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カサ屋さんで働く
…と、このような人生を歩む可能性もあったのです。
でも、現実には「あの人」に電話で「もしかしたら、ホストになってたかも知れないんだよ」と話し、あきれられただけでした。
よって、現実のストーリーを続けて語っていきましょう。
しばらくイベントの設営作業などの単発の仕事をこなす青年でしたが、ここに来てようやく派遣会社から長期の依頼が舞い込みます。
仕事内容は「アパレルメーカーでマフラーやカサなどの在庫管理・販売」と書いてあります。
「地味そうな仕事だな…」と思いましたが、イベントの仕事にも飽きていた青年はとりあえず行ってみることにしました。
ホストクラブの面接にも着て行った例の成人式の時のスーツを身にまとい、派遣会社の人と一緒に地下鉄に乗っていった先は、なんだか古ぼけたビルです。
面接を受けると「とりあえず1ヶ月だけ雇ってみよう」というコトになりました。
まかされたのは「カサの組み立て作業」でした。雨の日に差すあのカサです。いえ、「晴れの日に差すカサ」や「晴雨兼用」というのもあったので、正確に言えば雨の日だけ使うわけではありません。
作業はいたって単純。カサ本体に「グルーガン」と呼ばれる道具を使って、手元をつけていくだけ。
グルーガンというのは、銃みたいな道具で、弾丸の代わりにロウ(ロウソクのロウ)をセットして熱で溶けたロウをガッチャンコガッチャンコ撃ち込むのです。今どき、100円ショップでも売ってます。
こうすることで、木材やプラスチック同士をくっつけることができるんですね。ちなみに「手元」というのが、カサの持ち手になる部分です。
「マスター・オブ・ザ・ゲーム」の持ち主である青年は、半日でこの作業のコツをつかんでしまい、短時間で大量のカサを量産できるようになりました。
余った時間に、今度はパートさんたちのお手伝いをさせられました。
パートさんは全員女性で、近所の主婦やシングルマザー、ちょっと遠くから通っている独身女性もいました。中国から日本にやって来てる人もいましたね。
手伝いの内容は、主に「タグつけ」です。マフラーやストールなどに商品の素材や注意書きが書かれた「商品タグ」をつけていく作業。ずっと座り仕事で、そんなにおもしろいものではありませんでした。
ただし、派遣会社を通していたおかげで、お給料は結構よかったです。確か時給1200円くらいはもらってたんじゃないかな?フツーにアルバイトとして働いていたら、時給800~1000円くらいの仕事内容。
こういうとこ、派遣会社を通して働く利点なんです。ただし、雇う側としては、仲介料としていくらか派遣会社に支払っているので、さらに高額なギャラを必要としているはず。
それだったら、フツーにアルバイトやパートを募集した方がお得だと思うのですが、なんらかのカラクリがあるんでしょうね。
1つには「派遣会社の信用度」
「会社から派遣されてくる人材だから、きっと優秀な人が来るに違いない!」という幻想(実際にはそういうわけでもありません。登録されてるのは、どこにでもいる普通の人たちです)
もう1つには「クビにするのが簡単」
契約社員には「契約期間」というのがあって、それを過ぎると何の理由もなく即解雇することができるのです。「契約期間が来たので、再契約しません」と言うだけでオッケーです。おそらく、こっちの理由の方がメインでしょうね。
ただ、これって悪用する企業もいて…
たとえば、送られてきた契約社員を、肉体的・精神的にヘトヘトになるまで「こき使う」んですよ。で、「契約期間が来たから」と言ってはポイ~と使い捨てにして、次の新鮮な労働力を送ってもらう。
この繰り返して、会社は効率よく利益を上げることができます。ま、ブラック企業の一種ですね。
noteの世界で輝いている才能ある人たちや一生懸命努力している人たちに再分配します。