女心はわからない。2人はつき合ってるの?

青年は週に1度の母子寮のボランティアでヘトヘトになりながらも、ちょっとずつ彼女のコトを知っていきます。子供たちがいろいろと質問をして、それに丁寧に答えるのを聞いていたからです。

年齢は同い年で、大学に通っています。ボランティアには、大学の授業のあとに家に帰らず直接やって来ているそうです。

「ラケットボール」というスカッシュに似たスポーツのサークルに所属していて、同じサークルにおつき合いしている人がいるということがわかりました。

「まあ、そうだろうな」と青年は思いました。ちょっぴりショックは受けましたが、「これだけの美人で性格もよければ、恋人くらいはいるよな~」程度の感覚でした。

だから「ボランティアに来るのはやめる!」とか、そういう風には考えません。思い返してみると、この時にはそこまでぞっこんというわけではなかったのでしょう。

ただ…この彼女、おかしなとこがあるのです。

なんというか説明するのが非常に難しいのですが、行き当たりばったりとでも表現すればいいのか、「その時の感情で、とんでもない言動を取ることがある」のです。

青年が一番驚いたのは、このエピソードの時。

いつものように子供たちが無邪気に質問をしてきます。青年と例の彼女の2人を指さして「2人はつき合ってるの~?」と尋ねてきました。

青年は当然、「そんなバカなコトあるわけないじゃん」と思いましたが、なんと答えていいのかわからなかったので黙ったままでいました。

すると、彼女の方が明るく元気な笑顔で「そうよ~」と答えたのです。実に自然な振る舞いで。

青年はビックリしました!

「いつからつき合ってることになってるの!?同じサークルの彼氏はどうなったの!?」と頭の中はグルグル回って混乱してしまいます。

その日の帰り際に「さっきのセリフはどういう意味だったの?」と尋ねようかと思いましたが、内山さんも一緒の帰り道だったので、聞けずじまいでした。

家に帰ってから、例の特殊能力を使って分析してみます。どう考えても2人がつき合っている要素など何1つないのです。

毎週ボランティアで一緒にいるだけ。それも、周りには大勢人がいます。子供たちもいるし、内山さんもいるし、時には中田さんとか他のボランティアのメンバーもいます。

デートに行ったこともありません。一緒に映画を見に行くとか、喫茶店で2人きりで話をするとか、そういうコトすらないのです。

彼女は何かを勘違いしているのか?その場のノリで冗談を言ったのか?でも、ウソを言っている感じは微塵もしませんでした。そのくらい自然な振る舞いだったのです。

もし、ウソをついているとすれば「『同じサークルにおつき合いしている人がいる』の方なのではないだろうか?世の中には、男よけのためにそういう嘘をつく女性がいると聞いたことがあるし…」と一応の結論を出しておきました。でも、それだって確証はないのです。あくまで推論に過ぎません。

とにかく驚いたし、頭は混乱したけれど、好意を持たれている事だけは確かなようでした。

もしかしたら、ほんとにつき合ってるつもりなのかもしれません。毎週4時間も同じ空間(それも特殊空間)にいたら、そんな気持ちになっても不思議はないのかも?


ところが…

別の日に子供たちの質問に答える彼女の話を聞くと、やっぱりおつき合いしてる人がいるらしいのです。

「デートの時には相手の男の人に出してもらうの?」という質問に対して、「デートはいつも割り勘ですよ~」と答えていたからです。

青年は、ますますわけがわからなくなってきました。

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