフを聞いた瞬間、青年は「じゃあ、代わりに恋人としてつき合ってあげようか?」って言おうとしました。その言葉がノドから出かかっていたんです。

これまでの流れからすれば、自然と言えたはず。そして、おそらく彼女は「お願いします」と答えたでしょう。

ただ、タイミングが悪かった!

その日は青年とあの人と浜田君の3人が家にいて、浜田君がちょうどトイレに立った直後でした。あの人は浜田君に聞かれてないと思ったんです!

でも、そうじゃなかった。青年はそのコトをわかってました。だって、トイレは今いる部屋のすぐ隣なんだもの。会話は完全に聞こえてるんです!

ここで半年前に物件を丁寧に探さなかったコトが災いしました。以前住んでいた「4畳半の部屋」から、現在の「4畳半と6畳のふた部屋」に引っ越してきた時、もっと物件を精査していればこんな事態になりはしなかったはずなのに!


現在、住んでいる部屋の間取りは、こう。

玄関を入ってすぐ4畳半の和室があります。同じ空間に狭いながらもキッチンが。同じ部屋の隣にトイレがあるんです。そして、奥の部屋が6畳の和室になっていて、こちらはカーペットを敷いて洋室のようにしています。

青年は「世界を変えよう!」と宣言した日に、どちらの部屋をメインに使うか迷いました。奥の部屋をメインの活動場所にして、手前の4畳半の部屋を自分の空間に使う手だってあったんです。

でも、逆にしちゃった!手前の4畳半の部屋で活動し、奥の部屋を自室にしてしまった。「その方がキッチンに近くていいかな?」と思ったからです。これは大失敗でした!

トイレの音も聞こえちゃうし、この時の彼女の告白に応えてあげるコトもできなかった!

せめて、彼女が浜田君のいないふたりきりの時に「恋人と別れた」と言ってくれればよかったのに…

いろんな偶然が積み重なって、結果的にチャンスを逃してしまったのです。世界最高のチャンスを!

よって、青年はこの時には何も言えませんでした。黙ったまましばらくの沈黙が続きました。そして、浜田君はトイレから戻ってきたのです。そのまま沈黙は続きました。

「まあ、いいか。この話の続きは、いずれふたりきりの時にどこかでしよう」

青年は、そんな風に安易に考えていました。でも、告白ってそういうモノじゃないんです。その場の雰囲気とか流れとか、いろいろあるんです。

結果、最大のチャンスを逃したまま、時間ばかりが空虚に流れていくことになります。

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。