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劇団立ち上げ大作戦!メンバーを探せ!

さて、恋愛そっちのけでキザオ君と協力して劇団を作ることになった青年ですが…

まずは、メンバーを集めなければなりません。

基本的には、キザオ君の「友達手帳」に記されている連絡先に片っ端から声をかけて、「舞台に立ちたい!」という強い意志を持った人たちが選ばれるわけですが。「それだけでは人数が足りない!」とキザオ君に言われました。

そこで、仕方がなく青年は、雑誌に「劇団員募集!」という広告を打ちました。

現代の人たちからすると信じられないかもしれませんが、当時は「住所や電話番号を載せて友人を募集する」という行為が平気で行われていたのです。仲間募集のための専用の雑誌まであったんです。

その募集広告を見てやってきたのが「亀山さん」という女の子でした。背が低く、メガネをかけていて、お世辞にもそんなにかわいいとは言えないんですけど、見た目はアラレちゃんみたいな子でした。確か、北海道出身だったと思います。

この亀山さんに関しては、のちに一悶着あるんですけど、そのエピソードはのちほど。


それ以外にキザオ君が集めてくれたメンバーが6~7人くらいいたと思います。大体みんな20代前半の男女だったんじゃないですかね~?

それでも「人数が足りない!」と言われたので、困った青年は頭をひねります。

「どうにかして役者を増やさないと。でも、どうすればいいんだろう?」

ここで、お話がちょっと飛んじゃうんですけど。当時、チガサキ君ってのがいたんですよ。神奈川県の茅ヶ崎市(ちがさきし)に住んでる。

で、チガサキ君もマンガの学校の声優科出身で、「舞台に出て欲しい!」って誘ったんですけど、それは断られちゃいました。でも、プライベートで何かとつるんで一緒に行動することが多かったんです。

そのチガサキ君が「ムチャクチャ凄い舞台を見た!」って言うんです(舞台ってのが演劇のことなんですけど)

それが褒めてるわけじゃなくて、散々けなしてるんですよ!口から出てくるのは文句ばっかり!

「もう、あんな酷い劇団は生れて始めて見た!だから、お前も見に行け!」みたいなコトを言うわけです。

完全に矛盾してるんです!「おもしろかったから」とか「素晴らしかったから、見に行け!」ならわかるんです。でも、「どうしようもないくらい最低最悪の劇団だから絶対見ておかないといけない!」って言い始めるんです!

それで、仕方がないので見に行ったんですよ。新宿のタイニイアリスとかいう小劇場に。そしたら、ほんと凄いんですよ!

アングラ劇団の一種だったんですけど。全身ドロドロのグチャグチャになりながら、きったない格好してやってるんですよ。舞台の上も汚しまくってるし。最後の方とか支離滅裂でストーリーとかわかんなくなってるんです。でも、情熱だけは尋常じゃないレベルで伝わってくるんです!

たとえば、客席の真ん中に小さな箱があって、舞台の中盤でその箱の中から人が飛び出してくるんですけど。

…ってことはですよ。その人って、舞台が始まる前からずっと箱の中で待機してたわけじゃないですか?お客さんが入る前から。で、みんなが見てる中で息をひそめて待機してたわけです。小さな箱の中でうずくまって。トイレに行きたくなったとしても我慢して。1時間くらい。

それ、凄い根性と仕掛けじゃないですか?

「あ、こりゃ、凄いな!」と思って。それで、そのアングラ劇団を主宰してる人に連絡を取って会いに行ったんです。

「今度、新しく劇団を旗揚げするんですけど、メンバーが足りないので女優を貸してください!」って(ちなみに、こういうのを「客演」って言うんですけど。他の劇団から出張して、別の劇団の公演に参加する方式です。キザオ君に教えてもらって使ってみました)

そしたら、「じゃあ、メンバーに話をしてみるわ」みたいに言ってくれて。結果的には「ちょっと出たい人はいないみたいなんだけど…」って回答をもらったんですけど。その流れで「君もうちの舞台に立ってみない?」みたいなことになっちゃって、逆に青年の方がアングラ劇団の舞台に出演することになっちゃいました。

まさに、ネズミ捕りがネズミになる!

…じゃなかった。ミイラ取りがミイラになっちゃったんです!

noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。